大会なの? 祭りなの?
闘技大会のはずなのに周りの会場も混沌としている。
あと2~4話したら本戦の方に入って行こうと思います。
馬皇たちはサライラを探して屋台を回っていく。
馬皇は目の前にあるたこ焼き屋の人にサライラらしき人物について聞きに行った。しばらくすると1人分のたこ焼きを持って馬皇は由愛の所に戻ってくる。
「どうでした? 馬皇さん」
「駄目だ。めぼしい情報はなかった。本当にどこに行ったんだ?サライラは……」
馬皇と由愛はサライラについて話し合うがどこにいるのか見当もつかない状態だった。
「ここの綿あめおいしいわね。由愛もどう?」
「そうなんですか? 頂きます」
真央はサライラの事なんて関係ないとばかりに屋台を満喫しているようで両手に持っている綿あめの片方を由愛に渡していた。
「いや、探すの手伝ってくれよ……」
馬皇は真央に苦言を呈するがどこ吹く風。真央は適当に言った。
「なぁに? あんたもこの綿あめ欲しいの? しょうがないわね。少しだけよ」
そう言って真央は綿あめを小さくちぎって馬皇の手に乗っける。綿あめは暑さでベタベタしていた。
馬皇も食べ物を無駄にする気はないのか口に含む。フワフワした食感を楽しむ間もなく口の中で溶ける綿あめの感想を言う。
「甘いな」
馬皇は素直に言った。真央は真央で由愛に綿あめの残りを口に含んで溶けるのを楽しんでから言った。
「そうね。甘いでしょ。綿あめ。由愛や私だっているんだからこの雰囲気楽しみなさいよ。辛気臭い顔してるからサライラも見つからないのよ。探し物なんかは忘れたころには見つかるんだからそのうち見付かるわよ」
真央の言葉に馬皇は改めて由愛と真央を見る。由愛はチラチラと馬皇の方を何度か見る。サライラも心配であることは変わりないのだろうが由愛は馬皇が楽しんでいるのか心配しているようであった。真央については言わずもがなである。そんな様子に馬皇は苦笑する。
「無茶言うなよ」
「それでいいのよ。由愛に心配かけさせるんじゃないわよ」
真央は言いたいことだけ言うと由愛の元に向かって行く。その途中で流れるようにベビーカステラを買って由愛にもおすそ分け。どちらも楽しそうに買い食いを楽しんでいる。そんな2人を見て馬皇も由愛たちの方へ向かう。
「さっきサライラの事聞いてた時にもらったんだが、食うか?」
馬皇が先程もらったたこ焼きを真央と由愛の前に出す。
「はい。頂きます」
「私も甘いものばかりで飽きてたから1個貰うわ」
2人はたこ焼きに刺さっている竹串を使って口の中に入れる。
「あつ‼ はふっ‼ はふっ‼」
「っ‼」
出来たてのたこ焼きが熱かったのか大きなリアクションをする2人。真央はどこからともなくコップの中に魔法で水を入れると一気に飲み干す。同じようにもう1回水を入れると由愛にも渡した。
「ほらっ。由愛の分」
「は、っはりがとうござひます」
よっぽど熱かったのか由愛はちびちびと口に水を含んだ。
「っく‼」
馬皇は2人の行動がツボに入ったのか笑いをこらえる。少しして落ち着いたのか馬皇の方を向いて言った。
「馬皇さん‼ 出来たてなら先に言ってくださいよ」
由愛は顔を真っ赤にして馬皇を怒る。
「すまん。すまん。つい……な」
馬皇は笑いながら言うが由愛は本当に怒っているのか頬を膨らませて言った。
「むうっ‼ 馬皇さん‼ 私だって怒るんですからね」
馬皇の目の前でさらに顔を近づける由愛。馬皇は由愛から離れようとするが真央が金縛りの魔法でその場に固定する。全力で動けば動くことが出来るだろうがその場合の周りの被害を考えると動くことが出来なくなる。
「由愛。馬皇はまだあのたこ焼き食べてないみたいよ」
そう言って馬皇が手に持っているたこ焼きを強奪する真央。
「そうですね。馬皇さんにも同じ目に合わせてしまいましょう」
由愛も真央もノリノリで竹串にたこ焼きを刺す。こぼさないように手で皿を作った真央と由愛はそのたこ焼きを馬皇の口の方に持って行く。
「はい。あ~ん」
「あ~んです」
「ちょっ‼ 待て‼ 話せばわかる‼」
馬皇は必死に抵抗するが喋ることはできるが動くことが出来ない。2人は同時にたこ焼きを馬皇に持って行く。口の中に入れないようにするがたこ焼きが口とほっぺに当たり、その熱さで馬皇は声を出す。
「あっつ‼ 悪かった‼ 悪かったって‼ 熱い‼ 熱いって‼ 勘弁してくれ‼」
馬皇はそう言うが由愛たちの手は止まらない。
「問答‼」
「無用です‼」
「ウゴッ‼」
真央と由愛がそれぞれそう言うと馬皇の口に同時に突っ込む。馬皇はたこ焼きの熱さをどうにかしようと周りを見るが飲み物屋は近くにない。ハフハフと口で息をしてどうにかしてでもたこ焼きを飲み込めるようになるまで覚まそうとする。その姿を見て由愛と真央は満足したのか馬皇を見て笑っている。その熱さに耐えて馬皇は何とか飲み込むことに成功するとため息交じりに呟いた。
「はぁ……。ひどい目にあった」
「さっきのは馬皇さんが悪いです」
「そうね。さっきのはあいつが悪いわね」
弁解する間もなく馬皇が真央たちは言った。2対1のため多数決では勝ち目はないのである。すると、さっき通ってきた道の方がにぎやかになってくる。
「何かあるのか?」
あの熱さから復活した馬皇は言う。
「さぁ?」
「とりあえず行ってみませんか?」
由愛の提案に馬皇と真央は同時に答える。
「そうだな」
「ええ。そうね」
同じことを言ったことに2人はにらみ合うが由愛が先に言ってしまいそうになっていたので慌てて後を追う。サライラを探している最中であるのに由愛まで見失うと探すのが大変である。
賑わっている方へ向かってみるとお神輿を引いているようだった。
「もはや、大会なのかお祭りなのか分からないわね」
何でもアリなこの状況に真央は思わず言わずにはいられなかった。完全にお祭りである。
「馬皇さん‼ 真央さん‼ 上の方見てください‼」
由愛は慌てた様子で神輿の上に載っている人物を指さす。そこには、神輿を担いでいる人たちとは違い巫女服を着たサライラがノリノリで大きな扇子を持って指示しているようだった。扇子で道の方を指すとその方向に向けて神輿が移動を始める。サライラも神輿の上からいろんな方向をキョロキョロとしながら指示を出す。
「何やってんだよ……」
「さすがに私も同感だと言うしかないわ……」
「サライラさん。カワイイです」
由愛だけ少し違うこと言っているがよくわからない状態のサライラに馬皇たちは呆然とする。お神輿が離れていく姿を見て馬皇たちは慌ててついていく。何はともあれ、サライラを見つけた馬皇たちであった。
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