ギルドへ
しばらくの間小説を書く時間が無かったので、久々の投稿になります。
城下町の中央広場で起きた出来事は、結の手によって解決した。その一瞬の、戦闘と言えるのか分からない戦いは人々を喚起させた。日頃の魔族への恨みをぶちまけるように。
「んーっと……これから何すればええんやろか?」
そう、やることが分からない。町人は全員拘束から解放して、魔族の残党も全て狩った。町人の中には怪我人もいたのだが、そちらは、後からやってきた冒険者達によって治されているようだった。
「よお!おめーが魔族共をやっつけたんだって?」
「ん?せやでえ?」
「やるじゃねえか!魔族はかなり強え。レベル50はねぇと勝てない奴らだ。ほんとに、よくやってくれた!」
「いやいや〜、そこまで言われることはしてへんよ〜。ワンパンやったしなぁ」
「まじかよ!やるなぁほんと!」
「ありがとーなー」
この荒くれみたいな言葉を発しているのは、後から来た冒険者だろう。格好は、大雑把ではあるが、野蛮な獣皮を使った腰巻きに、毛皮のベストという、いかにも異世界の冒険者という風貌だった。
この男を見たとき、おお!異世界の冒険者きたぁぁぁ!っとなったものだ。なにせ、結自身はまだ制服のままである。こんな格好、異世界だと合わないだろう。早めにこちらの服を買ってきてみたいものだ。
と、そこで、ギュッと、結の服の裾を掴む者がいた。それは、先程魔族に襲われていた女性だった。女性……なのか。結よりかなり低いため、中学生ぐらいかと、元の世界の判断基準に合わせて考えていた結であった。
「ん?」
と、そこで後ろを振り向くと、可愛く笑顔でこちらを見ている女の子がいた。髪は肩までのショートで、服装は布の服に、スカートだった。スカートがあるのなら、もっとマシな服を……と思うが、この世界にはまだ復旧していないのだろう。
と、そんな女の子が結に話しかけていた。上目遣いで。かなりくるものがあるようだが。……ロリコンなのだろうか、そうなのだろうか……。
「ゆい様!ゆい様は冒険者様ですか?」
「いんや、俺は冒険者やないでえ。しがない旅人やで」
「旅人……ですか?」
「おう」
旅人というワードはあまり聞かないのだろうか、頭に疑問符を浮かべているような顔をしていた。説明しようにも、周りの目があるということで、「まーええやん」という流し方をしてしまった結であった。
「さーて、とりあえず何しよかぁ……」
周りを見ると、既に何事もなかったように店や屋台などが営業している。やはり、この世界の人間達は、元の世界のように何時までも長ったらしく、噂やニュースにしないのだろう。実に居心地が良い。
と、そんな時、城からやってきた兵士達が居た。
ガシャガシャガシャ……
「魔族共はどこだ!」
と、今更な雑魚のセリフを吐いていた。てか来るの遅すぎるだろ。てか雑魚臭半端ないやん。と、こちらはこちらで心の中で悪態を吐いていた。心の中だから別に良いだろう、ということなのだろう。
「魔族なら、そこのお方が片付けて下さったぜ!」
「そうそう!一撃だったから見惚れちゃった!」
「凄かったよなあ!魔族の魔法が消えたんだ!」
「ほほぅ、まだこの街にはそんな実力者が……」
と、数々の声が聞こえた。が、そんな中……。
「お前は!兵達よ!あの者を引っ捕えよ!」
「「「はっ!!」」」
と、空気を壊す兵隊の皆様が居た。せっかく結が称賛されているのに、全くの無関心である。まぁ、王の命令を受けずに出て行ったことに問題があるのだが。
「うわ、やっべぇ」
と、俺は一目散に逃げ出した。とりあえず路地に入り込んだのだが、見つかるのも時間の問題だろう。今日はこのままギルドへ行き、冒険者にでもなろうかな……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
兵士達の歩いている音が無くなった後、俺は街へと戻り、ギルドを探した。そういえば、あの女の子はどこへ行ったのだろうか。ずっと兵士達に付きまとわれつつ逃げていたせいで見失ってしまった。迷子になっていなければ良いのだが……。
「さ、ギルド探すかぁ」
と呟いた所で
「ギルドの場所、お教えしましょうか?」
と、声をかけられた。
「んぇ?」
……。間抜けな声を出してしまった……。人生で恥ずかしい場面だ。よくある……。よくあるんだ……。と、自分を慰める結だった。
「ついでに、街も案内しましょう。旅人さん?」
と、そこで結は虚を突かれたのであった。話しかけてきたのは超絶の美人だった。うっわ、美人……。と、思わず心の中で感動したぐらいだ。周りの人の目が全てこの女性に向けられている。
「あ、あぁ、それならえかったわ。丁度迷っとったところなんや。助かる」
「では、こちらに」
今までいた路地を抜け、大通りに出ると、左手に見える大きな建造物……間違いなく城だろう。そして右手には、大門と思われる大きな門があった。高さ的には、民家の3倍くらいだ。少し大きすぎな気もするが……。
そんなことはさておき……。
着いた場所は、いかにもギルドって感じの建物だ。
「さあ、着きましたよ。ここが冒険者が集う、ギルドです」
「ほほぉ……」
結は感動していた。元の世界には無い、討伐クエスト。荒い冒険者。白熱した戦闘。ビールが飲み交う円卓。それらを期待しながら。
「入ってみますか?」
と、聞かれたので、
「当たり前やん!!」
と、元気に応え、その扉を開け、中へと進んだ……。