宣戦布告?
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「そうか。フロントに伸びている奴らを連れて行って来よう」
鉄に馬皇たちは説明すると今の状況を察した。そう言って、簡単に氷の檻ごと伸びていた者たちを連れて行った。残された馬皇たちはと言うと。
「どうしてなんだ……。なんで勝てないんだ……」
勇次がうなだれたままブツブツとぼやき続けていた。馬皇は恐る恐る声をかけた。
「おーい。大丈夫か?」
話しかけるが聞いていないのか反応がなかった。馬皇たちは困った。真央が目の前で手を振っても由愛が肩を叩いてみるが反応はない。サライラが馬皇に言った。
「私にお任せあれ」
自信満々であるが先程止めを刺したのはサライラである。何をするつもりなのかは分からないが一抹の不安を覚える。
「本当に大丈夫なんだな」
不安を覚えた馬皇はサライラに聞いた。
「大丈夫ですわ。この方法は坂本先生とやら直伝ですわ」
「「おお‼」」
真央と由愛はサライラのその自信に歓声を上げる。保険医である坂本先生なら確かにこの自信は頷ける。
「それなら、だい……」
馬皇が何かを言おうとしてサライラは言う前に勇次の頭を思いっきりチョップした。そのまま勇次は電気が切れたおもちゃみたいにぱたりと倒れた。
「……てへっ」
サライラは馬皇に微笑みかけるとそのまま馬皇の肩に抱き着いた。馬皇は勇次を抱えて揺さぶる。
「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼ 大丈夫か!? しっかりしろぉぉぉぉぉぉ‼」
しばらく、馬皇が呼びかけると気が付いたのか勇次が目を覚ました。
「はっ‼ 何か悪い夢でも見ていたかのようだ」
正気に戻った勇次を見て馬皇はほっとする。サライラの方を見るとすごいでしょと言わんばかりに笑顔である。
「……ゴクリ。すごいわね」
「そうですね。そんな方法があるなんて……」
真央と由愛はサライラの方法に戦慄を覚えているようだった。馬皇はすぐさまツッコむ。
「違うからな‼ 壊れたテレビじゃないんだからな‼」
「お父様~♪」
サライラは背中に顔をうずめている。そんなやりとりを見て復活した勇次は言った。
「馬皇。いや、馬皇さん‼ アニキって呼んでもいいですか‼」
「急にどうした‼ 後、それは許可しない‼」
唐突なアニキ呼びに馬皇は戸惑う。真剣な顔をして勇次は土下座まで始めた。
「アニキの堂々とした姿と優しさに感服したっす」
「なんでだよ‼ それ以前にさっきまでのお前のキャラそんな感じじゃなかっただろ‼」
もはや口調すら変わってる勇次に馬皇は戦慄する。
「俺だって‼ ……俺だって‼ モテモテのカッコいい男になりたいんだ‼」
「なんていうか、そんなんじゃ当分無理そうよね。私は真央よ。むさ苦しいのとか好きじゃないから半径2mからは近づかないでね」
「ぐふっ」
容赦ない反応をする真央。そして、真央の言葉にダメージを受ける勇次。真央は何故か嗜虐的な笑みを浮かべている。
「そのうちいいことありますよ。相川さん。私は山田 由愛っていいます。よろしくね」
由愛は優しく勇次に言った。
「天使や。天使がご降臨なされた」
跪いて祈り始めた勇次。その動作に由愛は困った顔をする。そんな流れ呼んだのか読んでいないのかサライラは馬皇の背中から身を乗り出して言った。
「サライラよ。私のことはサライラ様と呼びなさい。お父……馬皇さんの事よ。分かっているわね。手を出したら殺すけど」
さっきを出して勇次を見る。勇次の方も戦闘経験が豊富なのかサライラの殺気にわずかに反応するが動けなくなるほどではないようだった。すぐさまに構えてサライラの方に拳を突きだした。
