プロローグ
4章開始です。
夏休みも真っ盛りの太陽が容赦なく照りつけるある日。喫茶『ジーニアス』の空調の利いた客席の片隅で馬皇たちは今後の予定をどうするかを決めるために集まっていた。
闘技大会の決勝戦は新たな異能組織WCAの存在によってうやむやのままの決勝戦は中止となった。さらにはWCAが互助会の存在と異能を世界へ公表したことによる混乱を収めるために互助会は現在各地で動き回っている。
その時にいろいろと勇次が別れの言葉とともに何かあったら呼んでくれと携帯のアドレスを交換して忙しそうにその場を去って行ったのは馬皇たちの印象に残っていた。鉄は馬皇と真央に勇次が説明しきれなかった補足の説明して馬皇たちを送り届けた後に何か用事があるのかそのまま向かって行ってしまった。
「何かあれば呼んでくれ。この学校の先生だからな。調べると言ってもそう言うのは校長の役割なんだ。私はこの土地の守護の関係で基本的に遠くには行けないから呼べばいつでも駆けつけるぞ」
と鉄は残していたのでそこまで遠くには行っていないことだけは分かるセリフを残す。こうして馬皇たちは鉄に学校まで送り届けられ鉄を見届けた後に一日置いて喫茶『ジーニアス』に集まった。そして今後の夏休みの予定と事の顛末を詳しくは何が有ったのか知らない由愛に説明するためである。余談ではあるがサライラは説明は馬皇から受けてはいるが今は馬皇の母であるアリアに連れられているために別行動中である。
「そんなことがあったんですか……」
真央は由愛たちと別れた後に何が有ったのかをコーヒーを飲みながら一通り話して由愛は驚いたような顔をした。その時のケイスケと真央のやり取りはある種の変態チックではあったがお互いが信頼し合っているようにも見えていたために由愛はどのような顔をすればいいのか迷ってしまう。
「だからね。私は残りの夏休みを使ってケイスケの事を探そうと思ってるの。だから、夏休みの間は私もこいつも連絡が取れなくなるかもしれないから一言言っておこうかと思ってね。なるべくあなたを巻き込みたくはないから夏休みは大人しくしていてほしいの」
真央がそう締めくくる。由愛はどう答えればいいのか分からずに沈黙する。しばらくの間、由愛は無言のまま何かを考えていたがやがて答えがまとまったのか由愛は言った。
「私も協力させてください。いえ、一緒に連れて行ってください」
「ちょっと‼ 話聞いてたの!?」
今回の件についても騒動に関わらせないように説明したにもかかわらず一緒に行動することを選んだ由愛に真央は思わず机を叩いて立ち上がる。その音に周りが驚き真央もそれに気が付いてすぐに周りに頭を下げる。周りも真央が申し訳なさそうにしていることが分かったのか真央たちに向いた視線は消える。真央はそのまま座りなおして話を続けた。
「危険な目に合うわよ。……少なくとも馬皇と車に乗っていた時に襲われた時の事や今回の闘技大会以上に危険なのよ。由愛はケイスケに対してそんなに面識なかったでしょ。それに馬皇やサライラは自分の身は自分で守れるけどあなたはそうではない。正直足手まといよ」
真央は声を冷たくして由愛を脅すが由愛の決意は固いのかすぐさま反論した。
「そうでしょうね。確かに私は足手まといになるかもしれません」
「でしょ‼ ならっ‼」
「ですがそんなこと関係ありません。私は真央さんについていきたいです。なんというか真央さんたちだけで行ったら何だか帰ってこない気がして仕方ないんです。私がいた所で何か変わるという訳ではないんですがそれだったら足手まといでもなんでも着いていきます。たとえ見失っても置いて行かれても意地でも探し出して着いて行って見せます」
由愛は他の部分こそは曖昧ではあったが着いていくという所だけは力強く宣言する。由愛の真摯な言葉に真央はたじろぐ。真央はしっかりと由愛を見つめると由愛は堂々とした面持ちで真央を見つめ返す。
そのようすを見ていいかげんに我慢の限界だったのか今までずっと喋っていなかった馬皇が噴き出すように笑い始めた。
「……っぐ‼ ハハハハハ‼ 駄目だ‼ 我慢できねぇ‼ だから言ったろ。どうせこうなるって。これだったらむしろ一緒に居ない方が危ないだろ」
「う、うるさいわね‼ いいでしょ‼ 別に‼」
「でももう連れて行くのには問題ないんだろ?」
馬皇が笑みを浮かべると真央は憤慨した様に馬皇に抗議する。
「え? ふぇぇぇ‼」
状況が分かっていないのかまた変な鳴き声のような声を上げる由愛。
「分かってるわよ‼ 連れていけばいいんでしょ‼ 全く。一度決めたらテコでも言葉曲げないんだからもう……。私だって由愛が一緒に来てくれるのはうれしいわよ。本当は。でも、由愛みたいなかわいい子に何かあったら大変じゃない」
「お前のは過保護っていうんだよ。俺やサライラも由愛の事は守るがお前もこうなるのは分かって試してたんだから素直に受け入れてやれよ。確かにかわいいのは否定しないが……」
「でも心配なのは心配なのよ‼」
馬皇と真央は口論となるがその内容は過保護すぎる2人の言葉にやられてついに由愛の頭は処理の容量を超えた。
「きゅぅぅぅ~」
「え? ちょっ‼ あれ!?」
由愛は顔を赤くして思考どころか動きも停止する。そんな由愛を見て馬皇も真央も自分の言った言葉を思い出して恥ずかしくなったのか混乱し始める。
「コホン。……お客様」
「「「あ」」」
馬皇たちの笑い声に騒いでいると思われたのか店員が席までやってきて馬皇たちをたしなめる。
「喋るなとは申しませんが他のお客様の迷惑になりますのでもう少し抑えてください」
「「「すみませんでした」」」
馬皇たちは冷静に周りを見渡すと迷惑そうな顔をしている視線を感じて素直に謝る。店員の方も1つ溜息をついた。
「はぁ。次はありませんからね。」
そう言って店員は去っていく。馬皇たちもそれ以上はないとほっと胸をなでおろす。
「……まぁ。なんだ。とりあえず出るか?」
いても問題はないがこのまま残るというには若干居心地が悪くなってしまい馬皇は提案する。
「そうね。熱いけど近くにある公園でもう少し話をしましょうか」
「私もそれでいいです」
それならと行動を開始する馬皇たち。会計を手早く済ませてうだるような暑さの中公園へと足を向けるのであった。
想定よりも進んでない……。
次回予告はその時のテンションによって書いたり書かなかったりします。その場の思い付きで書いているため毎回はちょっときついっす。
いつも読んで下さりありがとうございます。
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