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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第三章 海だ‼ 孤島だ‼ 異能者だ‼ 前編
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自由時間と迷子と再会と

予選が終わった午後のひと時。


「これなんかおいしそうですよ」

「いろいろありすぎだろ。これ……」


 予選終えた馬皇たちはまだ帰るには早いと外の屋台を物色していた。時間にして午後2時ぐらいである。鉄には「楽しんでくると良い」と言われて改めて会場の周りの屋台を見て回る。会場の外にある屋台の量の多さに思わずつぶやいた。


「どうしたんですか? 馬皇さん」


 由愛は呆然としている馬皇に話しかける。


「いや、なんでもない」

「そうですか」


 由愛は苦笑して馬皇の横を歩く。そこに真央とサライラの姿はなかった。


「それにしてもどこ行ったんでしょうね?」

「本当にな。他の人に迷惑かけてなけりゃあ良いんだが……」


 馬皇と由愛は2人の姿を見失ったのであった。馬皇の言葉に由愛は苦笑して辺りを見回す。人種も年齢もバラバラで意外にもたくさんの人間が大会を見に来ていることに驚く。そんな人ごみから2人を探し出すのは難しい。由愛はキョロキョロと周りを見渡すが見つからない。この場所にいても見つからないので場所を移動するために馬皇を見ると馬皇が手を出していた。馬皇の視線が横を向いているのはご愛嬌だろう。


「ぼんやりしているからな。こうすればはぐれないだろ」

「そ、そうですね」


 由愛は馬皇の手を握る。お互い恥ずかしいのか躊躇いがちに手を取る。馬皇の手は固く、大きく、そして温かった。


「よし‼ 行くか」


 気持ちを切り替えたのか馬皇がそう言うと由愛と一緒に歩き出した。身長差があるが馬皇の方が合わせてくれているのか由愛が歩きやすい速さだった。2人で歩いていると屋台の方から歓声が上がる。


「馬皇さん行ってみましょう」

「そうだな。もしかしたらいるかもしれないしな」


 2人で盛り上がっている屋台の方を見た。


「ズルズル‼ むしゃむしゃ……ゴクン」


 そこには昨日見失っていた勇次が一心不乱に焼きそばを食べていた。勇次の横には先程注文したであろう大皿に乗った焼きそばの山と空になった皿が2枚重ねておかれていた。


 一皿の大きさはかなりデカく看板の方を見ると『焼きそば大食いチャレンジ‼ 30分で食べ切れたらタダ‼ 食べ切れなければ5000円‼』の文字がでかでかと書かれている。


「スゴイ‼ これで何杯目だ?」

「これで3枚目だ‼ この屋台の主人もう涙目だぞ‼」

「奴の胃袋はブラックホールか‼」


 大会の時とは別の盛り上がりに馬皇たちは呆気にとられる。しばらく見ていると馬皇たちに気付いたのか食べるペースを上げる。3皿目を平らげて律儀に両手を合わせる。するとさらに歓声が上がった。


「確か、一皿5kgだったはずだから……。15kgも食べたのか」

「マジかよ‼ 俺一皿でも30分で食える気しねえぞ」


 勇次は屋台の主に挨拶だけ済ませると「また来ます」と告げて馬皇たち方に向かって来た。店主の方は「もう来るんじゃねえぞ‼」と涙ながらに叫んでいるのが聞こえた。


「こんちわっす。アニキ‼ 予選お疲れっす‼」

「お、おう」


 何事もなかったかのように馬皇に挨拶する勇次。馬皇もさすがに戸惑ってしまった。


「結構食うんだな」


 率直な馬皇の感想に勇次は照れくさそうに答えた。


「いやぁ~。実は異能使うのにかなりカロリー使うんっすよ。なんで、実益を兼ねたエネルギー補給っす」

「そういうもんか」

「そういうもんっす。ところでお二人で仲良く手をつないでますけどどうかしたっすか?真田さんとサライラ様は?」


 2人は慌てて手を離して馬皇は真央たちを知らないか聞いた。


「すまん。途中ではぐれたんだ。2人を見なかったか?」

「あの2人っすか? ちょっと待ってくださいね。思い出しますから」


 勇次は思い出そうとうんうんと唸る。


「思い出せそうになかったらそれでもいいんですよ」


 由愛はそう言うものの勇次はうなるのを止めない。


「ちょっと待って下さいっす。確かに2人共見かけた記憶があるんですけど……どこだったっけなぁ?」


 しばらくすると急に何か思い出したのか勇次は声をだす。


「あ‼ そういえば真央さんは型抜きの店の前で1人でニヤニヤしてたっす。型抜きの店はあっちの方っす」


 勇次は馬皇たちが来た道の反対側の屋台の道を指さす。


「そ、そうか……」


 近今、祭りでは見かけない型抜きを1人で黙々としている真央を想像して容易にイメージできる姿に苦笑しそうになる。風景に溶け込んでいそうではあるがまた何とも言えない。


「サライラの方は?」


 1人にしておくのはまずいサライラのことを勇次に聞く。


「サライラ様に関しては思い出せないっすけど一緒に探すっすよ」


 快く手伝うと言ってくれる勇次に馬皇はお願いしようとするが……。


「見つけたぁぁぁぁぁぁ‼ 」


 突然の後ろからの声に由愛はびくりと震える。馬皇と由愛は思わず振り返った。


「げぇっ‼ 菫‼」


 勇次に菫と呼ばれた少女はずかずかと勇次に迫っていく。右側にひとまとめにされた髪の毛が彼女の動きに合わせて動く。デニムのハーフパンツに涼しそうな白のトップスである。白のトップスの上には法被を着ておりその格好から屋台の手伝いをしているのだろうことがすぐにわかった。


「げぇって‼ 何よ‼ もう‼ 勇次ったら、こんなとこにいたのね‼ あんた、家の屋台手伝うって約束してたじゃないの‼ 大体あんたは昔から……」


 先に約束していたのだろう。ただならぬ剣幕で勇次を捲し立てている。さすがに先約があるのならば手伝ってもらうのは悪いと判断して馬皇は言った。


「その……なんだ……悪いな。約束があったんなら2人で探すわ」


 幸い真央の行先は分かった。馬皇は申し訳ないと思いながら由愛と2人で探しに行こうとする。


「そんな殺生な‼」

「誘おうとしてもらった所をごめんなさいね。後で来てくれればこいつ連れてっていいから。今はこのバカを連れて行かせてもらうわ」


 菫はにこやかに勇次を引きずっていく。


「後でお前の所に行くから一緒に見て回ろうぜ」

「約束っすよ~‼ 第3エレベーター付近の屋台にいるっすから絶対声かけてくださいっす~」


 逃げ出すことを諦めたのか、されるがままに引きずられていく勇次。引きずられながらも手を振るのを止めない。馬皇たちも勇次に手を振ってから見えなくなるまで見送る。


「行ったか……。約束したしな。後で声かけようぜ」

「そうですね。楽しみです」

「そうだな。とりあえずは真央を探すか……」

「はい。確か? 型抜きでしたっけ」

「ああ。店を回りながら探そう」


 馬皇はそう言ってもう一度由愛に差し出す。由愛も慣れたのか馬皇の手を握る。


「じゃあ、行くか」

「行きましょう」

「おう」



 2人はそう言って真央たちを探しに歩きはじめた。

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