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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第二章 異世界からの来訪者
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暴走 1

今日も投稿です。少し間が空いたりとかもありますが煮詰まっているだけなので温かい目で呼んで行って下さい。

改稿も少しずつしていきます。

 撃った時の乾いた音が無人の道路に響いた。屋久島の放った銃弾は瀕死の馬皇の心臓へと吸い込まれた。馬皇の胸元から血が流れるのを確認して脈が動いていないことを確認すると屋久島は言った。


「いやぁ~。いいストレスの発散になりました。それに、あのクソ女から金ももらえますし何よりも後処理とかは全部あちらがしてくれると尾の事ですしね。良い仕事でした」


 屋久島は満足そうに黒服たちと撤収の準備をする。大きく伸びをして今回の依頼に有った爆弾の威力と範囲に興味が向いた。先ほど車に投げたのは手榴弾である。それも未知の技術が使われた特別性である。今回の仕事でこれの実験も仕事の内容に入っているのだった。その効果範囲はぴったり普通の自動車一台分である。その範囲を超えると破片が完全に燃え尽きているために普通なら威力は落ちる。


 屋久島は非合法な仕事の関係上おおよその手榴弾の威力を知っている。見たことある手榴弾とほぼ遜色がない威力を狭いあの正確な範囲で使える。これは欲しいと思っていた。


「帰った時にでも交渉してみますか」

「うわぁぁぁぁ‼」


 突然の悲鳴に屋久島は振り向いた。声の方向は先程馬皇を撃った場所である。死体を回収して捨てるつもりだったのだが何かが起こり黒服が悲鳴を上げているという状況に即座に何が有っても対応できるよう銃を構え直して馬皇の方を見る。


 そこには馬皇が立っていた。


「なっ!?」


 屋久島はこの場で初めて動揺した。さっきまで足を撃って動けなかったはずだった。這ってでも爆破した車に向かおうとしていたのだ。あれが演技だとは屋久島思えなかった。何よりも心臓を撃った。脈も確認してあの時は確実に息の根を止めたはずだった。


 しかし、馬皇は立っている。今も不規則に揺れているが立っていた。正気を失っているのか何かを呟いている。耳を澄ましてみると。


「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……」


 壊れたレコーダーのごとく同じことを呟いている。だれが見ても正気の状態ではない。


「くそっ‼ 化け物がっ‼」


 黒服たちは屋久島の命令を待たずに馬皇を囲んで撃った。連続する発砲音。黒服の男の1人が念のためと残りの予備である手榴弾の残りを投げ込んだ。爆煙で周りが見えなくなる。


「やったか?」


 あれだけ弾撃ったのだ。死んでいないとおかしい。屋久島はあの後に投げた手榴弾で跡形も残らないだろうと予想していた。


 だが、その予想は簡単に裏切られた。煙の中から怨嗟の籠ったくぐもった咆哮が辺り一帯に轟く。


「ガアアァァァアァァ‼」


 煙の中からは影が見えた。大きさは先程とあまり変わらない。原形はとどめている。中の人型は人前割り大きくなっており人類にはありえないものを兼ね備えていた。2本の大きな角。身を守るための鱗。そして、体と大差ないくらい大きな尻尾。ファンタジーの中から抜け出してきたような竜人が炎から現れた。


「グルルルル」


 2足歩行で炎の中から出てくるが完全に理性は飛んでいるようだった。口からは軽く火が漏れていた。爆発やハチの巣にした時の傷跡などは存在していなかった。そのことにその場にいた全ての人が恐怖する。これから何が起こるのかと。


「ガァァァァ」


 馬皇だった者は咆哮する。圧倒的な声量だけで屋久島を含め黒服たちは硬直する。コンクリートで舗装されているはずのコンクリートもひびが入っていた。別世界のような出来事に逃げることすら考えることすら出来なかった。暴走する馬皇は屋久島たちの状況などお構いなしに腕や尻尾を振るう。振った先から見えない何かが辺りにえぐれた跡や大きな爪痕を残していく。


 この場に残ることは自殺行為だということを辛うじて思い出すことが出来た屋久島は黒服たちに指示を出す。


「撤退です‼ この場から離れますよ‼」


 大きな声で黒服たちを統率しようとする。動けなくなっていた黒服たちは生き残るためになりふり構わず逃げ出した。屋久島は逃げる黒服たちを使えないと判断して馬皇を見る。確実に逃げるためだ彼らには囮になってもらおう。屋久島はそう考えていた。


