予選B(真央)
予選は基本的に主人公勢が無双します。本戦から熱い戦いにしていく予定ですので頑張りたいと思います。
『それじゃあ、会場が温まってきたところでじゃんじゃん行きましょう‼』
【じゃんじゃん行きましょう】
「「「「「わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」」」」」
解説のリンが手を大きく振り上げるとクマもそれに合わせて腕を上げる。会場は最初の余韻に浸る間もなく大盛況である。
『お次のBグループの入場です‼』
Aグループの参加者たちが退場したのに合わせてBグループの選手が入場する。
「馬皇さん突破して良かったです。次は真央さんたちのグループですか……。緊張の連続ですよ」
由愛は馬皇が予選を無事に突破したことに安堵の息を吐きすぐに真央の試合が始まることに緊張していた。最初に登場した選手たちの見た目が濃すぎたせいか真央が無事に勝ち抜けるのか心配である由愛。
「なに、心配いらねえよ。あいつなら余裕で勝てるだろうよ」
「そうですか? 私はそう……」
いきなり後ろから声をかけられ由愛は不安であることをこたえようとする。しかし、その途中で聞き覚えのある声に油の切れたブリキの人形のように後ろを振り返ると先程まで試合をしていた馬皇がいた。
「うひゃぁ‼ 何で馬皇さん‼ ここにいるんですかぁぁぁぁ‼」
由愛の驚いた声に周囲にいた観客も驚くが直ぐに選手の入場に会場が沸いたのかその声にかき消される。由愛は大声を出したことが恥ずかしかったのか顔を赤らめてすごすごと席に座った。馬皇はあまりの由愛の驚きっぷりに困ったように頭を掻く。
「お、驚かせたみたいだな……。由愛1人にしとくのはあいつも俺も気が引けてな。終わったらどっちかがなるべく早めに行くことにしてたんだよ」
「は、早いですね……。驚きました」
つい先程退場したであろう馬皇に由愛は素直に答える。馬皇はニッと笑うと由愛はその笑顔にしどろもどろになる。
「退場口に転移装置があってな。特定の場所なら自由に移動できるみたいだったぞ。由愛の場所はだいたい把握してたからすぐにこれたんだ」
「え? 転移装置なんてありましたっけ?」
そんなもの見た覚えがない由愛は馬皇に聞き返した。
「ほら、一般のお客さんが侵入できない場所がちらほらあったろ。何でも選手専用で観客席から見たいっていう選手のためにつくられたらしいぞ」
「はぁ……」
よくよく思い出してみると何故か進入禁止の扉がたくさんあったことを思い出しそんなことになっているのかと由愛は由愛は呆けるしかできなかった。
「それで、真央の事だったな」
馬皇が真央のことを切り出すと由愛は聞いた。
「馬皇さんが戦っている姿は見たことがあるので強いのは分かっているんですけど、真央さんは馬皇さんと勝負? しているところしか見たことが無いのであんな感じで戦いっていうような場所で勝てるとは思えないですよ……。真央さんも女の子ですし」
「なんで勝負の所だけ疑問形なんだ……。まぁいいか。普段はじゃれ合っているがあいつ、魔法に関しては真面目に化けもんだからな。夏休みの初めに一回検証に言ったんだよ」
「真央さんと2人きりでですか?」
ジト目で由愛は馬皇を見る。馬皇はなんでそんな目で見られているのか分からないが居心地が悪くなり慌てて話し始める。
「確かに……二人きりだが、やましいことは決してないぞ‼ どの程度できるか確認しに行っただけだ。 …………まぁ、やりすぎた部分もあるけどな」
最後の部分だけ小声で由愛から目をそらす。
「何やったんですか……」
馬皇は言葉を濁したのを見て由愛は2人が自重せずに何をやらかしたのか気になる。馬皇は苦笑いするだけだったが馬皇は言った。
「それは見たら分かるさ」
『それでは選手の入場が終わったのでクマさんBブロックの予想お願いします』
【6と14ですかね……】
