第一章 古代エジプト 【黒魔術】
「我ラハ、黒魔導師。今日ハ、レイスノ式ヲ祝ウヨウダ。大イニ盛リ上ガルヨウ、魔力ヲ強メニシヨウ。」
黒魔導師達は、広場に姿を現した。彼らの表情は読み取れない。不気味な仮面をつけてぞろぞろとクヌムのもとへ進んだ。
「クヌム様、我ラノ準備ハ万端デス。始メマショウ、コノ式ヲ!」
片膝を付いていた彼らは一礼して立ち上がると、
レイスを誘導し広場の中心へと歩みを進めた。すると地面を杖のようなもので削り始め、やがて大きな円と星型の魔法陣が作り上げられる。彼らはレイスを魔法陣の中央に立たせた。
「レイス様、決シテ動クコトナカレ…」
広場は再び静寂に包まれた。彼らが奇妙な術を唱え始めると、禍々しい黒紫色の闇の柱が立ちそびえレイスを取り囲む。レイスはもう逃げられない。
「ぐぐっ…これが黒魔術……僕の身体を蝕むように駆け巡る…。脳ガ汚染されル…痛い苦シい死ぬイタイ痛イいたいーーー」
何も考えることが出来ない。指先をも動かせないほどに、息が…途絶えていく。最初こそもがいていたレイスだが、闇の中でピクリとも動かなくなった。
「レイス様ノ生命反応ガ消エタ…ダガ、最後マデヤルノガ我ラ黒魔導師。ユクゾ!」
禍々しい闇の柱は燃え上がる炎のように勢いを強め天まで伸びる光線となっていく。
「何ダ?…抑エルコトガ出来ナイ……マズイ…」
魔力が暴走、唱えていた黒魔導師達を吹き飛ばす。それは生きているかのようにうねうねと動き天をかける黒龍を思わせる。民衆は騒然とし、クヌムは王座から勢いよく立ち上がる。薄らと闇の中に赤く光る眼が映る。
「レイス様ノ内カラ感ジルコノ力…」
と、闇が一瞬のうちに消滅、レイスは意識もなく膝から落ち倒れる。死人のように真っ直ぐに倒れ込む。
「式ハ成功シマシタ……後ハ、レイス様次第デス」
レイスを運べと指示すると、レイスの側近達が意識の無いレイスを王室内のベッドへと運んだ。
クヌムは式典を終わらせた。響めく民衆に向け放つ。
「式はこれにて終了す!我が子次第で運命が決まるのだ!!盛大な式を皆に感謝する!」
民衆は最後の拍手をしてはぞろぞろと帰っていく。クヌムはレイスのもとへ走った。黒魔導師達は逃げるようにそそくさと闇へ消えていく。民衆の頭は疑問の多いまま式は幕を閉じた。