呼び出し 2
これで回想は終了です。
次回はプロローグの方に戻ります。
「失礼します」
「ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼ ふんっ‼」
馬皇はとっさに扉を閉めた。
「何があったの?」
真央は馬皇がとっさに扉を閉めたことを聞く。ちなみに馬皇がとっさに閉めた事で室内で鉄が上半身裸で腹筋していたのは馬皇以外には見えていない。
「何でもない」
馬皇はもう一度扉を開ける。今度はそっと扉を開ける。
「遅かったな。どうかしたか?」
鉄はスーツ姿で待っていた。馬皇は目をこすって言った。
「おかしいな。さっきまで鉄先生が上半身裸で腹筋していたように見えたんだが……」
馬皇がそう言うと真央は呆れたような目をする。
「何バカなこと言ってんのよ。それだったら、そんな一瞬でスーツに着替えれるわけないでしょ」
「そうですよ。馬皇さん。トレーニングするならさすがに鉄先生だって場所を選びますよ」
真央や由愛の言っている事に馬皇も同意する。
「そうだよな。そんな早く気がえれるわけないし」
そう言って馬皇たちは部屋に入る。最後に入ったケイスケが扉を閉めると鉄は喋り始めた。
「よく来たな。トレーニングに夢中で来るのに気が付かなかった」
「鉄先生面白いこと言いますね。スーツでトレーニングしてたんですか?」
「なにどんな時でも鍛えていないといつ必要になるか分からんからな」
鉄のカミングアウトに馬皇だけは混乱する。真央たちはジョークだと思っているが馬皇は一瞬だけであるが上半身裸でトレーニングしていたことが幻でないことにどうなっているのかと問い詰めたくなるのをこらえていると鉄は話を切り出した。
「今回は頼みたいことがあって呼んだんだ」
「「「「頼みたいこと?」」」」
馬皇たち全員が首をかしげた。
「ああ。実はだな。今いるここの全員で孤島に行かないか?」
「え? あの? 孤島って? 何しに行くんですか?」
馬皇は鉄に聞いた。
「すまない。言葉不足だったな。今回も異能者たちのが集まって武闘大会を開くんだ」
「武闘大会? それだけじゃ何も分からないんですけど?」
いきなり武闘大会なんて言われてもピンとこないと真央はたずねる。馬皇たちも真央の意見に同感なのか同じようにうなずく。
「これから説明する。今回はパンフレットを用意した。座ってとりあえず話だけ聞いてくれ」
馬皇たちは言われた通りに近くにあった椅子に座った。パンフレットには「異能者闘技大会」と書かれていた。
「まず、これに書かれている通りに互助会では2年に1度このような形で大会を行っているんだ。競技については一対一のバトルやバトルロワイヤルなどいろいろある。期間は8月1日から5泊7日。出来ればそれに馬皇と真央、サライラ、ケイスケには参加してほしい」
前で鉄は一旦藩士を止めた。すると真央が手を上げて質問した。
「質問。どうして参加してほしいの?」
至極もっともな質問に鉄は答える。
「新しく入ってきた異能者との交流や情報交換。異能の制御。まぁいろいろあるが……。ぶっちゃけ、異能者たちのガス抜きだな。発散させないと暴走する輩が昔多くてな。こうして定期的にやっているんだ。ちなみに異能を知っている者ならば自由にこの大会を見ることもできる」
「おもしろそうだな」
馬皇は鉄の発言に興味津々である。黙っているサライラも血が騒ぐのか黙ってはいるがそわそわしていた。真央だけはさらに質問する。
「これって異能を自由に使ってもいいのよね? それって危なくないの?」
「それについては大丈夫だ。そのためだけに異能者が異能を使っても壊れたりしない会場を作っている。さらに死んでなければ完全に回復できる治癒能力者が複数常時待機しているし死なないように安全装置も用意している。これを見てくれ」
鉄はそう言って懐から赤い玉を取り出した。
「これは身代わりの宝珠と言うものだ。攻撃や異能を肩代わりしてくれる。一定以上になるとこれが代わりに砕ける。それで試合終了だ。他に何かあるか?」
身代わりの宝珠を片付けると真央は言った。
「そんなものどこで用意してるんですか?」
そんな胡散臭い道具がたくさんあることに真央はいぶかしげに聞いた。
「それについては専用に作っている異能者がいるんだ。2年に1度なのは数を用意する期間に必要な日数なんだ」
真央はとりあえず理解したので質問をやめた。鉄は話を続ける。
「費用については初めて参加する者には費用は全て大会の方が持つ。露店とかもある。まあ、ホテルの食事以外は自腹だがな。顔見世も兼ねているため異能者は出来れば参加してほしい。それ以外では自由にしてもらって構わない。ちなみに孤島だから海はほぼ互助会の関係者しかいないから他人に迷惑をかけない事が前提で自由に使える。山田さんについては異能の関係者と言うことで私が旅費を出す。どうだ言ってみないか?」
鉄の言葉の一部に馬皇と真央は反応する。
「「海」」
「どうした? 海が珍しいのか?」
馬皇たちが考えるのに夢中になっているためケイスケとサライラが補足した。
「そういえば海に行った事ありませんでしたっけ。っは‼ テレビでは海は遊ぶ場所。楽しく遊べる。2人きりであんなことやこんなことが……。わたくしも参加させていただきますわ」
想像を爆発させサライラは1人でクネクネする。密かにテレビを見ることにもハマっているのは娯楽の少ない異世界だからである。そこから変な知識も含めていろいろと学習している事を馬皇は知っているためにテレビを眺めるサライラに微妙な顔をする馬皇である。ちなみにどんな想像をしたのかはサライラの行動を見れば丸わかりである。
「真央様も実は海が初めてなのです。なんというか、全く縁がありませんでしたしね」
「し、失礼ね。海ぐらい知ってるわよ」
正気に戻った真央は口では興味がなさそうに言っているが、目線はパンフレットにくぎ付けであった。全く説得力がない書物の上では知識があるがこの年になっても海に入ったことが無いため興味津々なのである。
「そうですね。皆さんが参加するんでしたら私もついて行ってもいいですか?」
「ああ。さっきも言った通りこちらから誘うんだ。ぜひ見に来てくれ」
由愛はあっさりと参加を決めた。
「すいません。私はその期間はどうしても外せない用事があるので私は参加できません」
「そうか。どうしても外せないのであればしょうがないな。予定が変わってこれるようなら当日の朝までに連絡してくれ。遅れても他の先生も何人か向かうと思うから大丈夫なはずだ。費用については互助会の方から出るから実質無料だ。だが、ここで決めるのはいいが親御さん聞いて参加できるようならパンフレットの最後のページにある私の電話に連絡してくれ。連絡がない場合は不参加と言うことにするから注意してくれよ。他に質問あるか?」
鉄は聞くが誰も聞くことはないのか誰も手を上げなかった。
「分かった。とりあえず、今日は解散だ。他に聞きたいことが有ったら連絡してくれていいからな」
『はーい』
全員が返事をする。
「長々とすまなかったな。これで解散だ。後は各々で決めてくれ」
解散になり馬皇たちはパンフレットを持って生徒指導室を出る。思ったより楽しめそうな旅行に馬皇と真央はワクワクしていた。サライラも楽しそうにしているが馬皇と一緒に旅行できることを楽しみにしているのだろう。由愛も馬皇と旅行できることが嬉しい。
それと同時に由愛は楽しい旅行になりそうだと馬皇たち同様ワクワクしていた。




