卓球とハプニング
今回は卓球会。その後は闘技大会開始です。
時間はかかったけどいつになく書きやすいと思ってしまった。
真央の宣戦布告の後に馬皇たちは温泉から娯楽施設の一角にある卓球場に来ていた。馬皇と真央は2人とも好戦的な笑みを浮かべて卓球台の横に行く。由愛は慣れた様子で2人の審判をするために近くで見守っている。
「ポイントは?」
「11ポイント先取。サーブは2回ずつで交代よ」
真央はルールを言う。馬皇も文句はないのか頷いて言った。
「負けたら全員のジュース奢りな」
馬皇が罰ゲームを提案する。真央は即座に反応して答えた。
「吠えずらかかせてやるわ」
「上等」
馬皇と真央は今回の勝負のルールを決める。2人は意気揚々とじゃんけんをして真央がサーブの権利をもぎ取った。
「急にどうしたんすか? あの2人は?」
勇次は馬皇たちがいつも勝負をしていることを知らないためにとんとん拍子で決まっていつも間にかラケットを構えているゲームを始めた2人についていけない。そんな勇次にサライラが気のない返事をする。
「さぁ? いつもお父……馬皇さんと真央さんが何かにつけてじゃれ合っているだけですわ。お……馬皇さん頑張って♪」
「「じゃれあいじゃない(わ)」」
サライラの応援を無視して馬皇と真央の声が重なる。同じ言葉を口にして馬皇たちはまた正面を向いてにらみ合う。勇次は馬皇と真央を見てケンカするほど仲が良いという言葉が頭に浮かんだ。
「じゃあっ……行くわよ‼」
真央がそう言うと真央はサーブを放つ。自陣でワンバウンドしたピンポン玉は馬皇の方へ向かって行く。真央は器用にした回転をかけているのか馬皇の所で左側に逃げるような変則的な動きをする。
「おうっ‼ かかってこいや」
馬皇もそれに対応して真央の所に玉を返す。ピンポン玉が軽快な音を発しながら真央の所へ馬皇の所へと行き来する。それはまるでピンポン玉が躍っているようでもある。
真央は、高さを付けたり横に回転を入れて見たりと多種多様な打ち方をする。器用にもそれは台からは出ていない。普通ならばそれに対応できないものが多いため真央は勝てると思っていた。しかし、馬皇は関係ないとばかりに台の前の方に張り付いて不規則な動きを仕切る前の玉を打って対応していた。
「小賢……しい……真似……を‼」
必然的にテンポが速くなる玉に追いつくために真央の動きも早くなる。
「はんっ‼……どっちが‼」
馬皇も負けじと真央に言い返す。この2人が言い合いをしながら未だにポイントにならず打ち合いをしていることに勇次は呆れる。
「なんというか……お互い負けず嫌いなんすね」
勇次の独り言が聞こえていたのか由愛は苦笑いである。サライラは馬皇と真央の関係が羨ましいのかじっと2人を見続けている。馬皇と真央については勝負に集中しているのか聞こえていない。やがて、真央は早くなるテンポについていけなくなり馬皇がポイントを先取する。
「1-0です」
「うしっ‼ まずは先制‼」
長いラリーから最初のポイントを取れて馬皇はガッツポーズを取る。真央は悔しかったのか歯を食いしばる。
「くっ‼ まだ1ポイントよ‼ ここからが勝負よ‼」
真央は吠える。それから2人は卓球台で向き合って構える。
両者は一向に譲らずに1-1、2-1、3-1、3-2、4-2、と前半は馬皇がポイントを快調に取っていくが4-3、4-4と後半になるにつれて真央の戦術に嵌まっていくように真央にポイントを取られていく。ポイントを取りあいの末に真央が先にマッチポイントを奪う。
「9-10です」
「ハアハア……ふふん‼ さっきまでの威勢はどうしたのかしらね」
真央はマッチポイントを先にとれたことに胸を張って言った。体力をかなり使ったのか肩で息をしているのが近くで見ても分かるくらいである。汗をかいているのか浴衣が若干はだけかけている。気持ちで後1ポイントねじ込んでやると言う気迫が馬皇に伝わってくるが感想としてはなんというかエロい。
「まだ戦いは終わってねぇ‼ すぐに逆転勝利を収めてやるさ」
この気迫に負けないように馬皇は真央に言い返す。真央の恰好にエロいと思ってしまったことを頭の隅に追いやって勝負に集中する。
馬皇も少し疲れているが真央ほどではないため息が切れるというようなことはない。しかし、真央の種類豊富な玉に後半はミスが多くなっていることに気が付いている。このままではまずいことは分かっているため馬皇は考える。そこでふとあることに馬皇は気が付く。半ば賭けに近いが馬皇は実行することにする。
「行くぜ‼」
馬皇はサーブを打ち出す。変化したり不規則な動きはないがきっちりと打ちにくいコースへと入れていく。馬皇は変わらないテンポでラリーを続ける。真央もそれに対応して後ろに下がって状況を見極める。応酬するラリーで真央が後ろの方で位置が動かなくなったところをお見計らって馬皇は仕掛けた。
(今だ‼)
馬皇はそう思っていつもは思い切り振っていた玉の勢いを殺すように打った。その玉はきれいにネット付近で2バウンドする。このピンチの場面で馬皇はドロップショットを決めたのである。