「あ~。サライラに関しては変なことしない限り手を出さないから構えを解いてくれえると助かる。じゃないと俺も本気で戦わないといけなくなるからな」
馬皇はサライラに向かう拳をあっさり掴むと勇次に対して困ったように言った。不意打ちの拳であったがあっさり掴まれるとは思っていなかったのだろう。その顔には驚きが写っていた。
「すごいっすね。さっきの奴らならまず避けられないのにこれを止めれるんすね。アニキとは一度ちゃんと戦いたいっす」
勇次本心からそう思っているようだった。力が拮抗しているのか掴んでいる方も掴まれている方も腕が震えている。馬皇も熱い戦いができることに口角を上げる。
「なぁ。今回の闘技大会に出るんだろ。俺らもそれに出るんだ。もしかしたらそこで当たるかもな。後、アニキやめろ」
馬皇がそう言うと同じように勇次も笑い出した。
「いいっすね。今回の大会はあいつとのリベンジだけじゃなくアニキのような強い新人もいるってことに喜びを禁じ得ないっす」
「ああ。俺もだよ。これは良い戦いが出来そうだ」
「ああ。お父さ……馬皇さん。素敵です」
男2人で笑い合っている。それを背中から見ているサライラも恍惚とした表情をしている。
それを遠くから見ている由愛と真央。鉄が横にいる事からもチェックインも終わったのだろう。真央と由愛も入る準備が終わっているのか入口から馬皇たちを呼ぶ。
「いつまでしてんの‼ 鉄先生も来てるんだからさっさと部屋に行くわよ‼」
「わかったよ。悪いな。この決着は大会でだ」
「ああ。アニキ。決着はお預けだ」
そう言い合ってお互い手を離した。そのまま馬皇たちは部屋へと向かう。
「いいな。その熱さはいい刺激になるだろう」
鉄は久々にいいものを見たと機嫌よく言った。
「私には分からないわね。そう言うの」
「どうですか? 馬皇さんと真央さんもいつもあんな感じだと思うんですが……」
「そうなの?」
「そうです」
由愛が言ったことに思わず聞き返す真央。馬皇は当てにならないためサライラと由愛の方を見ると由愛の言葉に同意しているのか縦に大きく頭を動かして肯定する。
「そうなのかぁ。笑えないわね」
やってられないとばかりに真央は溜息を吐いた。
「そうなんですよ。さっきの相川さんと馬皇さんみたいに馬皇さんと真央さんの関係も。それに仲良いんですよ~」
「いつもそんな感じっすか」
由愛も勇次と会話している。今日の部屋ってどんなのだろうと真央は楽しみにしていた。
「って‼ あんたも来るんかい‼」
「だって、同じ宿っすよ」
真央はそう言えば旅館の方から来たことを思い出す。勇次が同じ宿であることは道理であろう。真央はもう一度大きくため息をつく。
「はぁ。もういいわ。……いつもどこかしらが締まらないわね」
「いつもの事だろ」
真央の独り言に馬皇が答えた。
「さりげなく入ってこないでよ。バカ」
真央は聞かれたことが恥ずかしかったのか顔を赤らめる。馬皇はそんなこと気にせずいつもの調子で話す。
「耳に入っただけだ。この闘技大会でお前に力の差を見せつけてやる」
静かに闘志を燃やす馬皇。真央もそれに乗る。
「いいわね。私の方こそあんたに見せつけてやるわ」
2人とも歩きながら火花を散らす。
「ねっ」
「そうっすね。なんというか仲良いっすね」
2人の元魔王が闘志を燃やす中で、仲が良さげに見える2人に勇次は感想を漏らす。
「「こいつは好敵手だ‼」」
「息ぴったりっす」
「そうですね」
勇次の言葉に由愛は同意する。こうしてにぎやかに旅館の中に入っていく馬皇たちであった。
男女別の部屋ですが先生は個室なので馬皇に関しては実質1人部屋になる予定です。
次は旅館特有のイベントをいっぱい? で書ければなと思います。
メインは戦いですが……




