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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第四章 裏切りと忠誠と俺たちの夏休み
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残されていたデータと廃スペックな娘さん

更新です。

「『拝啓。真央様とゆかいなお仲間様。此度はわざわざ我が家までお越し下さりありがとうございます。本来であれば季節の言葉を入れて本格的な手紙にして置いておきたかったのですがセキュリティやその他の諸々の事情のために簡潔な内容にさせていただきます。私の事は気にしないでください。近いうちに全てを終わらせて戻りますので。どうか‼ どうか‼ 大人しくなさっていてください。真央様は狙われておりますゆえに必要な情報だけは残しておきます。真央様の下僕。ケイスケより』……。何言ってんのよ‼ あのバカは‼」


 真央はケイスケの残した文章を口に出して読むと怒りだした。残している文章にはケイスケが裏切りをしてまで相手に入り込む理由が一切書かれていないのだ真央が起こるのも無理はない。


「落ち着けよ」

「こんなの残して1人突っ走るとか腹が立ってしょうがないわ‼」


 未だ気持ちが高ぶっている真央を馬皇は宥めて先に進めようとするが真央は馬皇を無視して感情をぶつける。馬皇はため息をつくと真央の肩を掴んだ。


「なによっ‼」

「落ち着け‼ 由愛が驚いてるだろ‼ 気持ちは分からんでもないが情報を見るのが先だろ?」


 馬皇の言葉にようやっと周りを見ることが出来たのか由愛やサライラ、馬皇の順に見る。由愛は真央の声に驚いて委縮していた。サライラは驚いてはいるがそれ以上に馬皇が肩を掴んでいるのが気に入らないのかジト目でこちらを見ている。最後に馬皇は真央を正面にして真剣な顔をして真央を見ている。その視線に真央は視線を逸らすと今の姿勢に気が付く。両肩を掴まれて異性である馬皇がこちらを見ている。まるでマンガの告白シーンで告白の答えを聞こうとして詰め寄られて肩を掴まれているように見えないでもない状態である。


「言われなくても分かってるわよ‼ 次行くんでしょ‼ 次‼」


 真央は顔を真っ赤にして馬皇の手を引きはがしてケイスケの残してくれた情報を確認するためにパソコンの方へ向く。


「それでサライラ? それらしいものは有ったか?」

「メモがありました。お父様。このファイル内にあるデータはWCAでしたっけ? その組織の非合法の実験のデータらしいですわ」


 そう言ってサライラがファイルを開いていくと文章で有ったり写真で有ったりと様々な実験の情報が開いていく。


「こ、これは‼」


 その中には人体実験に使われた人間を解剖した情報だったり、異能の発現段階で爆発したという凄惨な状態の写真で有ったり人間と別の生物の合成と言った明らかに普通の人間が見るにはきつい物が所狭しと自動で開かれていく。


「う、うぐっ‼」

「由愛‼」

「だ、大丈夫です……」

「顔を青くして言うことじゃないわよ。悪いけど由愛をちょっと連れて行ってくるわ」

「分かった。サライラと見せられそうな実験と気になった物を探してまとめとくぞ」

「ええ。そうしてくれると助かるわ」

「すみません」

「気にすんな」


 そう言って真央は由愛を連れてトイレに向かう。そして、ある程度吐かせてから落ち着かせるために外へ出た。それを音と気配で確認した馬皇はサライラと一緒に作業を開始する。


「さて、俺らはこの情報をまとめて真央に見せる分と由愛に見せても問題ない分、先生たち送る分のコピーと気になった情報を洗い出すか」

「あの? お父様……」

「どうした? サライラ?」


 いつもよりもしおらしい声を出してサライラは馬皇に話しかける。


「私を膝の上に載せてください」

「は?」


 馬皇はサライラの要求にすっとんきょうな声を上げる。


「ですから、膝の上に乗せてください」

「いやいやいや‼ なんでそうなる‼」


 要求の内容は分かるがなぜそうなるのか分からない要求に馬皇は慌てる。サライラが至極真面目な表情で言っているために馬皇の困惑はより深くなる。


「だって、お父様最近私に構ってくれないんですもん‼ 真央や由愛ばっかりズルイのです。私だってご褒美が欲しんです。それに乗せてくださいますと作業の速度がいつもより早くなる気がします」

「そんなんで早くなるなら俺の膝なんていつでも使えばいいが、事あるごとに布団に潜り込むのは止めろよ」


 なんだかんだと言ってもサライラに甘い馬皇である。無茶な要求ではないために膝に乗せるのを許可する。それと同時に事あるごとに朝起きるとベッドにサライラが潜り込んでいたという馬皇にとって心臓に悪いことを止めさせようと言ってみるが。


