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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第三章 海だ‼ 孤島だ‼ 異能者だ‼ 前編
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そこに型抜きがあったからするのよ by真央

真央がいると思わしき型抜きの屋台を見つけた馬皇たち。そこに真央はいるのだろうか。


楽しんでいただけたらと思います。

 屋台を見て回っている内に馬皇たちは型抜きの屋台を見つけた。盛況と言うわけではないがまばらに人がいて挑戦しているのを見かける。


「馬皇さん。いました」


 由愛の指さす方を見ると挑戦している人たちの中に真央が黙々と1人で作業している姿を見つける。馬皇たちには気が付いていないようで画鋲と手に持って機械のようにラムネで出来た板に刺すという地味な作業を繰り返す。


 なぜか真央の目は死んでいるが。


「あの? 真央さん大丈夫なんでしょうか?」


 由愛は小さな声で真央の心配をする。


「とりあえず、近くまで行こう。話はそれからだ」

「はい」


 2人はそろそろと真央の後ろまで行く。真央が作業している席を見るとあと少しで完成と言うところまで来ているようだった。順調なようで少し安心する。その横には無残に敗北した跡が大量に置かれているが……。


 型に描かれている絵は鼻の全体の絵である。難易度はそこそこであるが花の茎は細く目を近づけて特に慎重に削っていく。真央のその姿に馬皇たちは息をのんで見守る。型抜きではあるがそれだけの集中している姿に話しかけるという選択肢はなかった。


「くしゅっ」

「「っ‼」」


 作業の田注あと少しと言う所で真央はくしゃみをした。慎重に削る真央の姿に馬皇と由愛に緊張が走る。真央は直ぐに型の方に影響がないか調べる。問題ないことを確認すると真央は慎重に台の上に戻して作業を再開した。作業をすること5分。とうとう、真央が作っていた花が完成した。


「できたわ」


 花を綺麗に抜いた真央は喜びのあまり周りの目なんか知ったこっちゃねえと言う感じで両腕を上げた。いわゆるバンザイのポーズである。真央のあまりの喜びように馬皇と由愛は一安心する。


 真央は額の汗をぬぐうと自信満々にこの店の店主らしき男に完成した花を見せる。


「これなら問題ないでしょ」

「そうかい。見せて見な」


 店主は真央から型通りの形になったお菓子を受け取り裏にしたり表にしたりしている。ヒビがないかを確認しているようだ。思ったより雑な扱いをされる削られたお菓子に真央は何かを祈る様に完成した型を見ている。やがて、店主はグッと親指を上げる。


「負けたよ‼ 完璧だな‼」


 そう言って店主は会計の箱から賞金を出す。900円ではあるが真央は確かに勝利した証を手にすることが出来た。


「ちなみにいくら使ったんだ?」

「そうね……。大体、1800円くらいかしら」

「大負けじゃね?」

「失礼な‼ こういうのって完成するまでするから楽しんじゃない。あれよ。あれ。そこに型抜きの屋台があるからするのよ‼……って私は誰に言っているのよ」


 真央は自信満々で喋っているが誰に言ってるのか分かっていなかったのか自分にツッコミを入れる。


「よくやるよ……」

「です」


 馬皇と由愛は呆れ気味にそう言うとぎこちないブリキのおもちゃのような動きで真央はこちらを向いた。


「馬皇……に由愛……」


 真央は馬皇たちと自然に会話していることに気が付き硬直する。硬直は一瞬。自然に反対側を向いたと思うと真央は逃げ出した。


「真央さん‼ どこに行くんですか?」


 しかし、真央が逃げる事は出来なかった。いつの間にか由愛が真央の横で手をつなでいた。逃がす気はないのかしっかりと握っている。馬皇も気づいていなかったのか驚いた顔をしている。


「まぁ、なんだ……。ドンマイ」

「……ちなみにいつからいたの?」


 真央は諦めたのか馬皇にいつから見ていたのか聞いた。


「お前が型を完成させる少し前だな」

「見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた見られてた……」


 壊れた音声機器のように同じことを連呼する真央。いつの間にか由愛の手からはなれると近くにあった木に何度も頭を打ちつける。


「お、おい。さすがに落ち着け」


 真央のその姿にさすがに見ていられなくなったのか馬皇が動揺した様子で声をかけてから真央を止める。


「放して‼ 私の記憶だけ飛ばせばすべて解決するわ‼」

「何とんちんかんなこと言ってやがる‼ 落ち着け‼」


 馬皇はそんなに見られたくなかったのかと心の中で思ったが口には出さない。やがて、落ち着いたのかやけになったのか。真央はひとりでにしゃべり始めた。


「確かに私は1人で黙々と細かい作業をするのは好きよ。だから、こんな楽しそうな店見つけちゃったら入るしかないじゃない。だけど、こういうのはかの人と一緒で楽しいと思う? 私は思わない」

「別にそんなことないと思うがな」


 馬皇は真央を説得する。しかし、真央はきっぱりと言った。


「それに由愛が少し怖かったし」


 馬皇が気付かないレベルであっさりと捕まえた時の由愛の様子を思い出して身震いする。そんな様子の真央に由愛は優しい口調で話しかける。


「別にそんなことありませんよ。真央さん。ただ、一緒にこういう所見て回りたかったのに置いてけぼりにするんですもん。さみしいですよ」

「由愛……」


 真央を優しく抱きこむ由愛。真央は仕方ないという風になすがままにされる。しばらくして満足したのか由愛は真央を離す。


「あ~……。その、もういいか?」


 途中から妙な空気になり会話に入る事の出来なかった馬皇は真央たちに話しかけた。


「あら? 居たの?」

「は、はい。馬皇さん‼ すいません」


 真央の方は若干失礼な言葉を返し、由愛は馬皇に謝った。


「気にすんな。とりあえず、真央を確保したわけだが……」

「確保って……。私はそんなにいなくならないわ」

「現にさっきまでいなくなってたわけだが?」

「うっ‼」


 言い返しようのない事実に反論できなくなる真央。今回に限って言えばその通りである。


「なぁ、サライラを知らないか?」


 いまだどこにいるのか分からないサライラことを聞く馬皇。真央は少しだけ心当たりがあるのか喋りはじめた。


「最初の方は私と一緒に居たはずだけどここで集中し始めたあたりからどこに行ったのか分からないわ」


 真央の言葉に馬皇は頭を悩ませる。今の所何も起きてはいないが、こうも何もないとサライラを見つけるのは至難の業である。真央は何か思いついたのか型抜きの店の入っていく。


「まだするのか?」


 馬皇は真央がまだ型抜きを続けるつもりなのかと聞く。


「違うわよ‼ 店主なら何か知ってるかもしれないと思って聞きに行くのよ」


「そうか……スマンが頼む」


 真央は店の奥の方に行って店主と話す。2言、3言、言葉を交えた後真央が帰ってきた。


「向こうの方に行ったって」


 真央はそう言って第3エレベーターの方へ指を指す。サライラの手掛かりが見つかり馬皇と由愛は少しだけ安心する。


「その辺には勇次がいたはずだからもしかしたら合流してるかもな」

「なに?あいつと会ったの? まぁ、それはどうでもいいわ。由愛‼ 一緒に見て回りましょう。ついでに馬皇。サライラ探すんでしょ。行くわよ」


 真央はひとりでに歩き出した。それを追うように由愛と馬皇は歩き出す。


「待ってください。真央さん。早いです」

「俺はついでかよ」

「ふふん」


 なぜか、ご機嫌な真央である。馬皇たちはサライラを探すのを再開するのだった。

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