3話
「あの? 続きいいですか?」
勝手に盛り上がっている真央とサライラに由愛が話しかける。由愛は若干不安そうであった。
「ええ。どうしたの?」
「あ。はい。実は入るまではいいんですけど……」
そう言って由愛は話を続ける。舞を使っての精神世界に入り込んだ際に防衛機能として外の本体が暴れまわるという事を。
「うん? でも、そうなって来ると皆月が入り込んだときから、暴れてもおかしくはないわよね?」
真央は話を聞いてから頭をかしげる。
「それは、まだお父様が完全に目を覚ましていないからですわね」
サライラは原因が分かったのか真央の疑問に答える。先ほどの由愛の発言を思い出して真央は理解する。
「ああ。完全に目を覚ましていないから妨害はない、と」
「はい。それで私たちが入り込むのは活性化させてからなので本体の方が暴れまわることになるんです。しかも、入り込んだ精神の本体を狙って。それが分かっているから急いでるんだと思います。乗っ取りが完了すれば何も問題ないですから」
「ちなみに私たちが精神世界に入り込んだときには肉体は?」
「それはこの世界に置いて行かれることになります。なので無くなっちゃうと私たちが戻れなくなるんです。それに本体が消えれば私たちも消えちゃうんです。それに今の私の力だとあまり離れすぎると馬皇さんの精神に弾かれます」
「……それは不味いわね」
思っていた以上にデメリットのある行為である事を確認して真央は考える。肉体を気にせずに戦えるのであれば真央たちで侵入してから馬皇を助ける間までは逃げ回ってもらうだけを考えていた。しかし、由愛の言い分が正しいとなると変わってくる。
「それならば俺たちが何とかするぜ」
「どうやってよ?」
真央が考えている間に洋介が言った。それを聞いた真央は具体的な方法をたずねる。
「それは……こう。仲間と協力して……時間を稼ぐとか?」
『計画ないんならならこれから考えるとか言えばよかったんじゃないかの?』
「そう。それだ……って、あれ?」
洋介は何も考えてなかったのか合間な表現をするとリルが呆れた様子で補足する。それに洋介がうなずくと聞いていた全員がため息をつく。
「力になりたいって気持ちだけは分かるぜ」
「でも、さすがに少しは考えとこうぜ」
「そうね。もう少し何かなかったのかしら」
「何も考えてないけど、誰かのためを思えるのが洋介君の良い所だと思うよ」
「あれぇ?」
小太郎は洋介の意思だけは理解して同意し、幸太郎や斉藤は洋介の考えなさをたしなめる。遠藤はフォローしているのか毒を吐いているのかよく分からない。そんな反応に洋介は頭をかしげた。
「ふふ。そうね。確かに1人で考えても仕方ないわね」
真央は漫才みたいなやり取りを見て、小さく笑う。それを見た洋介たちも笑顔になる
「そうだぜ。せっかくこれだけの人(?)がいるんだ。もしかしたら何かいいあんも出てくるだろ?」
「いい感じにまとめているが、お前は少し考えて喋れ」
「ぐっ。そんなに言わなくても分かってる‼」
幸太郎が洋介に茶々を入れ洋介もさすがにキレる。そんなひと時を見ながら真央は言った。
「それじゃ。みんなに聞くけどあの状態の馬皇を足止めするとして何が出来ると思う」
真央がそうたずねると鉄が最初に言った。
「さすがにサイズが違いすぎて私の本気でもダメージを与えられるのか分からん」
「そうよね。ちなみに鉄先生の全力って見たことないんですけど一撃でどれくらいなら影響を与えられるんですか?」
鉄の全力と聞いて疑問に思った事をたずねた。馬皇は見たことがあるらしいのだが、真央は見たことが無いし伝聞で聞いただけだ。ちなみに馬皇の反応は何とも言い難い表情で会った事だけは覚えている。
「うーむ。そう言われると少し説明しづらいな。一撃で精々は地下にあった敵の研究施設を崩壊させた程度だからな」
「へ、へー」
どこが地下の研究施設を崩壊させた程度だと思ったがそれでは規模など分からない。真央は微妙な表情をすると気絶したままの親部が文句を言った。
「どこが精々だ。地下数千キロに及ぶ巨大施設に対して拳を地面に叩きつけて全てが陥没したって聞いたぞ」
「おお。親部起きたか‼」
「起きたかじゃない。俺とお前は敵同士だったんだぞ」
まるで気にしていない様子の鉄に親部は鬱陶しそうに言った。
「それこそ小さいことだな。お前が力を求めていたことを知ったのだから、これまで以上に鍛錬に励めばより強くなれる」
「簡単に言ってくれるなよ。年考えろ。もう、40過ぎてんだぞ」
「それこそ可能性を閉ざす言葉だろ。強くなるのに年齢など関係ない。だが、それも自分たちの住む星があってこそだ。協力してくれ」
鉄はそう言って親部に手を差し出す。それを見た親部は顔を逸らして不機嫌な様子のまま手を取った。
「……ふん。俺はお前に負けた身だ。それに家族の墓を崩壊させたあいつにはデカい借りがあるからだ。断じてお前のためじゃないからな」
「そうか。それでも力を貸してくれるならば心強い」
