転校生 後編
2部編成になりました
宣言通りに3分後。ぼろぼろになった生徒たちは教室に戻って来ていた。しかし、そのほとんどは白目になって気絶していた。息切れもしていない鉄は全員教室にいることを確認して言った。
「よし。全員居るな。今日は転校生を紹介する」
「先生。転校生は男ですか? 女ですか?」
さっきまで白目剥いて倒れていた生徒たちが復活していた。そういうときだけは滅茶苦茶早く復活できる男子たちに女子たちは少し引いた。
「今回は両方だ」
鉄の言葉に男女両方が盛り上がる。
「静かにしろ‼ これじゃ、紹介もできんだろうが」
鉄の一括で教室内は静まり返った。静かになった教室で鉄は外で待機している転校生に合図をする。
入ってきた転校生たちにクラスは興味津々といった様子で待ち構える。
最初に入ってきた転校生は女子だった。つややかな長髪でその色はまるで雪のように白かった。そして、赤い目。誰もが白いウサギを想像してしまった。1人にしてしまうと死んでしまいそうな可愛らしさだった。その見た目から繰り出される魅力に他の男子たちはメロメロだった。
しかし、その美貌の視線の先は馬皇にしか向いていなかったのに生徒たちが気付かなかったのは幸運なのか不幸なのか。真央は馬皇を見るとそんな話は聞いてないとばかりに手を左右に振った。どうやら馬皇は何も知らされていないようだった。たぶん、サプライズで教えなかったのだろうと当たりをつけた。それにしては仕事が早いのはアレであるが。
真央は見知った女子の後について行って同じように教室に入った男子生徒を見るとどこかで見たような顔をしていたが特に気にならなかった。鉄は自己紹介のために黒板に2人の名前を書く。名前を書き終えると2人は自己紹介を始めた。
「サライラ・イズバルドです。おと……じゃなかった、馬皇様と結婚するためにここまで来ました。よろしくお願いします」
淡々とした口調で爆弾を落とすサライラ。馬皇と結婚するの部分だけ強調して発言したことに呆然とする男子生徒たち。女子の方からは大胆な告白紛いなことに黄色い声が上がる。
しばらくして同じように男子生徒も自己紹介を始めた。
「ケイスケです。クラスの女性の皆様。胸もませてください」
先程の声とは対照的に男たちは唾を飲んだ。そんな恐れも知らないことを言う転校生にどう反応すればいいのか分からず黙った。女子生徒たちからは冷たいを通り越して針を突き刺すような視線だった。隣にいたサライラも心なしか距離が離れているようだった。
「「‼」」
馬皇と真央は同時に息を呑んだ。馬皇にとってはサライラが嫁になりたい一心でこの中学まで来たということに。真央にとってはサライラの発言も確かにあるが自分の下僕が何故か中学生としてこちらに来ていてクラスどころか世界中の女性を敵に回す発言をした。しかも、残念なことにそれが知り合いであるという事に思考停止している間も自己紹介は続く。
「私は今馬皇の家でホームステイをしています」
「同棲なの? 同棲なんですか?」
ケイスケの発言は忘れられてと言うよりも完全に空気扱いしてサライラの言葉でテンションが上がった女子生徒は聞いた。サライラは爽やかなくらい綺麗な笑顔で答えた。
「はい。一緒のベッドで寝ています」
「うおぉぉぉい‼」
あらぬ誤解に馬皇は止めに入ろうとするが男子たちが体を張って止める。
「どういうことか説明してもらおうか」
「誤解だ。朝起きたらサライラが俺の部屋に入りこんでいただけだ」
馬皇は言い訳をするが他人からすると自慢にしか聞こえない。
「それなんてエロゲ?」
「ゴゴゴ(^言^)ゴゴゴ」
「妬ましい」
「私刑」
すさまじいsittoから男子たちは先程と同じように馬皇に襲い掛かった。
「うおっ‼ 一斉に襲い掛かってくんな」
とりあえず行動不能にしようと行動したとき、サライラが動いた。その華奢な体とは裏腹に容赦なく拳が襲い掛かった男子生徒たちの腹にめり込んで行く。
そして、あっという間に制圧は完了した。
「お……じゃなかった。私の旦那様に手を出したら次はそのお腹に大きな穴開けますね」
にこやかに答えるサライラ。そのあと馬皇飛びつきそのまま何事もなかったかのように馬皇の隣に座った。馬皇の体にスリスリと体を寄せていた。まるで、自分の匂いをつけてマーキングしているようだった。隣の席の生徒は先程の腹パンからさらに腹パンを喰らい快く席を代わってもらっていた。下手に関わらない方が良い。馬皇に対するサライラの執着心を見て生徒たちは心が1つになった。
「あの……。私は……」
完全に無視されたケイスケはぼそっと呟く。しかし、馬皇とサライラのあまりにも衝撃的な出来事に新しい転校生のはずのケイスケは忘れられるのであった。




