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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
最終章 乙女たちと覚悟と卒業式
324/327

19話

「どうなってるの?」

「さ……さぁ?」


 真央たちがクラウ・ソラスを馬皇の精神世界に送り届けて、船の艦橋まで来ると馬皇の姿を見て困惑する。精神世界に行く前と姿は異なっていた。それは縦には変わらないが、横に一回り大きくなっており目は確認できない。禍々しい赤い紋様のようなものが脈打っている。


「ふむ。戻って来たか」


 艦橋に入ると姿を変えた馬皇を見ていた天狩が入ってきた真央と由愛を見て招く。


「何があったの?」


 天狩の所へ行くと真央がたずねた。天狩は微妙な顔をすると言った。


「ふむ。彼の暴走は想定内で鉄君と洋介君、サライラ君たちの頑張りでうまく切り抜けてから彼が動きを止めたので君たちが上手くやってくれたと思っていたんだが、急に姿を変え始めてな。今はご覧の有様だ。何があった。」

「あいつは起こしたけど、少し後始末して戻るって言ってたわ」


 簡潔に真央がそう言うと天狩もそれで理解したのかうなずく。


「なるほど。その間に何かが起こってると。それが良い方向なのか悪い方向なのかは別として」

「ええ。恐らくは……」

「そうなるとその後始末とやらが今の状態に関係しているんだろうな」


 天狩と真央はお互いに思考する。現状は馬皇に何が起こっているのかは分からないということが分かり、こちらから出来る事は少ない。その上で何をするのがベストなのか、活動していない間に考えをまとめる。


『大変だっ‼ 動き始めた‼』

『Aaa‼ Aaaaaaa‼』


 通信から洋介が慌てた様子でそう言うと馬皇(?)が吠えた。殺意の塊のような背筋を凍らせる声に船内にいた真央と由愛、天狩と天狩の部下の2人、ファナ、ユメリアを除いて倒れる。


「何よ‼ これっ‼」

「……大丈夫です。皆さんは気を失ってるだけみたいです」


 真央は混乱する。こんな状況の中で由愛はクラスメイト達の様子を確認すると命に別状はないことを伝える。普段であれば逆の対応をしそうな2人を見て天狩は冷静になる。


『こちら鉄。あれは何だっ‼』

「天狩だ。分からん。それよりも鉄のスーツ内の人間に異常は?」

『こちらは一応、大丈夫だ。いきなり強烈な殺気が襲い掛かってきたせいで一部が体調を崩しただけでこっちは対応を終えている』

「そうか。真央君が戻って来たから原因を聞いたが、彼女も分からないそうだ」

『分かった。とりあえず正気ではないことは確かだから、拳骨1つでも叩きこんでみる』

「何かしらの刺激を与えてみるしかない……か。いいだろう。全力で当たってくれ」

『了解。聞いていたな。洋介。サライラ』

『了―。ぐっ‼

『分かりまっ‼ 洋介‼』

「何があったっ‼」


 そう言って会話が途切れる。明らかに何かがあった事を示唆するようにサライラが慌てた様に声を上げた。


『まずい‼ 洋介が捕まった‼』


 鉄の声が環境に響く。その事態に天狩は悔しそうに歯を食いしばる。


「由愛。天狩とこの船をお願い」


 その様子を見ていた真央はそう言うと天狩達に背を向ける。


「分かりました」

「……行く? のか?」

「ええ」

「でも、どうやって移動するつもりだ?」

「それはこうやって、よ」


 そう言って真央の姿が消える。辺りを見渡すと後ろに真央が立っていた。


「皆月と同じなのは少し癪だけど、転移を使えるからそれを使ってね。それに私自身は巨大化出来ないから鉄先生の所に行ってサポートに回るわ」


 真央はそう言って、今度は距離が遠いため魔法陣を展開。アークから鉄のいる場所の位置情報を魔法陣に移しこむと真央はそのまま飛んだ。真央が急に鉄の前に現れると驚く。


「真田さん。いつの間に」

「転移よ。転移。皆月ほど自由って訳じゃないけどアークとアトラスを使えばね。その2つには私の魔法の補助や増幅させる杖のような役割もある事だけ理解してちょうだい。後、馬皇の奴には言わない事」

「あ、ああ」


 鉄はいきなり現れて説明した真央に困惑するが、今はそれどころではないためにそれらの感情と真央に対するツッコミ所を飲み込む。


「約束よ。期限は私があいつにこのことを話すまで。ちなみに約束を破ると死よりも恐ろしい罰が待ってるわ」

「……肝に銘じておこう」


 真央の口元だけの笑みに鉄は真剣な表情で答える。それを見た真央は約束を守るであろうことを確信すると話を続けた。


「それで洋介は?」

「あれだ」


 そう言って画面の方に顔を向けると真央も鉄の視線に合わせて外を見る。そこには手を変形させて触手と化した馬皇の腕が洋介を取り込んでいる姿であった。


「まずいわね」


 真央は大規模な魔法をアトラスを通じて発動する。突きと同程度の大きさの火球が馬皇の腕を焼く。


『すまん。助かった。でも、なんで魔法?』


 洋介はちぎれた触手から這い上がる様にもがきながら宇宙空間に戻って来るとそう言った。


「私よ」

『真田さんか』

「真央でいいわ」

『真央さんか。あんなデカいの撃てるんだな?』

「まぁね」


 洋介の言葉にしれっと答えるが、普通の状態ではもちろん打てるはずがない。アトラスとアークの動力源である結晶のおかげである。いくら真央であってもあのサイズの魔法は十数発しか撃てない。仮に1発撃っただけでもかなりの疲労の色が見える。


