部屋にて
大まかな話の流れはだいたい思いついてるのに文章が書けなくなってくる。
「おぉ‼」
馬皇は旅館の部屋の扉を開くと馬皇は感動していた。6畳ほどの畳の部屋の中心にはこたつ机がある。これを1人で使えるというのは部屋の奥には障子が開いており広縁と呼ばれる島の周りを見渡せる空間になっている。そこにも小さな椅子と机がある。いわゆる旅館の和室と言われるものであるが馬皇は旅館に泊まるのは初めてで旅館のあらゆるものが新鮮だからである。
「どうっすか? いい旅館っすよね」
誰も居ないはずの廊下で後ろから声をかけられ馬皇は思わず後ろを向く。
「うおっ‼ なんだ、勇次か……。いや、なんでお前いるんだよ」
馬皇はジト目で勇次に聞いた。
「よくぞ聞いてくれたっす。この旅館に宿泊してるっす。しかも、俺は常連っ‼」
「それは知ってる。お前がいる理由だよ」
「真田さんたちの部屋までついていったら問答無用で追い返されたっす」
「当たり前だろ。なにやってんだよ……」
勇次の行動に呆れながらも馬皇は律儀のツッコんだ。
「後、サライラさんがいつの間にかいなくなってたそうで、十中八九ここにくると言われたんで見つけたら捕まえておいて欲しいと言われて先に来たっす。後、荷物置いたら真田さんたちも来るそうっす」
「そうか。教えてくれてありがとうな」
「アニキは1人部屋なんすね」
「さすがに鉄先生は個室で泊まってる。男子がたまたま俺が1人だったからだとよ。本当はもう1人来る予定だったんだけど結局来なかったんだよ」
馬皇はケイスケがこれなかったことを残念そうに言った。
「そうっすか。でも俺もいるんで遊びにでも来てください‼ ゴブッ‼」
勇次は馬皇を励ますと勇次がいきなり吹き飛んだ。
「お父様~‼」
サライラはそのまま馬皇に正面から抱きついた。
「勇次‼ ……サライラさっき吹き飛ばした人に謝りなさい」
「え~。せっかくお父様とこの時間を楽しむために抜け出してきたのに~」
サライラは不満そうな顔で言う。その間に不意の衝撃で吹き飛ばされた勇次が戻ってきた。
「……イタタ。確か、サライラさんでしたっけ? 不意打ちは勘弁してっす」
勇次はサライラにそう言うとサライラは素直に謝った。
「申し訳ありませんわ。お父様のことになると……つい」
前世の教育のたまものなのかサライラはモジモジとしたしぐさで謝った。その姿に照れているのか勇次も顔を赤くして簡単に許す。
「今度気を付けてくれたら問題ないっすよ。それにしても、さすがアニキっす。こんな大きなお子さんまでいらっしゃるとは」
勇次はテンパっているのか早口で見当違いのことを言う。
「違うからな‼ 俺は中学生だからな」
馬皇は勇次の発言を思い切り訂正しようとする。
「そ、そうっすよね。さすがにこんな大きな子供がいるんだったら学生じゃないっすよね。え……? 中学生?」
信じられない顔で勇次は馬皇を見た。
「ああ」
馬皇は頷くと勇次はさらに混乱していた。
「……まじっすか。同じくらいなんすか。いや、でもアニキはアニキだし……」
勇次はブツブツと何かを言い聞かせているようだった。
「おーい。大丈夫か?」
馬皇は勇次を揺さぶった。
「はっ‼ アニキはアニキっす。年齢なんか関係ないっす。男らしさの極意この目で見極めさせてもらうっすよ‼」
勇次は悟りを開いたようだった。
「そ、そうか……」
馬皇は勇次からのよくわからない尊敬の眼差しに苦笑する。
「それより、いいんすか? サライラさんこの部屋に荷物置いてますけど」
勇次はサライラがいつの間にか馬皇の部屋に荷物を置こうとしていることを指摘する。目を離した隙にこの部屋に泊まろうとしているサライラを捕まえて馬皇は言った。
「部屋に置いてきなさい」
「ここでお父……馬皇さんと泊まるので問題ありませんわ」
しれっとサライラは言っているがもちろん部屋割りは違う。本来は男女別である。
「違うだろ」
「う……。違いませんわ」
「違うだろ」
「私はここでお……馬皇さんと泊まるの」
「違うだろ」
「お義母様から許可はいただきましたわ」
「駄目だろ‼ 何言っちゃってんの‼ あの人は‼」
馬皇は今ここにいない母の発言に思わず叫んだ。馬皇は真央たちの部屋に引き取ってもらえるようにサライラごと荷物を持っていこうとする。サライラは抵抗して荷物と一緒に近くの柱にしがみつく。
「親公認なんて……‼ さすがっす‼ アニキさすがっす‼」
勇次も勇次で盛大な勘違いによって誤解は膨らむ一方であった。
「遊びに来たわよー。って、何この状況?」
「失礼します。やっぱりここに来てたんですね。サライラさん」
連れて行こうとする馬皇としがみついて抵抗しているサライラ、そんなことお構いなく馬皇に尊敬の眼差しを向ける勇次というよくわからない状況に困惑する真央。由愛はサライラが馬皇の所にいたことに安心していた。今の状況はよくわかっていないがいつもの事と判断したようだった。
「ちょうどいい所に‼ すまん。手伝ってくれ‼」
「いいわよ。報酬はもらうけどね」
真央はウインクをして馬皇の方へ行く。サライラは部屋に留まることを諦めたのか馬皇の鞄に手を突っ込に馬皇の服を掴む。
「あわわわ。サライラさん‼ 何掴んでるんですか‼」
「せめて、これだけでも‼」
抵抗しつつ馬皇の下着を持って行こうとするサライラ。
「それを持って行くな‼」
馬皇もさすがにそれを持って行かれるのはまずいと引き離そうとする。
「これだけは、これだけは死んでも話しませんわ‼」
「にぎやかだ。さすがアニキっす。あそこまで男らしい見た目だとやっぱりもてるんすね」
勇次は馬皇たちの混沌としたやり取りを見て羨ましく感じるのだった。
次回は温泉の話予定




