ナンパと豹変
遅くなりましたが更新しました。
楽しんでもらえると幸いです。
「それにしても暑いわね」
「そうですねぇ」
「別の場所にするか?」
真夏のジメジメとした湿気が相まって夏場特有の凶悪なまでの蒸し暑さが襲う午後。あまりの暑さに人っ子一人いない公園。馬皇たちは想定を超えた暑さに公園の木陰でだれていた。玉のような粒の汗をかきながらときおり来る熱風がより暑さを際立たせる。
「どこにするってのよ?」
「……すまんが思いつかない」
真央がだるそうな声で馬皇に聞くが役に立たない答えが帰って来て真央は木陰の中に覆われているベンチに思い切りもたれ掛って後ろの木に背中を預けている馬皇を見る。馬皇も暑さで思考が鈍っているのか動く気配がない。
「それならさっさと考えなさいよね」
「……無茶言うなよ」
そう言って馬皇も話の出来る場所の候補地を考える。馬皇が学校の裏から提案を始めて図書館、ハンバーガーショップと言った場所を上げていくが暑さ的になしという事とジーニアスでの事を思い出して却下が続く。
「ならどこにするんだよ? さすがにこれ以上は俺も思いつかないぞ」
候補地をあらかた言い切った馬皇はもう思いつかないと白旗を上げる。
「私だって思いつかないわよ。それにしても喉かわいた……」
「また唐突だな。何にするんだ?」
脈絡のない候補地選びから真央ののどが渇いた発言に馬皇は思わず呆れる。
「いいの?」
「お前が言い出したんだろうが。それに由愛をこのままにしとくのはさすがに申し訳ないからな。それで何にするんだ?」
そう言って由愛の方を見るとフラフラとはしていないがぐったりとした様子の由愛をみて真央は確かにこのまま話して場所を決めるのはあまり良くはなさそうだった。
「お茶。後、由愛にはスポーツドリンクの方がよさそうだからさっさと買ってきて」
「あいよ」
「あの……私も着いていきます」
由愛も馬皇が飲み物を買いに行くのに着いて行こうと立ち上がるが少しふらついていてだれが見ても危ないと思えてしまう。
「何言ってんのよ。そのまま行かせたらすぐに倒れてしまいそうなんだからここで大人しくしてなさい。それに倒れられても迷惑よ」
「そうだぞ。もう少し話を詰めなきゃなんないことがあるんだからそのために休んでおけ」
「……分かりました」
馬皇と真央にそこまで言われて申し訳なさそうに由愛は座る。
「ちょっくら行ってくる」
割と危ない状態だと察した馬皇は近くにある自動販売機に心持ち急いだ様子で向かって行った。真央と由愛が2人になったのを見計らってか入れ替わる様に若い男の4人組が真央たちを見つけて話しかけてきた。
「ねぇねぇ。そこの可愛らしいお2人さん。よかったらいっしょにお茶しない?」
「ぷっ」
あまりにも直接的なナンパに真央はついおかしくなって吹きだした。
「おっと脈あり? 近くにいい店知ってるからさ」
真央の吹きだした笑いが受けているというポジティブに解釈するナンパ男たち。ちなみに真央が笑っているのはこんなのでナンパが成功するはずがないと考えていることと一体何人の女性に同じように交渉して失敗しているのかを想像して笑っただけである。真央たちの沈黙を悩んでいると判断したのかナンパしているリーダーらしき男は調子づいてどんどん話しかける。
「いいだろ。な? こんなに暑いんだからさ。涼みに行くついでに一緒に遊びに行こうぜぇ」
「……えっと、その。すいません。友達を待たせているので」
「そう言うのは結構よ」
由愛はどう断るべきかを考えていたのか言いよどみ真央はきっぱりと拒絶する。
「大丈夫だって。悪いようにはしないからさっ」
「きゃっ‼」
リーダーの男は由愛の腕を掴んで強引に引き上げる。由愛も抵抗するが力では負けるために引っ張られる。その強引さに真央の堪忍袋の緒が切れる。
「何してんのよっ‼ 嫌がってるでしょ‼」
「ああ‼ この子は迷っていたんだ。それなら俺らと一緒に行っても問題ないだろ‼」
「あなた馬鹿なの? どう見ても嫌がってるじゃない」
「っは‼ 俺と一緒にお茶するだけなのにどうして嫌がるんだ? 」
どうして嫌がるのか心底わからないという風に頭をかしげるナンパ男に真央は顔をしかめる。
「そう。正直困るんですけど? ねぇ? この人馬鹿なの?」
後ろに控えて何も言ってこない男たちに真央が聞くとここまでするとは思っていなかったのか取り巻きの男たちは困惑したまま首を小さく横に振る。
「そう。あなた頭の可愛そうな人なのね」
冷ややかな表情で真央がそう言うとリーダーは由愛の手を離して向き直ると片手で真央の胸倉をつかむ。由愛は手を離された反動で地面にへたり込む。
「あ゛あ゛? ケンカ売ってんのか? 4対1だぞ?」
リーダーは馬鹿にされていることは理解しているらしい。怒り心頭といった様子で何かあったらすぐにでも殴りそうである。
「もっちん。さすがに女の子に手を上げるのは……」