『今回はやや曖昧ですね。どうしてですか?』
【いえ。強さ的に言ったら本戦常連のこの2名なんですが13番が少し気になっていまして】
『確かに。大会の数少ない女の子ですからね。それに可愛らしいですもんね。やぱりクマさんもオスなんですね』
リンはクマに冷たい目線ととげのある言葉を送るがクマは慌ててワタワタと手を振って否定する。クマの着ぐるみを着ているためか動作が妙に愛くるしい。
【違いますよ‼ 可愛らしいですけども‼ そう言うわけではなくてですね。なんというか読めないんですよ。普通ならわかるんですが】
『? どういうことなんでしょうか?』
クマの書いた言葉にリンは首をかしげる。
【ふつう強い人ってオーラが強いんですよ】
『当然分かってますよね。って感じで言われても私にはわかりませんからね‼』
リンはクマの発言に突っ込みを入れる。何がおかしいのか分からないが観客席の方では笑いが起こる。
「あのクマの人言うことは分かる気がするな……」
「分かりませんよっ‼」
馬皇は理解を示したようにうんうんとうなずいて言うが由愛は馬皇の言葉が聞こえて否定する。実況の席では話が続く。
【まあ、そんな感じで見れば大体強さ的なものが感覚で分かるんですよ】
『そうなんですか。ならば、開始すればわかる事ですね‼ みなさん‼ Bブロック予選始まるよ~‼』
【そうですね。見ればわかりますよね】
『準備は整いましたね』
入場した選手が全て開始できるような状態になったの見極めるリン。リンは開始の合図を上げる。
『それじゃあ……スタート‼』
リンの開始の合図と同時に選手たちは見かけた相手に襲い掛かっていく。
「始まったわね……」
真央はいつもの調子で言葉を紡ぐ。
「隙だらけだ‼ おらあぁぁぁぁぁ‼」
真央が棒立ちしていると判断したのだろう。3、4人が真央へ向かってくる。
「野蛮ね。さっさと終わらせるわよ。『眠りの世界へ』」
真央はそう告げると真央は歌い始めた。歌詞はない。寂しいような心地よいような何とも言えない旋律だった。その歌の旋律の美しさに会場席は静かに酔いしれる。それとは裏腹にこの歌が耳に入った選手たちは次々と倒れていく。
その歌声と選手が次々と倒れていく異様な光景に他の選手たちも真央に目を向ける。すると、急に倒れだす。
『な、なんということでしょう‼ 13番が何かを歌っているのでしょうか‼ 彼女に目を向けた者のすべてが何もしていないのに倒れていきます‼』
【催眠系の能力でしょうか? 強力ですね。この手の能力って結構かかりずらいのですが……。何よりもこちらにも歌声が聞こえるのに選手だけが眠りに落ちていますね】
そうこう言っている内に選手は加速度的に倒れていく。
『1人、また1人と倒れていきます‼ そして、最後の1人‼ 彼はフラフラしていますが耐えた~‼』
1人だけ真央の歌に耐えたのかきつそうにしながらも倒れずに堪えていた。2人だけとなった会場は静まり返っていた。
「すごいわね。あなたもこれ耐えられるの? 本戦が楽しみだわ」
真央は笑顔で素直に称賛して拍手を送る。すると遅れて会場席から拍手がわきあがってくる。最初は小さかった拍手が次第に大きなうねりとなって会場を盛り上がる。
真央はきれいにお辞儀をすると実況席のリンが終了の合図を鳴らす。
『しゅ~りょ~‼ これは、戦いと言えるのかは分かりませんが‼ 勝ち残ったのは13番の魔王選手と魔王選手の歌に耐えきった17番のゆず胡椒選手だ~』
リンの合図とともに大きくなっていった拍手がより大きくなり最高潮に達する。
『異色の勝利を飾った2人が本戦にコマを進めた~‼ 今回の大会は楽しみが多いです』
【そうですね。これは面白くなりそうです】
こうして真央は悠々と本戦に歩を進めるのだった。
真央の「うたう」攻撃
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