本戦第2回戦 馬皇VS勇次 その1
闘技大会も第二回戦に入ります。
今回は馬皇対勇次です。
戦闘描写が伝わる様にうまく良いなぁ
『会場にお集まりもみなさ~ん‼ おはようございます‼ リンです‼ 今日も盛り上がって参りましょう‼』
【クマです。今日は昨日の第1戦より白熱する戦いが見られる気がします】
『ほう。クマさん。自信たっぷりですね? その根拠は?』
【勘です】
クマの答えにリンは「うわぁ」といった様子で顔をしかめた。しかし、彼女もプロ。すぐに笑顔を作り何事もなかったかのようにトークの開始を宣言する。
『はいは~い‼ と言うわけで本戦第2戦目始まりますよぉ‼ 今日もはりきっていきましょぉ~』
闘技大会4日目。
本戦の2試合目となる今日。クマの言葉を華麗にスルーしてリンは闘技大会の開始の合図を上げる。昨日もいろいろとトラブルは有ったがそんなことをものともせず、今日も今日とて熱い戦いを見に会場は満員である。選手たちも既に控室の入っており今か今かと待ち構えている。
【スルーはひどいですよ】
『さてさて、第2戦目からはどんな戦いが見られるのでしょうか? それでは、第1試合の選手入場です 』
クマの言葉を完全にスルーしながらリンは入場の指示を出す。リンの発言に合わせて選手2人が入場した。
『まずは、この人‼ 新人にして予選から圧倒的な強さで勝ち上がってきた‼ 強いけどネームがおかしい馬選手‼』
リンの言葉に合わせて馬皇が見えると会場が沸く。馬皇自身もやる気満々なのか覇気のようなものをまとって登場するがリンの説明に少しだけバランスを崩す。
『対して‼ 前回準優勝者‼ 今回も決勝まで歩を進めるのでしょうか? ユウジ選手‼』
相対するように反対側から勇次は現れた。前回準優勝であるためか歓声が馬皇より多い。2人がリングの中に入ると両者はまったく同時に右手を差し出す。
「アニキ。今日はよろしくっす」
「おう。こちらこそよろしくな」
2人はお互いの右手を力強く握る。
【こういうのいいですね。青春って感じで気持ちがいいです】
『そうですね。こういうのを見ていると清々しいと思います』
リンの言葉に何人かの観客は同意なのか頷いているのがちらほらと見えた。しばらくお互いが強く右手を握りしめたままの状態で馬皇たちの視線は火花を散らす。
『それはともかく‼ 今日もはりきってじゃんじゃん行きましょう‼ 第1試合目スタート‼』
「くたばれぇ‼」
「先手必勝っす‼」
リンのフライング気味な唐突な開始の合図をしたと同時に拳が顔面にぶつかる音が2つ鳴った。お互いに手は握ったままである。両者の顔面には相手の拳が突き刺さる。2人は直ぐに拳を戻しノーガードで殴り合いを始める。
『こ、これは……‼』
【これは、握手したままなぐり合っているだと‼】
『それは、私のセリフだって言ってるでしょうが‼』
【でも、勝手に開始したのリンさんですよ】
『うっ‼ それはそうだけど‼ ええぃ‼ 2人とも頑張ってくださ~い‼』
【無かったことにした‼】
リンとクマの掛け合いの中でも2人の殴り合いは続く。重く鈍い音を立てながらもどちらも攻撃の手を緩めることはなかった。
ワンハンド・シェイク・デスマッチ。異能とは全く関係ないが握手したままでの殴り合いである。どちらも握手しているために避けづらく攻撃をガードしにくい。さらに、握手している状態だとお互いに構えて殴ることが出来ないため腕力が物を言う勝負である。そのために2人こ拳はどちらも相手の体に入っていく。
殴り合いを続けてらちが明かないと思ったのか同時に手を離して少しだけ距離を取る。
「やるな。俺の拳に合わせてくるとは」
「そっちこそ。一発一発が重くて半分近くがカウンター出来なかったっす」
リンの急な試合開始の合図に思わず手を握ったまま殴り合いを開始した馬皇たちはお互いに思ったよりも出来ることをたたえ合う。馬皇は腕力に物を言わせた重い一撃をカウンターされないようにタイミングを所々ずらして殴りこむスタイル。一方、勇次は鋭い感覚で馬皇の攻撃に合わせてカウンターを入れていくスタイルである。
「さっきのは合図が出たからついやっちまったがこっからが本番だ」
「そうっすね」
ここまでは前座とばかりに勇次は足場をどんどんと凍らせていく。馬皇は足を取られてはたまらないとばかりにジャンプして空気を蹴ってそのまま勇次に向かってとび蹴りを敢行する。
しかし、勇次は氷の上を器用に滑って前にいた位置から大きく離れて馬皇の蹴りを避けるとリング全体を氷で覆った。即席の小さなスケートリンクの完成である。とび蹴りを入れた場所もあっという間に氷で覆われて元に戻っている。
「そんな見え見えの攻撃なんて当たらないっすよ。てか、そんな感じで空中蹴れるんすね」
馬皇が空中でも方向転換できるということからかなり厄介だと勇次は感じた。実は鉄も前回同じようなことしていたことを覚えているために驚きは少ない。
「ああ、これか? ちょっとした方法で足場作ってるだけだ」
馬皇はなんてことないように言うがこの場全体を氷に覆われたのは勇次と同じように厄介だと感じていた。氷の上では滑るために思い切り踏み込めないのだ。さらに、いくら足場に寄らない攻撃が出来ようが相手の異能で作り上げた舞台の上なのだ。それがどんな攻撃につながるのか分からない状態なのである。一方で勇次の方は氷の上に慣れていてスムーズに動けている。
「厄介だな」
「それ。いくっすよ‼」
勇次は氷の足場を出したり消したりしながら氷の礫や氷でできた剣で一撃入れてから離脱するというヒットアンドアウェイで有利に動かしていく。
「くっ‼」
馬皇も勇次が接近するのに合わせて拳を突きだすがその時にはもう攻撃が終わって勇次は離脱しているのである。
「ヘイヘイ‼ その程度っすか?」
「はっ‼ 舐めんな‼」
馬皇も空中からの変則的な動きで勇次を奔走して蹴りを加える。
「ぐっ‼」
馬皇の蹴りを喰らって氷の上を滑っていく勇次。氷で相手も滑っているせいか蹴りを入れてもきっちり入っていない感触に馬皇も足を止めて迎え撃つ形を取る。勇次の方も本来ダメージになっていた蹴りを飛ばされることで威力を落として足元に氷を作り出して動きを止める。警戒しているが、先ほどと同じように隙を見つけて攻撃するために馬皇の周りをグルグルと回り始める。
「あれを出すか」
馬皇は何かを思いついたのか思い出したのか誰にも聞超えないくらいに小さな声で一言そう呟くと馬皇は左手を何もない空間に突きだした。
キリが良いので今回はここまで。
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