エピローグ
「もう‼ 何だっていうのよっ‼」
馬皇と皆月が消え、意識があるのは真央だけなり吠えた。訳の分からない状態に陥って混乱しているが故に叫ばねば気が済まなかった。
「……まずは目の前にいる2人ね」
しばらくして。ひとしきり文句を叫び終えた真央は最初に倒れている2人を優先した。先ほどは全く使えなかった魔法で強化してからサライラを担いで由愛の元にたどり着くと由愛の近くにサライラを置く。真央は訳の分からない状態であるが、ひとまず由愛を起こすことが先決だと考えて由愛を揺する。
「ほらっ‼ 由愛起きなさい‼」
「ふぁっ? お母さん? あと5分……」
「お母さん? じゃないわよ‼ 早く起きなさい‼」
「ふあたっ‼ あれっ? 真央さん?」
真央が由愛の寝言に対してチョップすると由愛の意識が覚醒する。いきなり目を覚ました由愛は目の前の真央に話しかけると真央は言った。
「真央さん? じゃないわよ‼」
「え? ええっ‼ 真央、さん‼ふ、ふえ‼ や、止めて、くだひゃい‼ 」
由愛を激しく揺する真央。激しく前後する由愛の上体。いきなりの事に理解が出来ずに由愛は制止を求める。真央もさすがにやり過ぎたと思ったのか激しく動かすのを止める。由愛が寄っているのを見て真央は少し罪悪感が生まれたのか慌てて謝った。
「あっ。ごめん。それよりも大丈夫?」
真央は申し訳なさそうに謝ると由愛も落ち着くために一息ついてから何かを思い出したのか顔を隠してから言った。
「ふぅ。だ、大丈夫です。……それと聞きました?」
由愛は恥ずかしそうに顔を赤らめ、真央をちらりと見てすぐに目を逸らした。それを何度も繰り返す由愛を見た真央は先程言っていた言葉をそのまま口にする。
「……ふぁっ? お母さ――むぐっ‼」
「わーっ‼ わーっ‼ 言わなくても大丈夫ですからっ‼」
真央の言葉に恥ずかしさが最高潮に達した由愛は慌てて真央の口を塞ぐ。いきなり口をふさがれて真央は慌てて由愛の手を外した。
「ぷはっ。もう‼ からかったのは悪かったから‼」
「は、はい‼ えっと。こっちこそいきなり口を塞いだりしてすいませんでした。それで。あの。私はどうなってたんですか? どうにも何かに吸い込まれたのは覚えているのですが……」
真央の謝罪に由愛も落ち着いたのかすぐに謝る。お互いに謝ると由愛は話を切り出した。
「そう。覚えてないのね」
「えっと……。はい」
由愛がうなずく。真央は少し考え込んでから真央は話した。
「それなら簡単に説明するわ。皆月に吸収されたあなたが解き放たれた時に何かを踊っていたわ。その踊りを見たサライラが倒れて馬皇が消えた。そして、その後を追う様に皆月が本の中に消えたわ」
「えっと? 私が?」
「私の方が聞きたいわよ。あいつはあいつでよく分からないこと言って消えるし、皆月は本の中に消えるしで」
由愛の言葉に同じように真央も頭をかしげる。いまいち状況が呑み込めない事態に理解が追い付いていないのは真央も同じであった。馬皇の言葉も気になっているが、これから何が起こるのかいまいち想像が出来ない。
「真央さんっ‼」
「ん‼」
「あ、あれっ‼」
これからの事で思考の海に沈んでいると由愛の慌てた声に真央は現実に引き戻される。由愛は驚愕した様子で天井の方を指さしている。それをなぞる様にその先を見ると由愛と同じように真央は驚愕する。
「何よっ‼ あれっ‼」
由愛が指さした先。そこには地球がある場所であった。その地球のある一点。そこには巨大な腕が生えていた。まるで卵を突き破る様にその腕を中心に地球が崩壊していくのが遠目からだからこそ分かる。地面がひっくり返されるように大地が、海が球体という形を無視して広がっているようにも見える。
「馬皇さん?」
「分かるの‼」
「えっと……私何か言いました?」
その腕を見た由愛は無意識に馬皇の名をつぶやいた。真央の声に由愛は正気に戻ったのか真央にたずねた。
「本当に覚えてないの?」
由愛の返事に真央は変な物を見るような目で由愛を見る。由愛もよく分かっていないのか戸惑いながら答えた。
「は、はい。何かをつぶやいたのは覚えているんですけどその内容が頭に入ってこないんです」
「そう。由愛がさっき言ったのは馬皇の名前だったわ」
「そうですか。それなら多分あれは馬皇さんです」
由愛は何か納得したように言った。その言葉に真央は神剣な顔をしてたずねる。
「それは信用していいの?」
「それについては私も少し自信がないです」
由愛は自身の感情を素直に答える。その言葉に真央は振り出しに戻りそうな言葉に少し肩を落とすと由愛は続けた。
「でも、真央さんが馬皇さんの名前を出したときに不思議としっくりきたんです。その答えが正しいって。とはっても勘なんですけどね」
「いいわ。信じる」
