到着からのテンプレ
ネットの回線が安定しない。毎回なぜか制限付きになるし。そして、時間が経つと普通に入れると……。
後、チンピラに絡まれるのってテンプレですよね。
「着いたぞ」
鉄は旅館の前で立ち止まる。馬皇たちは思い思いに感想を述べた。
「うっはー。なんか豪華だな」
「それには同感だけど何か出そうよね」
「真央さん‼ 怖くなるのでそんなこと言わないでください‼ 推理物でよくこういう場所が舞台になるのが分かる気がします……」
「ここでお父様たちと過ごすのね」
サライラを除いて旅館の感想を口にした。
「男女別の部屋だぞ。サライラ」
「そんな‼」
馬皇がサライラにそう言うとサライラががっくりと地面に手を突いた。
洋館に馬皇たちが灯台から戻ってきた後サライラが復活した。旅館までは徒歩で1時間かかる。車などもなく山道を登り続けた。その道中ではクマに遭遇して鉄と一対一で戦い勝利をするがそれは別の話。
一同は宿泊する旅館に到着すると鉄以外は呆然とした。確かに山に登っている途中から屋根だけが見えていた旅館であるがその姿は思っていたよりも大きかったのである。古い旅館ではあるがよく見ると丁寧に整備がされていた。それが老舗の雰囲気をさらに醸し出されていた。こちらの世界に転生して旅館は初めて見る。これからここに泊まるのかと思うと馬皇たちは心を躍らせた。
「なあ、先生?」
「どうした馬皇?」
馬皇は目を輝かせて言った。
「ここに泊まるんだよな?」
「ああ。会場は別にあって数ある宿泊施設の一つだ」
この島で行われる闘技大会は一般に非公開で有れど毎回多くの異能者がやってくる。それを考えるとこの旅館だけでは数が足りなくなるのは当たり前である。この旅館以外にもホテルや洋館のような施設も存在している。
「温泉もあるんですか?」
パンフレットの中に大きなお風呂があることは書いてあったが、どういうのかまでは書いていないため由愛は鉄に聞いた。
「ああ、あるぞ。露天風呂もある。確か、この旅館の温泉は美肌にも効果があると言っていたな」
そう言うと女性陣がピクリと反応した。大きな風呂は偉大である。
「俺はこれから旅館のチェックインをしに行く。少しの間ここで待っていてくれ」
鉄がそう言うと旅館の中のフロントの方へ向かって行った。
「それにしても静かでいい所ね」
真央がそう言うと馬皇もうなずいた。
「ああ。近くで見る海もいいけど山に登ると全く違って見えるな」
「そうですね。海は遠いですけど綺麗なのは変わりませんしね」
馬皇の発言に今度は由愛が答える。馬皇はうんうんと頷いていると我慢の限界に達したのかサライラは馬皇に抱き着く。
「お父様。私とあっちの方に散策に行きましょう」
馬皇の腕を引っ張って行こうとするサライラを馬皇はそれを必死に抑えようとした。
「なんだぁ? 女といちゃいちゃしやがって‼ のんきな奴らだなぁ‼」
馬皇が抵抗していると馬皇たちが通ってきた山道から男たちが大きな声で因縁をつけてきた。
「なにかようか?」
馬皇は平静に言葉を返す。馬皇はサライラを引き寄せて男の反対側に寄せる。真央も同じように由愛を自分の近くに寄せた。馬皇はデカい。そのため相手が小さく見えるが少なくとも相手の方は170cmぐらいであるだろう。
「あぁ!? 図体デカいからって舐めた態度取ってんじゃねえぞ‼」
明らかに背の高さは馬皇の高い。しかし、横幅で考えると相手の方が大きかった。鍛えているのだろう。馬皇が無言を貫いていると男は余裕ととらえたのだろう馬皇に殴りかかる。由愛は馬皇に当たりそうになる瞬間に顔を覆った。
馬皇はその拳を受け止めようとしたとき横から誰かが現れた。その誰かは付きだそうとした拳を受け止めるとその勢いを利用して投げ飛ばした。その距離は普通に投げ飛ばすよりもはるかに長い距離ではあったが。
「まったく。旅館の前で乱闘とか物騒じゃないか? ここには異能者もしくは関係者のお客さんしか来ないけど宿自体は多くない。それに、戦うのは今じゃないだろ」
もう1人見知らぬ男が割って入ってきた。馬皇たちは変化し続ける状況に呆然とする。割ってきた方の男は馬皇たちと同い年ぐらいだろうか。熱い男なのか投げ飛ばした男の取り巻きたちに力強く言っていた。その後馬皇たちの方へ向くと笑顔言った。
「お前ら大丈夫か?」
男は馬皇たちの無事を聞いた。馬皇も助けてもらったことを感謝する。
「ああ。幸い怪我1つない。助かった」
そう言うと男は「そうか。そうか。何も無いんだったら良かった」と言って大声で笑う。
「初めまして。俺は馬皇。負毛 馬皇だ。再度言うが、さっきはありがとう。助かった」
そう言って馬皇は右手を差し出す。笑顔のまま大きな声で馬皇の手を取る。
「気にすんな。気にすんな。俺は勇次。相川 勇次って言う。よろしくな」
「おう。こちらこそよろしく」
勇次は馬皇の手を握って大きく振る。
先ほどの男は伸びているが他の取り巻きたちは怒り心頭に馬皇たちに襲い掛かってきた。
「なめてんじゃねえぞ‼ 一斉に行けば袋にしちまえ‼』
1人がそう言うと取り巻きたちは一斉に襲い掛かってきた。
「懲りない奴らだな」
勇次はそう言うと取り巻きたちの方に向いた。
「動けないように止めないとな」
言い終えるやいなや足で軽く地面を叩く。すると、ここ一帯の5mの地面が凍る。勢いよく突っ込んできた取り巻きの多くが地面を滑って転ぶ。勇次は転んだ者たちを氷の檻を作って拘束する。
「うおっ‼ 動けねぇ‼」
「氷の異能者‼ しかも、と言うことは前回の準優勝者の相川だ‼ 勝てるわけねぇ‼」
相手が勝てない相手だと分かると転ばずに檻の範囲から逃れた一部の取り巻きは一斉に逃げ出した。捕まった者を完全に無視してである。
「はぁ。……全く。忘れ物だ」
ため息をついた勇次は氷を操作して勢いよく伸びている男たちを氷で飛ばす。一斉に逃げ出した取り巻きたちの上にジャストミートした。勇次は再度馬皇たちの方へ振り向くと言った。
「さて、後は他が処理してくれるだろ」
男たちをまとめて1つの氷の檻に入れた。取り巻きを入れて8人。それなりの大きさでなければ全員は入らないだろう。
「すげえな」
馬皇が呟くと勇次は言った。
「そうだろう。そうだろう。なんせ闘技大会2位だからな」
自慢げに勇次は話す。
「2位なのね」
サライラはぼそっと言うと勇次は崩れ落ちた。
「……そうなんだよな。いつもいつもあいつに負けるんだよな。どうしてだよ。相性とかは悪くないはずなのに……」
先は程とは打って変わりうなだれたままひたすらブツブツと何かを言い始めた。その場にいた全員は思った。なんだかめんどくさいのが現れたと。
「チェックインが終わったから部屋に移動するぞ。……どうしたんだこの状況?」
鉄が戻ってくると氷の檻に閉じ込められた男たちとうなだれたままネガティブに独り言を続けている勇次。それに戸惑う馬皇たちがいるという訳の分からない状態であった。