そう言って鉄は嬉しそうに親部を受け入れる。そのやり取りに着いて行けない真央たち。
「という訳だ。よろしくな」
鉄に対してのみああいう態度なのか真央たちには生真面目な様子で答える。
「え、ええ。よろしくお願いするわ。……ちなみにだけどその時に大きな地震とかって起きなかったの?」
「ああ。一番遠くで世界の反対側。震度1程度は出ていたらしいぞ。それにしてもそんなことよく分かったな。お前らが多分2、3歳の時の話だろ?」
真央は過去にあった地震を思い出していた。真央たちが生まれて少しした頃に一度起こった震度3程度の地震であった。世界を一斉に襲った地震に表向きは原因不明という事になっていたが、世界の終わりや新兵器の実験などの憶測が飛び交っており、小さかった真央も様々な噂話を聞いたことがあった。
まだ前世の記憶は戻ってなかったが、それでもその頃からそれなりに賢かった真央は興味を持ったのか色々と調べたのを覚えており、まさかその元凶が鉄であったとは思っていなかったのか顔を引きつらせる。
「だ、大体わかったわ。ダメージに関しては分からないけど方法を考えてみるわ。ちなみに洋介の中にいるリルちゃんだっけ? 最大でどれくらいの大きさになれるの?」
真央はこれ以上聞くのは精神衛生上よくないと思ったのかここで話を終わらせて洋介にたずねる。
「それは聞いたことなかったな。リルどうなんだ?」
『うむ。大あごが天に届く程度には大きかったぞ。さすがにあれよりははるかに小さいがな』
「私の方が一回り大きいですわ」
『なんじゃとっ‼』
「……うーん。ざっくりしすぎてて分からないわ」
リルの大きさをザックリと予想するがいまいち想像できない真央。真央の知っているような魔物たちよりもはるかに大きい事には変わりないのだがそれでも惑星と同程度となると少し心もとないと考える。
「私だと今のお父様の6分の1くらいですわ」
「そもそも実力的には勝ててないだろうことは分かってる。それに加えて根本的に大きさで負けてるのよね」
「だよな。でも、大きさはどうしようもないだろ」
「そうなのよね。他のみんなを強化するって方法も考えたんだけど必ず強くなれるかどうかも分からないのよね。という事はあれを用意すれば何とかなる。でも、動力は何とかなるかもしれないけど、材料が足らなすぎるわ」
「ふむ。材料が足らないなら何とかなるぞ」
洋介の言葉に真央が同意すると何かを思いついた天狩が真央に提案する。
「話を聞いていたの?でも、本当足りるの? 少なくともあれと同程度の質量の材料よ?」
真央はいぶかしげな表情で天狩を見る。
「問題ないな。本社の倉庫を使えばいい。何を作るのかは知らんが、そこならば他の世界や宇宙から探してきた選りすぐりの素材たちがある」
「本当に?」
あまりにも都合のいい話に思わず真央は聞き返す。天狩はそれに対して躊躇いなく言った。
「ああ。あの機械兵たちも見ただろ。それを大量生産しても余裕がある上にその分も含めれば足りるとは思わないか?」
「それだったら……。でも、時間が……」
真央はその話を聞いて真央は過去に材料が足りないが故に止めていた計画が頭に浮かぶ。しかし、それをするにしても3週間、先制と移動も含めるならば2週間でまともに戦えるくらいに仕上げなければならないことを考えると時間が足りない。
「それならば私も協力しよう。何をするのかは分からないが、何かを作るんだろう? それならば力になれる。行けないか?」
「力仕事なら任せなさい」
「俺たちも何が出来るか分からないけど簡単な仕事ならできるぞ」
「……それだったら何とかなるかも」
天狩の言葉に同意するように鉄がそう言うと洋介たちもそれに続く。真央はしばらく考えると何とかなる所まで行き着いたのかうなずいた。
「分かったわ。お願い。それと並行して作戦も煮詰めるわ。協力しなさい‼」
「そうか。それならばさっそく取り掛かろうではないか‼ ふはははは‼」
「作戦に関しては私たちも協力するわ」
真央は素直に頼むと天狩はわくわくした様子で笑みを浮かべた。真央はそれぞれの士気を高めるために声を上げる。
「最高の物を作って驚かせてやろうじゃない‼ ついでに助けるわよ」
「「「『おおっ……うん!?』」」」
本来の目的がついでになってしまっている真央の掛け声に勢いで声を上げると同時に困惑した声も上げる洋介たちであった。
入れた覚えがないのに何故か変な所に章のタイトルが入り込んでて頭をかしげているhaimretです。
何を作るつもりなんでしょうね(棒)。少しぐだっとしていますが、次回は時間が飛んで馬皇との戦いに入るか、由愛、真央、サライラの閑話が入る予定です。今の所は後者になると思いますが……。
ブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者自信の活力が上がり、書くための動力源になりますのでよろしくお願いします