「え?」
申し訳なさそうに由愛が答えると真央は顎に手を当てて考えてから答えた。その答えに由愛が頭をかしげる。
「だから、信じるって言ったのよ」
「いいんですか?」
「根拠はないけどそう言われた方がしっくりくるわ」
「ありがとうございます」
「気にしないで。私は私が思ったように解釈するだけよ」
真央は由愛にそう言うと今度は腕の反対側から翼が広がる。それによって地球の崩壊が早まると隙間から頭が出てきた。既に地球の形はほぼなく、黒い竜が地球の残滓を漂わせてたたずんでいる。
「確かに遠くから見てるからわかるけど……。なるほど。確かに馬皇に似ているわね」
「地球が……」
大きくなっているとはいえ、黒い竜の姿はあまり変化はない。確かに馬皇であった。真央が観察を終えると同時に由愛は目の前の光景に呆然とする。
「……うっ」
真央と由愛が崩壊する地球を見て呆然としているとサライラが目を覚ます。
「あれは‼ お父様っ‼」
「やっぱり?」
地球の方を見てサライラは叫んだ。サライラの言葉に確信を持つ真央。
「それどころじゃないですよっ‼ 地球がっ‼」
そんなやり取りをしている真央とサライラに由愛が叫ぶ。
「分かってるわ。でも、その地球をどうにかするにしてもまずはあいつが戻ってこないと話にならないわ。皆月の言っていたことも気になるし」
「そうですわね。遠いのでまだはっきりとはしないのですがお父様の気配とは別に何かが混ざっているような気がしますわ。あれは良くありませんわ」
未だに彫像のように動きを見せない馬皇を眺めながらサライラも何かを感じ取ったのか答える。
「……そんなことも分かるの?」
「愛の力ですわ」
真央の問いにサライラが即答すると真央は言葉が出ないのか呆れた表情だけを見せる。由愛は2人のやり取りに少しだけほぐれたのか小さな笑いがこぼれる。
「ふふ。あっ。こ‼ これはっ、その‼ ふ、不謹慎なのは分かってるんですけどっ‼ つい……」
由愛は小さく笑ったのはさすがに不謹慎と思ったのか言い訳を考えるが何も思いつかなかったために言葉が詰まった。由愛の慌てようを見た真央とサライラは少し癒されたのか優しい声色で言った。
「分かっているわ。色々なことが一気に来たからそうなるのも無理はないわよね」
「そうですわね。それに大事なのはこれからですわ」
「は、はい」
「とりあえずこれからの事はいったん戻ってから考えましょ。それにここから地球の合った場所に戻るにしても時間はかかるし、調べるにしても機材とか必要よ。さすがにどうやってもさすがにあの大きさの相手をするのは無理だわ。ユメリアたちを拾ってみんなで考えないと。どれだけの時間が残されているのかは分からないけれどね」
真央がそう提案するとサライラ達はうなずく。
「そうですわね。絶対条件はお父様を助ける事ですわ」
「です。私が原因みたいだし頑張らないと。ね。真央さん」
「え? 私? そうね。ついでに助けるだけよ。ついでにね」
「素直ではありませんわね」
「どういう意味よ?」
ついでという言葉を強調する真央にサライラが悪い笑みを浮かべる。
「さぁ? それよりも最初に乗っていた舟でいいんですわよね?」
「え? ええ」
「由愛はしっかり捕まってなさい」
「えっと? はい?」
いきなりサライラにたずねられた真央は困惑しながらも律儀に答える。それを聞いたサライラは由愛を抱えた。
「って‼ 待ちなさいよ‼ さっきのはどういう意味っ‼」
先程は不意を突かれて素直に答えたが、サライラの言葉を覚えていた真央は文句を言った。が、サライラはどこ吹く風。しっかりと動けるレベルまで回復したのかサライラは逃げるようにさっさと来た道を戻り始める。
「待ちませんわ。私は他の方と今回の計画を知ってそうな人物を集めておきますので真央はこの周辺にあるかもしれない情報集めをお願いしますわ。私には全く分かりませんし」
サライラはそう言って風のように去っていった。そして、真央は気が付いた。呆然としたまま1人置いて行かれた上に、情報探しという仕事を押し付けられたという事に。1人で。
「後で覚えてなさいよっぉぉぉぉぉぉ‼」
真央はサライラ達が去っていった方に向かって叫ぶのであった。
という訳で魔王(馬皇の本体)が復活。で章タイトル回収。ついでに地球崩壊と。やりたい放題しているhaimretです。
次章を最終章の予定です。サブタイトルは『乙女たちと覚悟と卒業式』になると思います。これよりいいのが思いついたら変わると思いますが。
なるべくいつも通りで更新していきますが、現状体調がすぐれないので1日遅れる可能性があります。その時は許してください。
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