2度あることは3度ある
これが落ちるヒロインの姿だ。
そして、現在。
馬皇と真央は大はしゃぎで海沿いを探索していた。
「あっちの方に灯台があったはずだ。見て行こうぜ」
馬皇は近くに見える灯台を指さす。
「あそこなら言って戻って来ても問題なさそうね。行きましょう」
真央もノリノリである。
「待ってくださ~い」
馬皇たちは灯台の方へ向かおうとするとサライラの休んでいる場所から由愛が走ってきた。
「どうしたの? 由愛も着いてきたくなった?」
真央がそう言うと由愛は息を切らしてうなずく。
「ハァ。……はい。ハァハァ」
由愛は疲れているのか膝に手をついて呼吸を整える。真央は由愛を諭した。
「慌てなくてもいいわよ。それよりどうしたの?」
「どこに向かおうとしてたんですか? 私もついていきたくて」
由愛は真央に聞くと真央は近くにある灯台を指さした。
「あそこよ。馬皇と灯台の方から海を見ようってことになったわ」
「そうですか。それで、肝心の馬皇さんは?」
真央は灯台の方を見るが先程いた場所には既にいなかった。
「あいつ。どこ行ったのよ?」
いなくなった馬皇を見渡して探す真央と由愛。灯台の方に到着するがそこには誰もいなかった。
「お~い。ここ、いい眺めだぞ~」
馬皇の声が上の方から聞こえた。灯台の上を見るといつの間にか馬皇が灯台の屋根の上から顔をのぞかせていた。真央たちを呼んでいるようだった。
「何してんの‼ 早く下りてきなさい‼」
無人とはいえ灯台の一番上は目立つ。真央は羽目を外しすぎている馬皇に注意する。
「どうした? 高いところが怖くなったのか? それなら、俺1人で楽しむが問題ないよな」
「なんですってぇぇぇ‼」
真央は馬皇の挑発に乗って灯台の屋根へ飛んだ。ジャンプではなく飛翔の魔法。長い時間は発動できないが灯台ぐらいの高さならば余裕で飛ぶことが出来る。優雅に真央は屋根の方に足を踏み入れた。
「あの、えっと、ちょっと……。行っちゃった」
置いてけぼりにされた由愛は1人取り残された。一方、上の方では馬皇がぼんやりと座って海を眺めていた。真央は上手く着地すると馬皇の横に座った。
「広いな。やっぱ海は広いよ」
「ええ。水平線がとても綺麗ね」
「最高だな」
「同じ意見なのはしゃくだけどそれには同意するわ」
馬皇が言うことに真央も反応した。雲一つない空。青くどこまでも続いている水平線の先には何もなくどこかに吸い込まれそうなほどきれいだった。
「そうだ。由愛も来てるのよ。この景色を一緒に堪能しないと」
「そうだな。楽しむなら一緒じゃないとな」
思い出したかのように真央が提案すると馬皇は立ち上がり灯台から飛び降りる。由愛の横へ綺麗に着地する。
「悪かったな。一緒に上の方から見ようぜ」
馬皇はそう言うと由愛を抱きかかえる。いわゆるお姫様抱っこと言うやつだ。急にお姫様抱っこをされて馬皇の顔が由愛の近くにある。それだけで由愛の顔は赤くなった。
「え? ちょっと? 馬皇さん?」
突然のことで由愛は戸惑うが馬皇は優しく言った。
「なに、少し我慢すれば絶景が見れるぜ。跳ぶぞ」
馬皇は由愛を抱えたまま大きくしゃがんだ。由愛は恥ずかしくもあるが何度も経験したあることを思い出して制止しようとする。
「待ってください‼ またですか‼ またなんですか‼ 待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」
由愛の静止の声は無駄に終わり由愛は急速に普段より大きくかかっている重力に絶叫する。そして、一瞬静止したかと思うと今度は浮き上がっているような感覚に襲われる。
「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ」
由愛の叫びは無視されすぐにどこかに着地したやわらかい衝撃が来るが由愛はそれどころではなかった。馬皇は由愛を下すと言った。
「どうだ? いい景色だろ?」
馬皇は楽しそうに言うが、先ほどまでの体験で由愛には余裕がなかった。
「も、もう‼ 何度もしないでって言ったじゃないですか‼ 怖いんですよ‼ 怖いんですからね‼」
由愛は涙目になって馬皇に怒った。詰め寄る由愛に馬皇は困った顔をする。毎回同じことをして学習しない男である。
「すまん。悪かったって‼」
馬皇は素直に謝るが由愛はお冠である。馬皇と由愛は言い合いをしていると珍しく真央が合いの手を入れた。
「ほらほら。馬皇も悪いけど由愛も落ち着いて。馬皇はこの景色を見せたかったから連れてきたんでしょ。由愛も見て見なさい」
真央の言葉に由愛は不機嫌なまま周りの景色を見るときれいな景色に目を輝かせた。
「わぁ~。綺麗です」
由愛も綺麗な景色に心が弾んだのか食い入るように海の景色を眺めた。
「いい景色だろ」
馬皇が自慢げに言うと先程までは怒っていた由愛もうなずいた。
「はい。馬皇さんがここを見せたかったのは分かる気がします」
「だろ‼」
馬皇は由愛の言葉に同意した。
「でも、今度はきちんと話を聞いてくださいね」
にっこりと由愛はそう言うと馬皇は肩を落として言った。
「ああ。今後は気をつける」
がっかりとした馬皇を見て由愛はくすくすと笑う。それにつられて真央も笑った。馬皇は由愛には勝てる気がしないと肩を落としたまま深く後悔するのであった。しばらくその景色を堪能すると由愛は思い出したかのように言った。
「それにしても。どうやって私は下りるんですか?」
「「あっ」」
馬皇たちも言われて初めて気が付くのだった。
毎回抱いたり担いだりして落としている(恋ではない)主人公の図。由愛はこの宿命から逃れられるのか?
……何回同じことが起こるんでしょうね(すっとぼけ)
ちなみにあの後馬皇たちが取った行動は……
「またですかぁぁぁぁぁぁ‼」
同じように馬皇に抱えられて飛び降りるのだった。




