主人公が1対1で最初に戦う相手って大体友人かライバルかクソ野郎だよね
本戦の組み合わせの発表回。
次回で本戦に入ります。
『おお‼』
映像が映し出されると観客席のどよめきと共にまたしてもリンの胸元がアップになった映像が映し出される。リンは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてマイクを持った手で胸元を隠す。その姿がまた女性らしさを強調して観客席を魅了する。
ちなみに、同じように観客席にいる女性たちの男を見る目が一段と冷ややかなのはお察しの通りであろう。
『ちょっと‼ さっきも胸元をドアップで取ってましたよね‼ わざとなんですか‼ わざとなんですよねぇ‼ セクハラで訴えますよ‼』
カメラの視点が変わったのかいきなりリンがカメラマンの男に言い寄っているシーンがとられる。声も少し低く声も大きいためか非常に迫力がある。
カメラマンの代わりにADがスケッチブックになにかを書くとそのまま出す。
【すいません。そこら辺のお話は巻きでお願いします。もう映ってるのでその話は後でお願いします】
もう映ってることに気が付いてリンの顔はハッとなって映し出されているカメラの方を向く。
『みなさん‼ 長らくお待たせしました‼ それでは今回の本戦のカードの発表です‼』
リンが笑顔で喋り出す。先程とは打って変わりドスのきいた声でなく明るい予選の時と同じ声である。所々本性が見え隠れしているが切り替えが早い所はさすがのアイドルである。
『まずは、これだ‼』
リンは早速とばかりに中央にある何も映し出されていない画面を指さす。それに合わせるようにカメラも画面の方へ向いて映し出される。そこには各選手の登録ネームが映し出されている。シード枠と書かれた部分にはテツ、ユウジ、親分、スミちゃんと書かれている。
『これは本戦から出る選手たちね。本戦から出ることが確定していてもシードの枠がないからさっそく活躍が見られますよ‼ みなさん‼ 今年もどんな活躍を見せてくれるか楽しみですよね。私も明日からが楽しみで仕方ありません‼』
『わあぁぁぁ‼』
リンの言葉に観客席の方からも同意の歓声が上がるが大きな声が混ざり合ってるため何を言っているのか分からいのはテンションのせいなのか声が揃っていないだけなのか。
「あ~。ユウジっていうのは俺っすね。テツは鉄さん。親分はさっきのおっちゃんこと親部さん。スミちゃんは……菫さんっす」
観客席の盛り上がりとは別に馬皇たちは勇次から本戦から出場する選手についてざっと説明を聞く。見事に今回鉢合わせた人物ばかりに馬皇は驚く。
「なんというか……。俺たちがあった奴らばっかりだな」
「そうっすね。まあ、ある意味師匠ってマンガとかアニメの主人公みたいな人なんで必然なのかなって思わなくもないっす。特にバトル物の」
「「ああ~」」
勇次の言葉に由愛とサライラが納得する。ちなみに、サライラがそういう知識を持っているのは馬皇が持っている少年誌系のマンガの影響である。最初はお父様の好きなものだから知っておかないとという気持ちから読み始めたのだが恐るべきは日本の文化マンガ。何が決め手になったのかは分からないが異世界人のサライラの心を見事に掴んだのである。ちなみに主人公の不良が1話目で死んだり、蘇って霊界探偵をしたり妖怪類とバトルをするものだということを明記しておく。
そんな話をしていると映像の方ではリンがアップで映し出されておりドヤ顔で喋る。
『お次は予選を勝ち残った今回の兵どもだ~‼』
リンの発言の後にボードの方の選手たち20人の登録ネームが映し出される。
『予選を見ていた皆さんはもうお分かりかと思いますが今回も強そうな人たちがいっぱいです‼ 彼ら彼女らはいったいどのような戦いを見せてくれるのでしょうか‼ さぁ‼ ここからが本番ですよ~‼ 本戦の対戦カードはこれだ‼』
画面からは強調するための効果音が出る。思いのほか大きかったのか知っているはずのリンが体を一瞬だけ硬直させる。その後、ゆっくりとリンはその場にへたり込んだ。
予想外のリンのリアクションが受けたのか吹きだす人が多少居たようで肩を震わせているものまでいる。リンはその姿勢のままADの方に向かって抗議し始める。