 馬皇は動くものが敵だと判断しているのか、一瞬で逃げる黒服たちに追いついて腕を振り下ろす。威力がありすぎるのか黒服たちは赤シミだけを残す。数秒でこれなのだ。屋久島はこれは対応できないと判断してやけくそ気味に笑った。


「ははは……。 楽な仕事だと言っていたのにあの女狐とんだ依頼出しやがって‼」


 依頼を出した女に恨み言を叫ぶ。そうこうしている内に全滅したのか残ったのは屋久島だけとなっていた。屋久島は抵抗するために銃を撃つ。弾倉が空になるとすぐさまにリロードして撃ち続ける。しかし、どこ撃っても体に弾が突き刺さる事はなかった。


「グルァァァ」


 馬皇は声と共に腕を振るった。屋久島は避ける。しかし、余波だけで片足が持って行かれる。


「くっ‼」


 痛みに耐えて屋久島は応戦する。馬皇は千切れた足に向かって行く。そして、踏み抜いた。その衝撃だけで道路は陥没する。それを隙だと判断して物陰に隠れる。辺りを見ると先程の衝撃で人一人が余裕で通れるくらいの穴が出来ていた。屋久島はこの下が下水道であることを知っていた。


「まあ、いいでしょう。足はくれてやりますよ。今日からあなたは私の標的です。絶対に殺してやる‼」


 捨てゼリフだけ残して転がるように穴の中を落ちて行った。きっと馬皇は聞いていないだろう。生き残るために賭けに出た屋久島だった。


 一方、屋久島の片足を追いかけた馬皇は未だに暴走を続けていた。踏み抜いただけでは飽き足りず無詠唱で炎を作り出して燃やす。そして空に向かってブレスを吐く。完全な竜化状態ではないため大学の方で使ったブレスよりも威力は弱い。それでも、その威力は雲を突き抜け大きな跡が残っていた。先ほどの衝撃に巻き込まれたのか小さい男女が震えていた。見境なく馬皇は襲おうと詰め寄る。腕が振るわれて2人は目を瞑る。


 しかし、いつまで経っても衝撃はやってこなかった。恐る恐る目を開けるとそこには2人の男女が剣を持って馬皇の動きを遮っていた。攻撃が届かないと判断したのか馬皇は一旦距離を取る。


「あらあら。息子たちの危機という要請を受けて急いできてみれば思ったよりも大事になってるわね」

「さすが俺たちの息子だな」


 最初に口を開いたのは馬皇の両親である。のんきな会話に一緒に居た女性はそれどころじゃないだろという顔をする。


「感心してる場合じゃないでしょ‼ 止めるわよ」


 馬皇を警戒して目を離さずにツッコミを入れる。一度戦った相手だ。真央の母である真田真は最大限の警戒を馬皇の両親に促す。


 馬皇が動いた。その動きに対応して亮馬と真の剣が馬皇を遮る。2対1で今も馬皇の父である亮馬と真の攻撃を正面から受け止めて被害を減らす。攻撃の合間を見て負毛アリアはある時はサポート用の強化魔法を使いある時は回復魔法で傷を癒して支援する。


 親の会話を聞いていた真央は唖然としていた。呼んだのは自分であるが即興の組み合わせのはずなのに見事なコンビネーションを発揮して馬皇と互角に戦っているように見える。ふと横を見るとサライラは少し震えていた。


「どうしたの? サライラさん」


 真央はサライラに話しかけた。


「お父様。怒ってますの。あの状態だとホントに容赦ないの」


 サライラは震えていた。あの状態をサライラは一度だけ見たことがある。過去にサライラが誘拐された時のことだ。サライラが力をつける前に誘拐されたことがある。その時は誘拐を実行と企てた国を4つほど滅ぼして気絶していたことを覚えている。あの時の形相が恐ろしかったことを未だに忘れられないのかサライラは震えていた。


「サライラちゃんは大人しくしててもいいのよ?」


 アリアは震えているサライラに優しく言った。しかし、サライラは首を横に声を振り絞った。


「いえ。お父様を止めることも正妻の務めですわ。今更怖気づくものですか‼」


 サライラの態度にアリアはにっこりして言った。


「なら行ってきなさい」

「行ってまいりますわ」


 サライラも角と尻尾を出して自身の武器である槍を呼びだす。そして、馬皇の暴れる戦場へと走り出した。

もう少し続く予定

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