本戦第2回戦 馬皇VS勇次 その3
勇次戦その3です。
今回で決着。
戦闘描写は展開に頭を悩ませる。少しだけ修正しました
馬皇と勇次の2人は爆風に飛ばされたのか意図的に距離を置いたのかリングの両端に肩で息をして立っていた。
「やるな‼」
「そっちこそ‼」
クラウを握ったままほぼ無傷な竜人と化した馬皇と左手を突きだして小さな傷などでぼろぼろな勇次はにらみ合う。
「ったく。どんなことすればあの中で生きていられるんだ?」
馬皇は警戒しながら思ったことを口にする。いくら偶然生まれた爆発とはいってもほとんどダメージもなしに吹き飛ばされるだけと言うのはあり得ない。吹き飛ばされるにしても立ったままというのは明らかにおかしい。
「それは企業秘密っすよ‼ 師匠‼」
勇次は疲れて動きが鈍くなっているがダメージを感じさせない早さで手上から下へ振り降ろす。
「くっ‼」
勇次の動きを見て馬皇は何か感じたのか上を見ると空には大量に氷の柱が空中から馬皇目がけて降り注ぐ。
氷の雨。上空から数十もの氷の柱を生み出して落とすというシンプルな技である。しかし、その氷の柱は電柱と見間違えるほど太く大きい。そんな質量の物が一斉にそれも大量に対象を目がけて降り注ぐのである。
そう言った意味では絶大な威力を誇る技の1つであるがあの氷の柱を大量に作りだすというのは時間もかかるし消耗も大きい。しかし、、今回は水蒸気で姿が見えなくなり時間が稼げたということ、上空に溜まった水蒸気を利用できたという事が重なってデメリットのほとんどが無い。使わない理由は無いのである。
馬皇も今の竜人の形態であれば超人的な回復力もあり致命傷にはならないがルール上であれば死亡判定されるが馬皇にも想像できた。それが分かっているために馬皇は回避に徹する。
「どんどん行くっすよ‼」
勇次は創りだした氷柱で相手の逃げ場を潰しながらどんどんと氷の柱を落としていく。馬皇も回避していくが徐々に完全に避けたと思っていた氷柱が馬皇の体に掠っていく。明らかに鈍っていると分かったころになって馬皇は罠にかかったことに気が付く。
「やっと効いてきたっすね」
ニヤリと笑って攻撃の手を緩めずにひたすら氷柱を落とし続ける勇次。
「っち‼ そういうことかよ‼」
氷の柱ばかりに気を取られていて今の馬皇の周辺の温度がかなり低いことにようやく気が付く。勇次が異能を使って創りだしたものは氷のリンク、礫、剣、氷の柱である。いくら真夏で暑かろうがこの辺り一帯の温度が低くなるのは当然である。
しかし、それだけではここまで体が冷えていることは気づくはずだ。それに気が付かなかったのは勇次が氷のリンクを作った時にリンクの底の方も凍らせていたことが起因する。それによって動いている最中は気が付かなくて温度が戻りづらくなっているのである。さらに、勇次はそれに加えて水蒸気をうまく利用して馬皇の体温をきずかれないように奪って行ったのである。生き物の身体は急な温度の変化には気づくことが出来るが徐々にそれも少しずつ変化して行った温度には気が付きづらい。
「クラウ‼」
『あいあいさ~』
クラウの緊張感の欠片もない声が発せられて力が抜けそうになるがクラウの力を使って馬皇も体温を上げて動けるようにする。それと同時に逃げ場を確保するために落ちた後の氷柱をクラウの炎を使って溶かす。
「準備は整ったっす‼ それを待ってたっすよ」
一瞬足を止めた馬皇に対して勇次はそう言うと拳を握った左手が光っていた。
「くらえっ‼ リリース‼」
明らかに先程まで勇次が使っていた異能とは真逆の熱量を持ったエネルギーが収束されレーザーとなって馬皇に向けて放たれる。
勇次は2つの異能を持っている。
異能と言うのは本来であれば1人に1つが基本であるがまれに複数の能力を持った者が生まれる。複数の能力を持つ異能者は珍しく異能者の中で100人1人もいない割合である。
1つ目の異能は水と氷を操る異能である。氷であれば大気中の水分を使って想像の思いつく限り自由に創りだして操ることが出来る使い勝手のいい異能である。そして、今放たれた勇次の2つ目の異能はエネルギー変換。それが勇次の名付けたこの異能の名前である。限界があるがエネルギーを吸収するして集めたエネルギーを一方向に向かって放出する異能である。戦闘中に発生した爆発も空気中の一部も温度も勇次が吸収したである。相手の攻撃の衝撃を全て吸収できるのであれば凶悪な異能であるが、この吸収も何でも吸収できるわけではない。吸収を行うためには莫大な集中が必要となる。それこそ、少しでも別の方に意識が言った瞬間に吸収したエネルギーは熱となって勇次に襲い掛かってくるのである。そして、複数のエネルギーを同時に吸収できないのである。
これだけ見ると使い勝手が悪いように見えるがそれを補って有り余る威力を誇るのが放出である。それは、溜めたエネルギーに比例してそれを増幅し数倍の威力となって相手に迫るのである。しかしながら、それはもろ刃の剣なのであった。理論上は相手の攻撃すらエネルギーに変換できるがまだ、その領域には足を踏み入れていない。現状では溜めたエネルギーを自身のエネルギーも巻き込んで放つという手段しかできない。そのため放つと勇次のエネルギーは空になり行動不能となる。
リスキーではあるがその威力は確かな物。そのためにこれは勇次の切り札であり最後の攻撃である。
「いっけぇぇぇぇぇぇ‼」
勇次は力のこもった声で思いっきり叫ぶ。
「いい‼ すげえぞ‼ 勇次‼ だが、勝つのはこの俺だ‼」
『あう……‼ 入ってくる‼ すごく‼ 入ってくるのぉぉぉ‼』
勇次の気迫に馬皇は凶暴な笑みを浮かべてクラウに自身の魔力のほとんどを食わせる。クラウの方は馬皇の莫大な魔力に奇声を上げているがテンションのあがった馬皇にはそれが耳に入って来ていない。膨大な魔力はどんどん炎に変換されそれは一般的な両手剣と同じくらいの大きさの中に圧縮されていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁ‼」
炎技守式・千閃万斬。馬皇の魔力によって剣の形をした太陽となったクラウを振り降ろす。その一撃が勇次の攻撃を一瞬だけ押しのける。振り降ろした軌跡と全く同じ軌跡で振り上げ勇次の攻撃が裂けた。そして今度は、ほんの少しだけずれた斬撃を放ち全く同じ軌跡で振りぬき元にいた場所に戻る。すると波が合わさる様に軌跡が増幅し勇次の一撃を押しのける距離が延びる。馬皇の動きの繰り返しがどんどんと重なって行って勇次の攻撃を押し返していく。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ‼」
「負けてたまるか‼」
飲まれてたまるかとばかりに勇次はレーザーの威力を上げるが馬皇は剣で軌跡を描き続ける。馬皇が一振りするたびに勇次の一撃を飲み込む速度が上がる。やがて均衡は崩れてまるで太陽のように肥大化した炎の斬撃は勇次を飲み込んだ。
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