「それはそれ。できない相談ですわ」

「おい‼」


 サライラは案の定馬皇の要求を拒否して馬皇の膝の上に乗る。膝に乗せることを条件にベッドに入り込むなと言えばどっちを取るか確実に悩んで、自制させることもできるのだがそういう所でそんな条件を突きつけないあたりに馬皇がサライラに甘い。久々の馬皇の膝にテンションが上がっているのかフンスと鼻息を荒くしてパソコンの画面へ作業に取り掛かる。元々のサライラの作業速度が分からないために速くなったかどうか話わからないがサライラは次々に気になったと思われる情報をかき集めていく。その中に馬皇は気になる情報を発見してサライラに待ったをかけた。


「サライラ‼ ストップ‼」

「どうかなさいましたか? お父様?」

「いや、どうにも無視できなさそうな情報があったからな」


 馬皇がそう言うと馬皇が声を出した時に見ていたのデータの詳細を開く。


「これですか?」


 そこには馬皇たちが一番最初に関わったであろう若返りの薬の事が書かれていた。


「ああ。これが関わっているってことは……と、あった‼」

「これはお父様? と誰ですか?」


 サライラに変わって馬皇が読み進めていくと馬皇と真央の前世の姿が映った画像が見つかる。


「こっちのは真央だ」

「真央ですか?」

「ああ。あの時に少しばかりあそこ一帯を吹き飛ばしちまったけどここに画像があるってことはこの事を敵の一部が知っている可能性があるのか」

「その可能性はありそうですわね」


 馬皇の推測をサライラは肯定する。はっきりと文章でもイレギュラーの発生により実験は遅延と書かれておりこの街のどこに移されるかも書かれていた。


「これは当たりだな。というかこんな実験の場所まで書くなよ……。今回はありがたいが」


 何とも迂闊にしか見えない文章であるが本来であればこのような情報がパソコンのデータとして残っているはずのないものである。基本的に口頭か伝える報告書にしても暗号がかけられていたり上層部の一部だけに報告されるものである。


 実の所ケイスケが馬皇もしくは真央が見つけることを確信して書き足してネットからは隔離した情報である。大方、ここまで見るのだったら下手に放置するよりも誘導する形で動かした方が都合がいいと踏んで書き残している情報である。


「他にも結構ありますわ」

「とりあえず、その場所についてはできれば別に残しておいてくれないか?」

「分かりましたわ」


 馬皇がそう言うとサライラはせっせと実験の場所の情報を確認して要点をまとめ始める。


「気になってたんだがいつの間にそんなにパソコン使い慣れてるんだ?」


 馬皇はずっと疑問に思っていたことを口にする。馬皇の言葉にサライラは手を止めると馬皇の方を向いて笑顔で言った。


「それは秘密ですわ」

「そうか……」


 母であるアリアと全く同じこと言ったサライラに馬皇は肩を落とす。この答えはアリアが何を聞いても答えてくれない時によく使う言葉だ。アリアに影響されつつあるサライラに馬皇は何とも言えないような表情になる。


「そろそろ終わりますわ」


 サライラが馬皇に報告している内に扉の開く音が聞こえてくる。時間を見てみるとそれなりに時間が経っていたようでそろそろ1時間になろうかとしていた。


「帰って来たな」


 馬皇がそう呟くと共に今の扉が開く。そこから真央と由愛が近くのコンビニにでも寄っていたのか袋を持って入ってくる。


「戻りました。すみません。どうにも耐えられなくて……」

「気にすんなって言っただろ。それが普通だ」

「そうよ。慣れていても気分のいい話で話じゃないんだから当たり前よ。それとただいま。って何してんのよ……?」


 真央は怪訝な顔をしながらサライラを膝に乗せて作業を見ている馬皇に言った。


「こっちの方がはかどるんだとよ……」


 馬皇の半ばあきらめ気味な声と対照的に明らかに張り切っていますといった様子で素早く行動しているサライラを見る。馬皇の言葉に真央と由愛は何となく納得する。


「分かったわ。それと情報はどんな感じ?」

「それはもう少しだけ待ってくれ。サライラが纏めてくれてる」

「なんというかハイスペック過ぎない? サライラ?」

「うちの母が仕込んでるって言ったろ。あんなんでハイテク機器使いこなしてるんだぜ。うちの母」

「そう」


 馬皇が死んだ魚のような目をしているのを見て真央も自身の母親が似た様な感じでいろいろとできる事に謎の親近感がわいてライバルにもかかわらず温かい目をする。馬皇は真央のその目に居心地が悪くなり目をそむけてサライラの作業の方を見る。そこでちょうどよく作業が終了したのかサライラは手を止めた。


「終わりましたわ」

「よく頑張ったな」

「えへ、えへへへぇ……」


 サライラを馬皇がなでるとうれしそうにされるがままになる。サライラは緩んだ顔になるが途中から人様に見せられなくなりそうなほど蕩けた顔をし始める。ひとしきり撫でて馬皇が手を離すと物足りなさそうな顔をするがこれ以上はないという風に馬皇と一緒に反対側にいる真央と由愛の方を向いたために諦める。


 頭の中とパソコン内でまとめた今回の情報を馬皇たちは話し出した。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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