全校集会
短いですが投稿です。
次は時間が飛んで放課後の主人公たちの場面になります。
我慢対決をした翌日の朝。物々しい雰囲気の中で1限目の授業を中止して全校生徒たちは体育館に呼び出された。普段は、全生徒が集まると体育館はいっぱいになるはずなのに今日は目に見えて生徒の数は少ない。あまりの少なさと友人が来ていないという不安から教師が集まっても生徒たちはざわめいていた。
「静かにしなさい」
教師たちは今の状況を説明するために生徒たちを静かにさせようとする。
しかし、一気に生徒が減っていることに不安が増しているのかざわめきは収まらなかった。全く静かにならない中で校長は体育館のステージの上まで無言で歩き、全生徒の前に立つ。重苦しい声が響いた。
「静かに」
それは大きな声ではなかった。しかし、その一声で生徒たちは全員黙る。
まず、校長は目立つ。御年55歳という年に見合わずガタイが良くグレーのスーツがよく似合っている。何よりも纏っている雰囲気が圧倒的であった。その存在感に生徒たちは気圧されて黙ったのである。
しかし、負けじと友人がいなくなった生徒たちは状況を説明してくれと言わんばかりに各々主張を始めた。
突然大きな音がした。
校長がマイクを握りつぶした音だった。マイクは見るも無残な形に変形していた。マイクを握りつぶした手からは血が流れ落ちて、太い腕が振るえている。未だに強く握っているためである。
「ひっ」
その光景に生徒が怯える。そうなって来ると少しだけ冷静になってきたのか生徒たちは周りを見る。
今回の出来事で一番悔しいのは教師陣である。見回りまでしたのに生徒たちが行方不明になったことに険しい顔をしている教師たち。集まった生徒たちは自分たちのために行動し、憤っている教師たちを見て、少しだけ頭が冷える。静まった生徒たちを見て力強い声で今回の呼び出した理由を告げた。
「まことに残念ながら昨日、我が校の生徒たちの一部が行方不明になりました。それも大勢の生徒たちが。その生徒たちの親御さんたちから話を聞いたら、昨日から今を含めてまだ帰って来ていない。さすがに集団で消えるのは普通ではあり得ない事であることは周知の事実でありますが、今回は緊急の全校集会を開かしてもらいました。朝一番にこのことを警察にも届け出ています。今回のことで警察にも警備の強化と早期解決をお願いしております。」
一旦、言葉を止めて教壇の前に立っている校長は担任の先生たちを見る。それに合わせて担任の教師たちもうなずくのを見てから話を続ける。
「それに加えて教師陣の見回りも強化します。そして、くれぐれも。くれぐれも生徒たちも一人で帰らないように。怪しい人物を見かけたら誰でもいいので大きな声を出して必ず助けを求めること。そして、必ず自身の身の安全を優先すること。いいな?」
その言葉にほぼすべての生徒がうなずく。それを見た校長もうなずいた。
「今日の2限目からについては通常授業です。警察の方ともお話しして事件が解決するか、何かしらの目途が立つまでは授業終了後速やかに帰宅するように。我々も早期解決に向けてなにか情報がないか探してます。もし。もし、生徒たちも何か怪しい人物がいたとか怪しい場所や物があったなどがあったら警察か私たち教師に。誰でもいいので教えてください。以上」
そう言って校長が静かに頭を下げると体育館のステージを降りた。空気が重いまま今回の全校集会は終わった。生徒たちが順に教室に戻っていく最中で友人たちがいなくなったうちの1人である馬皇は何かを決意した目で体育館を後にした。