廊下は走るな
更新しました。
説明回になるのかな?
サブタイに関係するのが最後の少しだけという……
「……という訳なんです」
校舎内の生徒指導室。テーブルと一緒に並べられた椅子に腰かけて鉄に闘技大会の決勝戦が中止になった理由の襲撃時にてケイスケが敵として対面していた事を説明した。
「なるほどな。あの時に屋久島が言っていた援軍というのはケイスケ君のことか……」
「それで私たちはケイスケを追うことにしたんですが、今回はその前の計画を練っている最中にしつこいナンパにあって襲われて返り討ちにして後は先生も見たとおりです」
真央は素直に答えた。その内容に鉄は難しい顔をして真央に聞いた。
「ちなみに今回のナンパ男とケイスケ君との関係性は?」
「私が見た限りだとこの前のケイスケと同じ仮面と恰好をした男が薬を渡していました」
「それは無関係ではなさそうだな……」
「どうやらこの薬を飲むことで異能を手に入れることが出来るそうです」
「副作用については?」
「そこに関しては特に説明がないようでした。ですが、あの時の状態を考えると碌な物じゃないのは確かでしょうね。ちなみに何かを言おうとしていた時に苦しんで消滅したのは証拠隠滅用の何かで副作用ではないと思っています」
「そうなるとかなり厄介だな。うかつに情報を得られないのか……。それにしてもそんな胡散臭い薬をよく飲めたものだな」
いくらなんでも警戒心がなさすぎると鉄だけでなく戦闘には参加しない由愛すらあきれ顔をしている時点でいろいろと察せてしまうレベルである。
「いえ。どうにもその時のあの場では警戒心や認識を惑わされてどうにも思考が低下していたみたいです。そのせいなのか彼の思考もかなりぼんやりしたものだったから得た情報も靄が勝った物ばっかりで……」
「……面倒な話だ。それではうかつに組織の者を送り込めない」
思考を誘導されていると言う事にその薬の危険性に鉄の表情は険しくなる。
その場に行った本人では理解できないのだ。たとえ密偵を送り込んだとしても惑わされて薬を飲まされて情報が吐けなくなる。もしくはいいように情報を抜き取られるだけだろう。
「ケイスケの住処だった場所に行くとしてもだ。行って何をするんだったんだ?」
鉄は薬の件も気になったが真央や馬皇が向かおうとしているケイスケの家で何をするつもりだったのかたずねる。
「そこら辺の予定をあの時に話し合って詰めようと思ってたんですが、ケイスケらしき人物が今回のナンパ男の件で関わっているという情報を得た時にそう言えばケイスケの住んでいる所を本人から聞いたのを思い出しまして」
たまたま繋がったことから過去のそれなりに有用そうな情報を思い出したことを苦笑しながら告げる。
「事情は分かった。だが追うことに関して危険はないのか?」
「それについては何とも言えません。ただ、馬皇と由愛、サライラと一緒にケイスケが住んでいるはずの場所まで一度行こうかと思ってました」
「ちなみに私も同行するが構わないか?」
鉄がそう言うと真央は少し困ったような顔をして少しだけ考える。少しだけ沈黙が続きある程度考えがまとまったのか真央は話を始めた。
「すいません。今回のことに関しては出来るだけ私たちだけで行きたいです」
「ほう? 理由は?」
普通に考えればわざわざ危険地帯になるような可能性のある場所へと足を踏み入れるのだ。よっぽどの理由もしくは大丈夫だという確信がなければそんなところへと送り出す意味がないからだ。
「おそらくですがケイスケのいたと思われる部屋とその周辺では戦闘はないと思っています。友達の連絡がないから訪ねにきたと言ってマンションの大家さんに鍵を貸してもらおうと思っています。多分既に放棄されていてまずまともな情報なんてないでしょうがね」
確かに堂々と中を調べることが出来る理由としてはもっともだ。そんな中に教師が混ざっていたら怪しく思われても無理はないだろう。
「それなら行く理由がないだろ」
「いいえ。まともな情報は……です。ケイスケと私、後は系統が違うけど馬皇とサライラは魔法が使えます」
「? 異能を魔法といっているだけだろう?」
「違います。確かに異能なんですが正確には魔力を使った技能なんです。異世界の。私と馬皇は記憶とか能力を正確には魂を受け継いでる要は前世を覚えてて転生しているというのが異能なんです。まあ、魔法に関しての一部はその危険性から秘匿されていますが。基本的に一般的なものです。ちなみにこのことについてはここだけの秘密という事でお願いします」
真央は今まで隠していたことをあっさりと鉄に伝える。さすがにそれには馬皇も驚いた顔をして真央を見る。
思っていた以上に混乱するような情報に鉄はどう判断すればいいのか扱いに困る。それでも信頼して話してくれた真央がさらに頭を下げると鉄が観念したように真央に言った。
「あぁぁぁ‼ 分かった‼ 分かった‼ 頭まで下げんでもいい。確かにそう言う話ならば下手に言えんな。私も正直半信半疑だ。要約すれば、今回は魔法の痕跡があるかもしれないから調べに行くだけで危険はないんだな」
鉄の言葉に真央は鉄に見えないように小さくガッツポーズを取る。どこまでが計算なのか分からないがこういう時に発揮する真央のある種の執念には感心する。
真央はにこやかな表情で鉄に今回する予定の事を話始める。
「はい。探知もできますから人がいればまず気が付きますし駄目そうならいったん戻ってきます。それにこいつが協力してくれるので不意打ちについても多分対応してくれると思ってます」
真央がちらりと馬皇の方を見て鉄に視線を戻す。馬皇も分かっているのか鉄を見て力強くうなづいた。
鉄は真央と馬皇を見た後に由愛を見る。彼女は鉄に若干怯えた様に震えるがその眼は何を言われようが絶対に着いて行くとばかりに決意の籠っているように鉄には感じられた。
「……はぁ。分かった。そこまでの意思があるんなら私はとやかくは言わんが無理はするなよ」
「「「はい」」」
元気よく返事をすると馬皇たちは生徒指導室を勢いよく飛び出していく。
「こら‼ 廊下を走るな‼ って‼ 聞いてないな。あれは。……後で説教だな」
鉄は怒鳴り声をものともせずに走り去っていく馬皇たち。一時だけ呆れたよう顔をするが戻ってきたときに叱れるように特別様のお説教の内容を考え始める。
なにかしらの情報を掴んでくることをほぼ確信しながら馬皇たちを見送るのだった。
次回はケイスケ宅。突撃お宅訪問。物語がちょっと進む予定
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