会話ロボットリターンズ
あの会話ロボット再登場です。
ちなみに、変形の過程は途中までいい感じに変形して唐突に全く別物になる感じです。
「お人形さん来ましたよ」
旅館の談話室。しかも、死角になっている所にさらに仕切りなどでさらに小分けにされた場所。馬皇たちはサライラの情報を信じて談話室へと再びやってきていた。サライラが話しけるとロボットに話し始める。
『おう。サライラちゃん。珍しく大勢連れて来たじゃねぇか。何人かは見たことある奴らだな。よう。初めての奴は初めましてだ。俺は人形じゃなくてロボットのPST-1200略してパスタだって言ってるだろ。いつも来てくれるのはありがたいんだが、そろそろ覚えてくれ』
そこには最初に会った時と見た目は全く同じに見えるが中身はまるで別物だと言われてもおかしくないぐらい渋い声で流暢に喋るロボットがいた。 ちなみに見た目は全長30cmぐらいで完全に人型をしている。細部にも気を使っているのか指まで綺麗に5本あり、関節まで再現しているという徹底ぶりである。
「何が起こったというの‼」
「もはや別物です」
「あんな感じじゃなかったのか?」
真央と由愛は実際に会話のときには機械音声だったはずなのだ。それを知っている2人はこんなに流暢に話せるはずがないと困惑し、くわしく知らない馬皇と勇次は自然に会話できているロボットに純粋に驚く。
「それで、お人形さん。あの時の地図を見せてほしいのだけれど」
サライラはパスタの言うことを聞かずにお人形さんと言ってお願いしてみる。パスタは相変わらず名前を言ってくれないサライラに溜息を吐く。
『……はぁ。だから、俺は人形じゃないって言ってるだろう。サライラちゃんのお願いだからおいちゃん、聞いてもいいけど後ろの人たちもそれでいいのかい?』
パスタの声は低くはあるが比較的に穏やかな声で馬皇たちの方を向いて聞く。一同はいろいろとツッコミたいことはあるが聞けるということなので素直にうなずく。
「ちなみに、あの時に見せてくれた地図ってなんだったんですの?」
サライラは的確に情報を聞き出そうとする。
『ああ。あれはな。俺が知ってるダンジョンの場所を表す地図だ。元々俺はダンジョンの案内兼管理をしてんだ』
思っていたよりも重要な情報に馬皇たちは内心でガッツポーズを取る。
「なら、どんな物があるかもわかるの?」
話しかけないと言っていた真央も思わずロボットに話しかける。
『ゴメンネ。ヨクキキトレナカッタヨ。モウイッカイイッテクレル?』
「…………」
あの時と全く同じ答えに真央は無言で拳を振り上げる。しかも、声は最初の時の機械音声と変わらないということが真央にとってはよっぽど腹が立ったのがはたから見ても分かるくらいに変なオーラが出ていた。
「ちょっ‼ 落ち着け‼ まだ地図見てないんだぞ‼」
「何やってるっすか‼ 真央さん」
「まだだめですよ‼ 真央さん‼」
「どいて‼ そいつを壊せない‼」
馬皇と勇次、由愛は真央を抑え込む。
『サライラちゃんのお友達は変わった奴が多いな』
呆れたような声でパスタはサライラに言った。
「それほどでも」
『それは褒めてねぇからな……。まぁ、そんなサライラちゃんだから気に入ってるんだが……。ほらよ。これが地図だ。なんならコピーしてやろうか?』
「なんというか……。とことん便利な奴ね」
真央は破壊することを諦めたのかげんなりした顔で言った。もちろん真央の言葉には反応してくれていないようだ。
「そう言えば挨拶が遅れたな。俺は馬皇だ。初めまして。地図のコピーお願いしていいか?」
「俺は勇次っす」
『地図については構わねぇよ。サライラちゃんのお願いだしな。それとわざわざこんな俺に挨拶してくれるなんてありがとうな。正式名称PST-1200。開発者たちからはパスタって呼ばれている。だから、パスタでいい。こっちこそよろしくな』
「こっちこそよろしくな。パスタ。サライラが世話になってる」
「よろしくっす。パスタ」
言葉遣いは雑ではあるがロボットなのにやけに人間味のある奴である。パスは馬皇の方を向くと明るい感じで話しかけてきた。
『おう。と言うことはお前さんがサライラちゃんのこれか?』
パスタは唐突に体を動かして小指を器用に立てる。
「ば、ばっか‼ 違ぇよ‼ 懐いてはいるけどこいつの親みたいなもんだ‼」
馬皇はそう言うがサライラは嬉しそうに別世界にトリップしているようだった。
『ほうほう。こんな俺にも普通に話かけてくれるサライラちゃんだ。幸せしてやってくれよ』
馬皇とサライラの様子を交互に見て馬皇の発言を全く信じていない様子であるパスタだが馬皇を見てこいつはサライラを幸せにしてくれるとロボットながらにして思ったのだろう。馬皇もパスタの言葉に深くうなずいた。
「おう。そんなの当たり前だろ」
『なら、いいんだ。地図は今から印刷するから背中のボタン押してくれ』
パスタがそう言うと背中を見せて点滅するボタンが体から出てくる。
「これを押せばいいんだな」
『ああ』
馬皇はパスタに言われるとおりにボタンを押すとガチャンガチャンと音を立て前の形よりも明らかに大きい印刷機に姿を変える。
「「「「「……………」」」」」
明らかに質量保存やら変形の過程やらが一気に抜けている変形に全員が何も言えなくなる。
『どうだ‼ すごいだろ‼』
印刷機が自慢気に馬皇たちに言った。
「すごいですわ‼ そんなこともできるんですね‼ お人形さん‼」
『はっはっは‼ そうだろう‼ そうだろう‼』
サライラだけ興奮気味答えるとパスタも楽しげに返す。
「どうなってるのよ……あれ?」
その印刷機から一枚の紙が出てくる姿を見て呆れたように真央が言った。他サライラを除いた全員が同じ気持ちなのか疲れたように同意した。地図が出てくるとパスタは言った。
『最初に行くんなら旅館を出て直ぐにある川の上流へいきな。上流には滝があるからその裏に入口があるぜ』
確かに地図を見ると旅館を出て直ぐの所に赤い点があった。それがダンジョンの位置なのだろう。
「ありがとな。助かる」
『ああ。そうそう。これはダンジョンを見つけた時に読んでくれって言われてるんだった』
馬皇がそう言うとパスタは思い出したように音声を再生した。
『はっはっはっはっは‼ 良く見つけたな‼ 久々のチャレンジャーだ‼ ダンジョンは面白いからぜひ来てくれ‼ ……以上で再生終了します。じゃあな』
そう言うと印刷機になったパスタは急に光ったかと思うといつの間にか消えてしまった。
「転移まで使えるのか……。もう何でもありだな。あのロボット……」
「……もう驚かないわ」
「とりあえず、情報は手に入れたから調べるのは明日にしないっすか……。なんというか疲れたっす」
ツッコミどころ満載なパスタにいろいろ言いたかったが唐突に消えてしまって何とも言えない疲労感が襲ってくる。サライラだけはきょとんとしているが勇次の提案に他一同はうなずくと各自部屋に戻っていくのであった。
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