「なっ‼」
真央は馬皇の予想外の行動に呆然とする。今までずっとテンポよくライジングで打っていたために真央はそう言う玉を一切警戒していなかった。終盤の曲面で馬皇がそれを綺麗に決めたのである。驚かない方が無理がある。真央はおろか由愛すら驚いているのかカウントするのが遅れる。
「じゅ、10-10です」
馬皇は静かにまたガッツポーズを取ると真央は悔しそうな顔をした。
「くっ‼ やってくれるわね。これは予想外だったわ」
「そうかい。このまま、最後も俺がとるぜ」
馬皇は真央に余裕そうな顔を作りもう1ポイントももらうと宣言する。
「はっ‼ もうあんたに1ポイントもやるもんか‼ 勝つのは私よ‼」
最後の1ポイントをめぐり2人は睨みあう。
そのまま、2人はラリー開始する。さっきのドロップを警戒しているのか真央も後ろに下がりきらずに対応する。それでも後ろに寄せてから馬皇はまた、同じ球を決めようとする。
「あっ‼」
馬皇は玉の威力を殺し切れなかったのか失敗した。緩いチャンスボールを真央の方に挙げる。
「もらった‼」
真央もチャンスとばかりに急いで前に出る。これを決めれば勝ちだ。真央はそう確信する。
しかし、なんと運の悪いことか。大きく動いたために浴衣の帯が落ちる。
「あっ……」
「ごめんあそばせ」
サライラはいち早く気がついて勇次の目をつぶす。サライラは勇次の目先に手を横に振る。爪先が勇次の眼球をかすってその痛みでのた打ち回る。
「ノオオオオォォォォォ‼」
「駄目ですっ‼」
馬皇はとっさに反応して横を向く。ちらっとではあるが真央の服がはだける所が見える。白くはあるが健康的な真央の裸体はある意味綺麗だった馬皇は感じた。
そして、この時ばかりは明らか普段見せないような速さで由愛は直ぐに馬皇の目に手を当てた。由愛も普段であればおっとりしていて動きはゆっくりな方であるが運動能力が低いわけではない。知ってか知らずか由愛の大きな胸が馬皇に当たる。その柔らかい感触にドギマギしてそれどころではなくなる。
「やったわ‼ 私の勝ちね。由愛は何しているの?」
勝負に集中していたためか勝利したことで舞い上がっているのかは知らないが浴衣の帯が落ちたことに気が付かずに由愛の行動に真央は首をかしげる。由愛は必死に馬皇が見ないように目を覆いながら真央に言った。
「真央さん‼ 浴衣‼ 浴衣‼」
真央は由愛に浴衣のことを指摘されると自分の恰好を見た。浴衣のひもが落ちて前半分がほぼ完全にさらされている。
「なっ‼」
今になってようやく気が付いたのか勝利した喜びよりも羞恥の気持ちが強くなり顔を真っ赤に染める。真央は足元に落ちていた浴衣の帯を拾ってすぐにつけなおす。
着直した真央は由愛が馬皇に胸を押し当てているようにして馬皇の目を隠しているの見る。真央は軽く咳払いすると由愛は馬皇に胸を当てていることに気が付きすぐさま目から手を離して離れた。馬皇も気が気でなかったのか顔が赤かった。由愛もそんな馬皇を見て自分の大胆な行動に恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にする。
「私の勝ちでいいわね‼」
真央はさっきのは無かったことにしたいのか有無を言わせない迫力で馬皇に詰め寄った。馬皇も思い出さないようにするが先程のことを思い出して気まずいというような表情をする。顔を赤くして上目づかいで言い寄ってくる真央に不覚にも馬皇はカワイイと思ってしまった。
「わ・た・し・の・勝・ち・で・い・い・わ・ね‼」
「あ、ああ……」
再度、勝利を強調する真央に馬皇は折れた。さすがにあんなハプニングの後では馬皇も強くは出れなかった。
「なら、お茶。お願いね」
「はっ?」
唐突なお茶の要求に馬皇は思わず聞き返した。
「敗者は飲み物奢るんでしょ。しっかりしなさいよ」
「そ、そうだったな。勇次は……今は良いとして、由愛とサライラは何が良い?」
真央に言われてこの勝負の罰ゲームを思い出す。真央の飲み物を買うついでに残り3人に聞く。勇次は回復しきっていないのかいまだにのた打ち回っているため後にしてサライラと由愛に聞いた。
「私はお父様と同じものを」
「私は真央さんと同じでお茶でお願いします。……1人だと大変だと思うのでついて行かせてください」
由愛は馬皇に着いていくというと馬皇は嬉しそうに言った。
「助かる。お願いしてもいいか?」
馬皇が明るくそう言うと由愛は笑顔を輝かせた。
「はいっ‼」
「ちょっ‼ 由愛さん‼ 狡いですわ‼ 私も行きますわ‼」
由愛と馬皇が行こうとするところにサライラは馬皇の背中に乗る。
「もう‼ 1人にしないでよ‼」
真央も寂しかったのか馬皇たちについて行った。
「ちょっ‼ 待って下さいっす‼ 置いてかないで~‼」
勇次も馬皇たちの声を頼りについていく。結局、こうして全員で飲み物を買いに行くのであった。
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