第一章 古代エジプト 【式典】
青く澄んだ空に、今日の王室内は慌しく動いていた。城と広場を行き来する人々を見れば、何かあるのだとわかる。豪華な飾りや、美味しそうな匂いが漂ってくる。民衆も続々と集まっているようだ。
『カーン、カーン』
鈍く低い音の鐘が響き渡れば、盛大な式が始まる…。
ついにこの時が来た。僕はついに成人として認められるこの時が。城の外はかなり盛り上がっているみたいだ。弦楽器や小太鼓を叩く音が心を震わせる。早く呼ばれないだろうか。もう装飾を身に付け準備は万端だというのに。胸を弾ませる彼の前を二、三人の男だろうか全身を黒一色に染めた者達が通る。あれが、噂に聞く[黒魔導師]だと思い、彼はますます式典に思いを寄せた。
しばらくし、外の演奏が終盤に差し掛かると
「失礼します…。レイス様、レイス様!」
来たようだ。父上の側近が駆け寄り来る。
「レイス様、ご準備は万端でございますか?」
「ああ、万端だよ」
彼は足軽く、王室を後にする。神々しく輝く鉱石が埋め込まれた、階段を降りていけば門番の大男が二人立つ玄関の大きな扉を目の前に、いつの間にか外は静まり返り父上の言葉だけが響いている。
「我が子、レイスは我クヌムと母メルセゲルの間に生まれし奇跡の子だ。さて、レイスが来たようだな」
彼が静寂の広場に出れば、たちまち民衆の歓声と拍手に包まれた。が、再び静寂が訪れた。
「僕はレイス。父上・母上に感謝をし生き長らえる事を誓う!!そして、民の生活をより良きものにする為に精を出す事を共に誓おう!!」
民衆達は大いに盛り上がり、レイスの名を連呼する。
《レイス!レイス!》
「これにて、レイスの成人への式典を始める!」
クヌムや民衆、その場に居た全ての人々が拍手と歓声で式を祝った。




