本戦第2回戦 馬皇VS勇次 その2
馬皇VS勇次その2です。
馬皇の持つ魔剣は某ネトゲのツインダガーを片手だけ持っているのをイメージしていただければと思います。
「こい。クラウ」
馬皇が剣の名を呼ぶと何もない手にはシンプルな一本の剣が握られていた。刀身は30cmほど。片刃で刀のように反りが存在する。強度を優先しているためか刃は分厚く刃幅は手のひらほどもある。そんな武骨な刃の形とは裏腹にその剣は鮮やかな緋色である。その刃の根元の部分には装飾の深く濃い青色の宝石が付いている。
『呼ばれて飛び出て♪ あなたの良妻剣母のクラウちゃん‼ 初登場ですよ~♪』
やたらテンションの高い声が馬皇の頭に響く。そして、どこの誰ともわからない相手に勝手に自己紹介を始める自称良妻剣母である。と馬皇が思考しているとそれを読んだのかクラウはツッコむ。
『自称じゃありませんよ‼ それにこんな感じで自己紹介しておかないと印象に残らないですし。ほら最近はキャラが立ってないと生き残れませんから。それよりも旦那様‼ 久々に使う気になってくださったのですね』
うるうると感激しているかのような声を出して勝手に喋るクラウ。遺物であるがなぜか馬皇というよりも担い手になる者に対して喋っていることが分かるという訳のわからない姉妹剣の片割れである。
「……いや。誰に言ってんだよ? お前はそれほどの相手じゃない限り使う気はなかったんだが……うるさいし」
クラウに対して呆れたような表情をしてツッコミを入れると最後の方で聞こえないくらい小さな声で思わず本音を口に出す馬皇。その後に疲れたように溜息を吐く。めんどうくさい性格をしているが剣としての性能は優秀なのである。
『旦那様‼』
当然のクラウの大声にさっきのが聞かれたと思って馬皇は体を一瞬だけ震わせる。
『そんなに私のことを大事に思っていてくれたのですね‼ でも、私は剣です。出来ればこれからもずっと使ってくださいまし‼ そして、妹のソラスちゃん以外に浮気なんてしちゃダメですからね‼』
どうやら聞かれていなかったらしく見当違いなこと喋るクラウ。そんな様子にほっと息を吐いて前を見ると勇次が困惑した様子でこっちを見ていた。ちなみにソラスと言うのはクラウの姉妹剣である。本来は双剣として扱う武器なのであるがクラウとは対照的に真面目な性格である。実の所サライラが転移する際にそそのかした張本人(剣)がクラウである。
「アニキ……。なんで剣出して1人で剣相手に話しかけてるんすか? 来ないならこっちから行くっすよ‼ 氷弾に‼ 氷剣‼」
剣であるクラウの声は基本的に持ち主である馬皇にしか聞こえない。クラウ自身がやろうと思えば他の相手にも聞こえるらしいのだが当然のごとくそんなことをクラウがしているわけでなく完全に1人漫才をしているように勇次を含む他の見ている観客たちには映っていた。
思わず手を止めていた勇次は我返って氷の粒を射出し、同時に氷の剣を創りだして切りかかる。
『ふふん。私を読んで下さらなかった罰が当たりましたね。後そろそろ妾にしてくださってもいいのですよ旦那様』
「知るかっ‼ったく、燃やせ‼ クラウ‼」
『はいは~い』
クラウの戯言に付き合ってる間にも勇次の攻撃が迫ってくる馬皇はクラウに魔力を与えて名を呼ぶとクラウは軽い返事をする。それと同時に緋色の刀身は炎に包まれた。その炎は一瞬で大きな刀身となって氷の礫と一緒に馬皇の周辺にあった勇次の創りだした氷のリンクを一振りでかき消した。
魔剣クラウ。持ち主の魔力を喰らい炎を操る力を持つ。その炎のリーチも使い手が与えた魔力に比例して長く大きくもできる。また炎の温度自体も使い手の魔力とイメージでどこまでも高くなるというとんでもない魔剣である。非常に使い勝手はいいのだが気をはらないと勝手に魔力をバカ食いするのと使い手の魔力が足らないと生命力まで奪ってしまうということと使い手として選ばれなければ剣に火をともすことすらできないといういろんな意味で使い手を選ぶ剣でもある。
「ちょっ‼ そんなんありっすか‼」
勇次は滑って移動していた足場の氷が一瞬にして掻き消えて慌てた様子で転ばないようにつんのめる。
「隙ありだ」
『うわー。容赦ないですねぇ』
「うるせぇ」
勇次の隙を突いて馬皇も間合いを詰めてクラウで切り付ける。勇次も直ぐに立て直して氷剣で迎撃する。勇次の氷剣は大気中の水分を集めて固体化したものである。氷の塊である勇次の剣と超高温である炎の塊であるクラウの刀身の二つがぶつかり合った場合どうなるのか。
氷は水になるのを一瞬で通り越して水蒸気となる。その時の水蒸気の体積は元の水よりも圧倒的に増えてそれが力となって勢いよく放出される。その威力はすさまじく結界で守られている空間であってもその衝撃は外へと伝わり大きな揺れを作り出した。
『おーっと‼ 水蒸気のせいで中を見ることが出来ません』
実況のリンが水蒸気のせいで見えない空間に対して実況を入れる。
【なんというか。久々に喋りましたね。私たち。身代わりの宝珠の反応はまだありますし両者共に生きているのは分かるのですがどうなっているのか気になります】
『それは言わないでください‼ それにしても、中が見えません‼ 大事なことなので2回言いました‼』
若干実況の方向性がずれているリンとクマに会場は苦笑していると水蒸気の煙が晴れて馬皇と勇次が姿を現した。
次回は決着予定です。
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