12話
結女の案内の元、真央はあっさりと馬皇の所へと行け、ることはなかった。
途中までは何事もなく進めていた。進んでいく間にも攻撃はあったが、そこまで気にするほどでもなかった。
しかし、結女の案内する先に進むにつれて真央たちに対する攻撃が過激になっており、ある一定のラインを超えると絶え間なくあらゆる攻撃が真央どころか結女すら巻きこんで襲いかかり足止めを喰らっているというのが現在の状況であった。そのラインに達した時、真央がとっさに結女を近くに引き寄せてから結界を作り出したために大事になっていないが、結界の外では矢や砲弾などの物理的な物から魔力を純粋に破壊力にした魔導砲や、真央の知っている者や知らない物を含めた攻撃魔法の嵐が結界の外で巻き起こっている。
「もう‼ どうなってんのよ‼ これ‼」
「ちょっと待ってください。どうなってるの? ……あ。もしかして」
真央の魔力的にもいくら攻撃がこようが突破されることはないし、突破させるつもりもない。それに加えて今の真央にとってはこの結界も正直永遠と張って行けるくらいに消費が少ないため余裕である。それでも視界が完全に埋め尽くされるくらいの攻撃で視界を埋め尽くされて反撃できないという事に苛立つのは当然であった。
「何っ‼」
防いでいるが視界が覆われている事と障壁に攻撃がぶつかる音で聞き取り辛いために声が大きくなる真央。別に怒ってはいないがその声に驚いて結女が体を一瞬震わせるが答えた。
「多分、精神防壁の方に何か異常が出たのかもしれないです。それに馬皇様の反応が薄いので少しだけ待ってください」
「それって皆月?」
「……おそらくは」
結女の心当たりに対して真央の頭の中に皆月という男の姿が思い浮かぶ。結女も真央の考えに否定しないのかうなずく。
「なるほど妨害って訳ね。……ホント腹立つ‼」
真央は苛立ちの感情を言葉に乗せて魔力障壁の外の攻撃をかき消す。見晴らしがよくなった空間を見てみると遠くからも同じように攻撃が向かってきているのを確認できる。
「えっと反応が2つ? どういうことなの? となるとどっちかが偽物……」
結女は馬皇の居場所を再度確認するために意識を別に向ける。真央の方はというと一度攻撃してきた者をひとまとめに吹き飛ばしたことによって気が晴れたのかしばらく結女の様子を見ていた。
「あれ? いや、もっと考えないと……」
あたふたする結女を見た事と先程の周囲をまとめて吹き飛ばした事によって頭が冷えたのかあることが思い浮かんだ。その思考に真央は集中する。
「……まだよ……まだ」
時が止まったように集中力を高めていろいろ考えている内にある事に気が付く。攻撃が集中しているという事は逆にチャンスであるという事に。
仮にたどり着いていないという事であればこの妨害を皆月も受けているということである。皆月が対策をしていないという事はないだろうが、それでもこうも視界を邪魔されては足が遅くなるのは間違いないだろう。
逆に妨害をしているのが皆月であれば馬皇の元にたどり着いているが、その過程を邪魔されたくはないという事であり、無防備になるのでは、と。体の乗っ取りで乗っ取られた本人に邪魔されない様に深く意識を封印もしくは消滅させて肉体を自身の精神に定着させるにはそれなりの時間が必要である。しかも、その状態であっても本人の意識があるのであれば割と簡単に防ぐことが出来る。
他にも色々な可能性を考えるが、むしろこれ以上考えるよりも急いだ方が良いのは間違いないという結果に行き着くのと同時に皆月が来て欲しくない方向に対してどうするかを考える。
「……結女‼」
「何ですか?」
「少し我慢してね」
「え?」
「っとと」
「え? あの?」
考えがまとまった真央が結女を呼ぶと結女を抱える。足場がない状態で抱えているため抱えた側の真央は少し不安定なのか少しよろける。その行動に結女は困惑するが、その後はしっかりと結女を抱えると耳元で言った。
「強行突破するから捕まってね」
「え? あ、あの出来れば避けてほしい、かな、と。それにまだ見つけてませんよ?」
結女は由愛の記憶からこれから起こることを想像する。結女は微妙な表情で控えめに真央に言うと問いかけた。
「私が分かるわ。あと1つピースがあればね。ところであいつのいる場所であろう方角は?」
「あ。あっちと向こうの方です」
「そう。ならあっちね」
結女があっちと答えた方向の方を見る。結女はたずねた。
「あってるんですか?」
「絶対とは言えないけれど可能性は高いわね」
「そうですか。それなら真央さんを信じます」
真央の言葉に結女は信じると答えると真央は微笑んだ。
「ふふ。そう言ってくれると嬉しいわ。それとしっかり歯を食いしばって捕まってるのよ? 大丈夫。すぐに終わるわ」
「え? あ」
真央がそう言うと結女はこれから起こることが予測できた。出来てしまった。結女は顔を青ざめさせると真央はイメージを固めてから即魔法を構築する。
「それじゃあ……行くわよっ」
真央の宣言の直後。無造作に辺りの攻撃をさっきと同じようになぎ払うと結界を張ったまま別の結界でさらに辺りを覆った。その中で自分たちを弾に見立てて魔力で砲身を作る。弾丸のように射出するための砲身を結女の指摘した方角の片方に向けると魔力を供給する。魔力が充填されると爆発させるために起爆用の魔力の火種で着火。魔力の爆発と同時に行き場を失った魔力の奔流が真央の作った砲身を伝う様に真央の結界を強く押し飛ばした。
「くっ」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
真央はその衝撃に見通しが甘かったのか少し顔をしかめる。一方で結女はいきなり来た衝撃と加速していくと感じる気持ち悪い感覚に叫び声が出る。そんな結女の叫び声と共に真央たちは馬皇の元に向かって飛んでいくのであった。
思ったよりも書けなくて疲れているなと感じているhaimretです。意欲があっても体が追い付かない感じ。でも書く。移動の短いやり取り。次回は洋介やサライラ達のいる現実世界の予定。
追記:申し訳ありません。次回は真央たちの視点のまま進みます。
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