『誰ですか‼ こんなに大きいなんて聞いてませんよ‼ さっきから、明らかに狙ってやってますよね‼』
【違います。リンちゃんか可愛いからそれを他の視聴者さんたちに知ってもらいたかったんだ‼ それに今回の報酬はかなり色を付けた上げるから勘弁して】
ADの人はカンペを前に出したままで親指を上げる。リンは顔を赤らめて言った。
『も、もうしょうがないですね‼ 私も鬼じゃないのでこれで許してあげます』
そう言って4本立てる。
ADは顔を真っ青にしてカンペにか新しく書く。
【1.5で。なにとぞ‼ なにとぞ‼ お慈悲を‼】
『仕方ないですねぇ。ならこれで』
指を2本に変える。リンの方は嗜虐的な笑みを浮かべている。ADは何かを覚悟したような顔をしてもう一度書く。
【1.8で勘弁してください。それが限界です】
『しょうがないですねぇ。1.5でいいですよ。代わりにこれに懲りたらもう変なことしないでくださいよ。あまりに酷いと訴えますからね』
【ありがとうございます】
ADはリンのことをまるで女神か天使のように土下座して拝んでから去った。周りは完全に置いてけぼりである。ちなみに余談ではあるがこの依頼の報酬自体がアイドルに頼めるような報酬よりかなり少なかったのである。会社の関係と彼女の善意で仕事を受けてくれたのだがこの仕事はリアクションやお笑いが必要なバラエティではない。吹っ掛けているように見えるがリンが受け取ることになる報酬がいつもの仕事の報酬に戻っただけである。
とはいえ、そんな裏事情のことなど誰も知らないことではあるが。
『では‼ 気を取り直して本戦の対戦カード見ましょう‼ 組み合わせは勝ち残った者同士ランダムで出てきますので見逃さないでね』
リンはウインクをすると元気よくボードにまた指を指した。今度は対戦する2人のネームがどんどんと映し出される。
何回か表示された後に馬皇の名前が出てくる。
「俺の出番は3回目か。1回戦の相手は……っとサライラか」
「やりましたわ‼ 1回戦目からお父様となんて‼ 負けませんわ‼」
恍惚とした表情でサライラは馬皇を見る。大好きだからこそ戦いたいと思うサライラに馬皇は苦笑いをする。とは言ったものの馬皇自身も楽しみなのか目元を見ると闘志を燃やしていることが分かる。
「まったく……誰に似たのやら」
馬皇の前世である竜族。彼らにとって戦うことは日常の一部である。とは言ってもいつも殺し合うわけではない。同じレベルの相手とのギリギリの戦いを特に好んでいる。そう言った戦いで得る勝利が何よりも好きなのである。ようは武人の気質である者が多い。
つまり、似た者親子(前世)が明日の戦いにワクワクしている。それだけで弱い殺気が辺りに無差別に飛び散る。感覚の鋭い人は体をブルリと震わせて辺りを見回すものが続出している。
「私はモブ一号ね。全く分からないわ」
真央は戦う相手の名前だけを覚えてマイペースにしている。
「ちょっ‼ ここで闘争心むき出しにしないでくださいっす‼ 試合は明日からっすよ」
「おっと。スマン」
「あら、やだ。私ったら。お父様のことになると我慢できませんわ。お父様今日は一緒に寝ましょう?」
勇次の言葉に馬皇とサライラは殺気を含んだ闘気をすぐに引っ込める。
サライラはさりげなく馬皇と一緒に寝ようと誘う。馬皇は先程とは打って変わり本当に苦そうな顔をする。
「それは勘弁してくれ……」
「そ、そうですよ‼ 馬皇さんと2人きりでなんて……」
馬皇の言葉に同調して由愛も話に入ってくる。由愛とサライラは馬皇に聞こえないように何かの言い合いを始める。
「えっと……アニキはサライラ様は戦うはずでしたっすよね……」
完全に戦う気だったはずの2人がいつの間にか女の子の方から一緒に寝ようと誘われていることに勇次は困惑する。
「あ~。気にすんな。いつものことだから」
「そ、そっすか……。なら気にしないっす」
理解はできないが2人の関係がそういうものと納得することにした勇次。とりあえず馬皇たちは明日の本戦の対戦相手が決まるのであった。
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