 しかし、足りないのならば外部から支援すればいい。それがアークの本来の使用である。馬皇たちの前では真央は一切それについての説明はしていないが、宇宙船である理由は宇宙空間であれば仮に知ったとしても距離がありすぎるために手が出せない。仮に手が出せても真央が追い付ける。それらを想定した代物でもある。


『それで? 今の状態のあいつにはどうすればいいんだ?』


 洋介は変わり果てた馬皇を見て言った。変化する前よりも非定型生物じみてきた腕の触手化。焼き切った触手は既に再生して通り抜けた火球の元に向かって飛んでいる。馬皇は触手を伸ばすとそれを触手から取り込んだ。腕よりもはるかに大きな火球は触手を赤く染めるが、時間を追うごとに腕のサイズと変わらないくらいまでになるとそのまま触手は腕に戻る。火球を取り込んだ馬皇アトラスの方を向く。


『チ……か……ラ。ち…可ラ、……血……火……RA……Woooo‼』

「こっちに来るぞっ‼」


 触手を伸ばしながら馬皇はゆっくりとアトラスに向けて進み始める。それを先行する形で触手に変えた腕を伸ばして先に絡め取ろうと全方位にまき散らす。


「迎え撃つわよ。鉄先生は最短ルートで回避しながら一撃加える事だけに集中して‼」

「分かった」

「洋介とサライラはアトラスの援護を‼」

『おう』

『分かりましたわ』


 真央の指示で洋介とサライラはアトラスの前に出る。


『合わせなさい。洋介の中にいる狼。それと洋介も』

『そっちこそ。小娘』


 サライラはリルをたきつけるとサライラはブレスを吐く準備に入る。触手の位置が本体と洋介、サライラの半分くらいの位置まで近づくとリルは洋介に言った。


『洋介っ‼ サライラっ‼』

『私が右を』

『なら左だな』


 そう言って方向を確認してから溜め込んだ力を解放する。薙ぎ払う様に放たれたそれは力の奔流となって切り裂くように大量の触手を分断する。


「行けるわっ‼」

「よしっ‼」


 真央が速度の強化と鉄の反応速度に合わせて機体の調節をする。明らかに真央がいない時よりも滑らかに、それでいて先程以上に強まっている力に鉄は背面のバーニアを噴かせて馬皇に接近する。


「うおおおぉぉぉ‼」


 アトラスの急接近に馬皇が少しだけ怯む。だが、それも束の間で触手を即座に再生させて無限のようにわき上げてアトラスを取り込もうと伸ばす。


『させるかっ‼』

『させませんわっ‼』


 粗方ブレスで焼き払ったサライラと洋介は爪や牙を用いて接近する触手を躱しながら一本でも多く触手を切り裂いていく。


『うわっ‼』

『きゃあっ‼』


 しかし、増える速度の方が早すぎるために洋介もサライラも触手に取り込まれる。クモが獲物を糸でグルグル巻きにする様に触手で2人を包み込んだ。


「洋介っ‼ サライラっ‼」

「だめっ‼2人の意思を無駄にしないでっ‼」

「くっ‼」


 完全にとらわれた2人を助けに行きたいのか鉄は葛藤するが、真央がそれを抑える。阻む物が無くなり、鉄たちが乗るアトラスに残りの触手が襲い掛かる。触手の雨を時には回転、時には急停止からの急加速、どうしようもないくらいに埋め尽くされた時は真央の攻撃系の魔法によって道を作り残りの距離を詰める。


「眼をっ‼ 覚ませぇぇぇ‼」


 目と鼻の先になると最大に加速。流れ星のような速さで馬皇の頭に拳が激突する。その一撃が聞いたのかそこを中心に馬皇の体にひびが入り始める。そのヒビは広がっていき、洋介たちを取り込んでいた触手も含んで砕ける。砕けた体の中から脱皮するように中から現れた巨体から初めて言葉を発した。


『すまん。待たせたな』

「遅すぎるわっ‼」


 最初の謝罪の声に真央は文句を言った。

 熱い展開が好きなhaimretです。

 マオウハショウキニモドッタ。という某レトロゲーのような言い回しはさておき、やっと主人公復帰。どうやって地球を戻すかは次回のお楽しみという事で。


 ブクマとか評価とか感想とかくださいますと作者自信の活力が上がり、書くための動力源になりますのでよろしくお願いします

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