交渉からの絶望
更新です。遅くなりました。
胸糞わるくなるような話です。注意してください
「止まれ」
馬皇が両手を上げて車から出ると20人近くの黒服の男たちが銃を構えて待っていた。少しでも抵抗するようなら躊躇いなくこちらをハチの巣にしてしまいそうだった。男たちの中から鋭い刀のような雰囲気を纏った男が少し前に出てきてこちらの静止を促したようだった。抵抗してもすぐに射殺できるように2~3mぐらい間が空いているため今は言う通りその場所に止まった。
「こんな団体で何か用か?」
馬皇は軽口で聞いた。黒服たちは銃を構え直す。馬皇は「おお。怖い怖い」と言って態度を崩さない。
「ほう。これだけ囲まれても余裕だな。ボウズ。あれだけの衝撃の後にいつも通りに活動してるなんて頑丈な奴だな。中の奴が動かないところを見ると気絶してるか死んでるか。事故死なら事故死で全滅しても問題ないが、生きてるんならラッキーだ。お前ら話が終わるまでは撃つんじゃねえぞ」
男は黒服たちに合図を送った。銃を突きつけられていることに変わりはないがこの話し合いが終わるまでは撃ち殺されないだろうと馬皇は判断する。
「つけ入るすきでも探してんのか? やめとけ。目が死んでねえから何かやらかそうとか考えてるだろ。そうやって無茶しそうな奴って昔の俺を見てるみたいだから何考えてるかよく分かる。今回の探し物については無かったらなかったで問題ないんだわ。うちのシマで情報が流れてるんでそれが聞けたら返してやるよ」
「本当か?」
「ああ。おじさん嘘つかない」
胡散臭いセリフを使う男になによりも貼り付けた様な笑顔のままの男に馬皇は信用してはいけないと思った。
「なら何が目的なんだ」
男が手を上げると周りは銃を構えて足元を撃った。銃弾で穴だらけになった道路。一発とて馬皇には当たっていないが次に同じことをすれば次にこうなるのはお前だと言っているようなものだった。
「おっと。質問はこっちからする。下手なことはして下さんなよ。まずは自己紹介だ。俺の名前は屋久島恭平ってんだ。お前は?」
屋久島は自分から名乗りを上げる。馬皇は間を開けて返事をする。
「……負毛馬皇」
「負毛馬皇っていうのか。最近の親はよくわからん名前付けるね。キラキラネームって奴か?」
珍しい名前に興味を見せる屋久島。馬皇は再度聞いた。
「探し物ってのは何を探してるんだ?」
「話はちゃんと聞いていたみたいだな。そうだ。探し物をしている。一口飲めば都市が若返るって薬だ」
馬皇は若返る薬という言葉に眉をひそめる。あの1件のガスに使われた薬であると馬皇は思った。そんなわずかな変化も見逃さず屋久島は言葉を続ける。
「ほう。その反応は知っているってことだね。正直おじさんこれはガセだと思ってたんだがねぇ。うちのサーバークラックしてこの情報だけ置いて行ったのがいるからこの情報を送ってきた奴を締め上げるために探してたんだよ」
馬皇は一言もしゃべってはいないのに屋久島はわずかな表情や仕草から情報を得ていく。馬皇が分かったことはこの集団があの薬を手に入れたくなっていることと匿名で来た情報の元の主を探していること、躊躇いなく自分をハチの巣にできることぐらいだった。
「それじゃあ、質問を続けるよ。この質問に答えたらあの車に乗っているお前の同行者も含めて連れて行ってやるよ」
屋久島はいやらしく笑い言った。馬皇は車の中の坂本先生と由愛が心配になるが車の方を見て由が起きていることを知られるのはまずい。そう考えていると屋久島は急かした。
「おーい。早くしないと危ないやつとかいるかもしれないんだろ。早く答えろよ」
屋久島は中の人物たちの状態のことを引き合いに出す。最後の方はドスの利いた声であった。馬皇が答えないんだったら殺すと言っているようなものだった。馬皇はあることに気が付いてを予想したがどちらに転んでも対応できるように覚悟を決めた。
「ああ。答えられることだったら答えてやる」
「よし。それでいい。お前が理解しているだろう薬のサンプルがあるはずだそれの在り処もしくは出処を教えてくれ」
あの薬の場所の事だった。馬皇はサンプルのことは知らなかったがどこに有ったのかは知っていた。何しろあの時に罠として使われたからだ。素直に言うには現実味がなさすぎる内容であるし場所に行ってもそこには何もないことは確定している。
「……大葉大学で見た」
「ほう。馬皇。なんで君は知っているのかな?」
「あそこで非合法な実験がされていた。その時に薬の効果で大人が幼稚園児くらいになるのを見た。俺自身は今回実験台になる前に爆発。顔は見えなかったが誰かにいつも間にか助けられたんだ。薬の在り処については知らないと言っていい」
「そうですか。あの大学爆発したことはニュースにもなってますし助けた人物も分からなかったというのもどうせあそこが絡んでるんだろうな」
ぶつぶつと独り言を呟いて整理する屋久島。しばらく続けて整理が終わったのかこっちを向いた。
「ご丁寧にどうもありがとうございました。それでは送ってあげましょう」
屋久島が先程とは違う合図を出した。黒服の1人が車の扉を開ける。病院に連れて行くのかと思いきや何か拳ぐらいの大きさの何かを車から取り出した。その何かから何かを引き抜く音がする。それを車の方に投げた。馬皇は何かを放り投げたことに気づきその方へ走って向かう。しかし、屋久島は馬皇の手足を撃ち抜いた。狙いは正確で2発とも左右のふくらはぎに命中する。
「慌てなくてもこの後であなたも、送ってあげますよ。……あの世にね」
屋久島は楽しそうに馬皇に近付き馬皇の頭を踏む。足の痛みに耐えて這いつくばってでも由愛を守りに行こうとするが一向に進むことが出来ない。そうこうしている内に坂本先生の車を中心として大きな衝撃と轟音が鳴り響いた。
「由愛ぇぇぇぇぇぇ‼」
馬皇の絶叫が響いた。車は粉々になり車の残骸が飛び散っている。その中心で車は炎となり今も煌々と燃えていた。
「さて、お次は感動の再開と行きましょうか」
屋久島は今もなお由愛たちが乗っていた車に必死に向かおうとしているが銃で撃った足の部分を思い切り踏み込む。苦痛に顔を歪めるが気にせずに由愛のもとに向かおうとする。屋久島はそんな馬皇に腹が立ちもう片方の足も踏み砕いた。
ようやく、馬皇の動きが止まると屋久島は口元を歪めて馬皇の心臓に銃口を向ける。
「それじゃあ、先ほどの人たちにもよろしく言っておいてください」
にこやかに言って屋久島は引き金を引いた。