さすがにやりすぎだと取り巻きの1人が止めにかかるがその取り巻きを殴り倒す。殴り倒された男は先程の一撃で血を吐きだす。見ていた取り巻きたちはリーダーだった男の豹変ぶりに慌てて逃げ始めるがある者は握力だけで頭を破裂させられ、残りの1人は殴り倒された男と同じ末路をたどる。
「うるせぇ‼ お前らは黙って見てれば良かったんだよ‼ お前らも飲めばよかったのによ‼ もったいねぇの。今の俺にかなう奴なんていねえ‼ それでお前はどうするんだ? 俺の奴隷になるか?」
リーダーだった男は真央を掴んだまま殺された男たちにそう吐き捨てて真央に問いかける。人を殺したというのに全く堪えている様子はない。しかも、力を見せびらかして答えを聞いているのではなく俺の物になれと脅しているというのが子悪党ぽさを加速させる。それを見た真央は呆れた様な顔で濁った目の男に鋭い目で言った。
「っは‼ そんなしょぼい力に酔いしれてるチンピラ風情が私をどうしようって? 片腹痛いわ」
「下手にでてりゃ調子に乗りやがって‼ こういう奴には一度痛い目見せて分からせてやんねえとな‼」
なめまわすように体の隅々まで見て真央の小さな胸に手をやろうとする男。やろうとしている行動に対して由愛が男の手を止めようとする。
「真央さんに何をしているんですか‼」
「邪魔すんな‼ お前は後だ‼」
「きゃあ‼」
男が腕を振るって由愛を払い飛ばされる。由愛も暑さで体力がぎりぎりだったのか起き上がらない。
「由愛‼」
由愛の倒れた姿を見て頭に血が上り真央の怒りに合わせて氷の魔法の冷気で男を凍らせようとするが凍らせる途中で急に抵抗が強くなり魔法が中断され真央は苛立つ。
「どういうことよ‼」
「お前は異能者だったのか? はっ‼ あの薬を飲んだ今の俺にそんなちゃちな物きくわくねぇだろ‼ 大人しくしてろ‼」
それなりに強い力を使っているはずなのに何も起きずに話をする男を見て真央は慌てる。男は真央に殴殴りかかり真央は衝撃に備えてとっさに目を瞑った。
しかし、来ると思われていた衝撃はいつまで経ってもやってこなかった。
「俺が目を離してる間に何があったんだよ?」
真央が目を開けると迫りくる拳は後ろから話しかける声の主によって止められていた。殴りかかろうとした男は必死に力を入れてはいるがまるで鉄の枷でつなぎとめられているように一切動きが取れない。
「遅いわよ」
真央は安堵したという感情とまた馬皇に助けられるという屈辱につい強がった口調で馬皇に言った。
「そんなこと言われてもこんな事態になってるなんて思いもしないだろ? 普通」
真央の文句に馬皇は苦笑いして皮肉気に返す。ビニール袋を引っ提げた馬皇が殴りかかっていた男の腕を強く握ると男はその痛みで思わず真央を離す。真央を離したのを確認すると馬皇は男を掴んだまま蹴りを入れて無造作に放り投げる。
「何してんだよ。こんなの簡単にあしらえるだろ? お前なら?」
真央の方を見て馬皇がそう言うと真央はばつの悪い顔をして言った。
「悪かったわね‼ 油断してただけよ‼ それに由愛が怪我したのよ‼ 冷静になれる?」
「それは無理だな」
「でしょ」
よほど鬱憤が溜まっていたのか真央は捲し立てる。由愛に仲間に危害を加えられたと有ってはいかに転生した存在と会っても無理な話である。
「フヒヒヒヒ。もう許さねえ。皆殺しだ。皆殺しにしてやる……。うっ」
気味の悪い笑い声を上げながら怨嗟の籠った声でそう言うと男はとたんに苦しみ出した。体中の筋肉が濁った緑に変色し口からは短い牙をのぞかせ始め元の身体の3倍近くまで体中が膨らむ。頭の毛は全て抜け落ち元が人間であったとは到底思えない醜悪な顔へと変質する。
「……オデハサイキョウノチカラヲテニイレタンダ。ハハハハハ」
半ば理性を失ったように笑い続ける姿に一周周って冷静になって馬皇と真央は憐れみを覚える。
「なんというか……あれね。確かにこいつなら魔法抵抗が高いはずだわ。頭足りないけど」
「お前が言いたいことは分かる。あれ結構タフで面倒くさいんだよな」
「そうね」
馬皇も真央も変貌を遂げたナンパのリーダーだった存在を冷静に分析し始める。
「トロルだな」
「ええ。トロルね」
元は人間であったという事を考えると本当に容赦のない同じ人間の所業に真央はため息をつく。馬皇も同じようなことを考えたのか眉を顰めて頭を抱える。
「ジネ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェェェ‼」
変わってしまったナンパ男のリーダーもといトロルは濁った雄たけびと共に遠い目をしていた馬皇と真央に向かって雄たけびをあげ襲い掛かる。
そろそろ100話来そうなので新作を考えていたら更新が遅れました。
申し訳ありません。
いつも読んで下さりありがとうございます。
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