37話
「わ、私?」
「そ、そんな……」
由愛とサライラは皆月の話に困惑する。突拍子もないことを言われてどうすればいいのか分からない由愛。今まで信じてきた情報と違う事に何を信じればいいのか分からなくなるサライラ。種類は違えども理解が追い付かない2人と皆月から話を聞きだしていた真央の視線が皆月に向く。
「ええ。全ての要素を合わせることによって彼は眠りから目を覚ますのですよ。そして、私がその肉体と力を手に入れるのがゴールです」
皆月が目的を言い切ると同時に真央が馬皇に詰め寄った。
「ちょっと‼ その話を聞いてないんだけど‼」
「言ってないからな」
「今、まさに由愛を危険にさらしてるって言ってるの。分かってる?」
真央は動けない馬皇の襟元を掴む。真央はキレ気味にそう言うと馬皇は答えた。
「ああ。だが、置いて行けばもっと最悪の事態に陥っていた」
「……なんでそんなことが分かるのよ」
馬皇の言葉に真央は顔をしかめる。その対面では皆月が「ほぅ」と感心した様に声を出している。馬皇は真剣な様子で言った。
「仮に俺たちだけで攻略したすると由愛を残していくことになる。サライラと一緒であったとしてもあいつの事だ。由愛を奪っていっただろう」
「……そんなこと分かってるわよ」
馬皇の言葉に真央も思い当たることがあるのか馬皇の掴んでいた手を緩める。皆月の転移の異能の厄介さは真央も分かっている。現在も馬皇の動きを止めているのも皆月である。それに加えていつでもどこでも自由に好きな場所に行き来できるという事は由愛が捕まるのが速いか遅いかの違いでしかない事を真央は理解していた。下手に遠ざけて見えない所で確保されるよりも近くに居た方が妨害できる可能性があるために由愛を近くに置いているのである。それは馬皇とサライラと一緒に決めた事であった。
「それに俺らが勝てば問題ないだろ。よっと」
馬皇は気合を入れるとさっきまで動けなかったのが嘘のように馬皇も動き始める。
「はは。やはり、もう動けるようになるんですか……。本当に規格外で。もうっ‼ そして‼ その力がもうすぐ私の物になると思うと体がうずきますよ‼」
皆月が恍惚とした表情でそう言うと鎮めるように自分の体を抱いて悶える。それを見た真央は気持ち悪そうに顔をしかめた後、何も見なかったことにして馬皇を見てから言った。
「出来るんならさっさと動きなさいよ」
「無茶言うなよ。やっと感覚掴んで動けるようになったんだよ。未だにどういう法則で戻してるのか分からないしな」
「そっちの方が訳分からないわ」
皆月の転移による固定は空間に対して自動で発動している。それは現在進行形で、である。馬皇が動くたびに連続で元の位置に元の姿勢で戻している。戻しているはずであるが、何かを掴んだのか馬皇は動いていた。さすがの真央も目の前の訳の分からない光景に呆れた様子で馬皇を見る。馬皇は軽く咳払いするといった。
「あー。お前の思惑は分かったが、俺は自分から眠りについたんだ。だから、起こしてくれるなよ。それにもう一度言うがお前程度じゃ御しきれずに消滅するから止めとけ」
「それはないです。私たちの一族の研究は完璧です。その為だけにありとあらゆる研究を集め、試したのですから。理論上の成功率は99%。失敗するはずがありません。そして、この場に必要な要素はすべてそろった。計画は最終段階に入ったのですよ。未来観測書では成功の未来は2通り。それ以外の要素は全て排除したので成功する未来が確定したも同然なのですよ」
皆月は1人悶えるのを止めて、自信満々にそう言い切ると同時に未来観測書を広げる。書を広げると光を放ちその光は由愛を包み込んだ。
「え?」
「マズい‼」
「させませんよ」
「好きにはさせないわよ」
光に包まれる由愛を見て馬皇は慌てる。馬皇の慌てようから、真央もあの行為がヤバい物であると理解したのか即座に妨害を試みる。馬皇は皆月の行動そのものを阻止するために皆月に襲い掛かる。
「くっ」
さすがに皆月の行動はそれなりにリスクのあるのか転移しながら馬皇の猛攻を躱して距離を取る。そうこうしている間に由愛の体が消え始める。
「うそっ‼ どうなってるのよ‼ これ‼」
「えっ‼ き、消えてる‼」
真央は所から出ている光そのものを断とうとしたり、由愛を転移で遠ざけたりしようとするがそれらは効果もなく、どんどん由愛の体が消えていく。近くに居たサライラあ由愛と真央の声を聞いて慌てて光と由愛の間に立って阻もうとするがそれをあざ笑うかのように由愛は光に包まれたままである。
「由愛‼」
「まっ……」
抵抗する手段のない状態に真央は由愛を引き留めようと近づくが、由愛が真央の名前を呼ぶ前に由愛の姿が消えた。同時に、未来観測書は名前を変える。『ジェネシス』と。
「これでこの書は本来の力を取り戻せましたね。1つ目はこれで終了と。後は―――」
それを確認した皆月は計画の1つを達成したことに満足そうに言った。その一方で馬皇は声を荒げる。
「皆月ぃぃぃ‼」
「慢心してその場に彼女を連れてきたことを後悔するのですね。まぁ、連れてこなかったら先に吸収させてもらって楽できたのですがね」
「――――‼」
感情のままに馬皇が皆月に殴りかかると馬皇の腕が飛んだ。遅れてくる鋭い痛みと抵抗もなく飛んだ腕。それ以上に何が起こったのか理解できずに馬皇は声が出なかった。
「ふぅ。危ない。危ない。素晴らしい切れ味でしょう。転移は応用で繋いでいる空間を強制的に解除すれば断てない物のない刃物の変わりになるんですよ。使用するにはかなりタイミングが必要なんですがね。それにあなたのお相手は私じゃありません。戦いの時間ですよ。屋久島」
皆月は訳の分からない様子であった馬皇に開設すると屋久島を呼ぶ。屋久島は翼を広げると音を置いて行って馬皇に殴りかかる。馬皇の腹にクリーンヒットすると地面に対して水平に吹き飛ばされる。
「YKRURURU」
屋久島は唸る様に声を漏らすと馬皇の方を向い、いつでも襲い掛かれるように構える。
「さて、この屋久島に勝てたらとしたらまたお会いしましょう。行きなさい。そして、貴女たちはこちらです」
皆月は馬皇にそう言うと空間を歪めて両手を突っ込む。両手はサライラと真央の頭の後ろを掴む。サライラは未だにショックが隠し切れないのか呆然としたままで抵抗することなく引きずり込まれる。真央は空間の揺れを察知してそれを躱そうとするが、それは予想していたのか動揺の隙を突かれたのか手足の付け根と胴体を少しずらして動きを固定していた。
「やられたっ‼」
真央はそう叫ぶと皆月によって別の空間に引きずり込まれた。
喜びと感謝と楽しさで書いているhaimretです。仕事が終って帰宅が遅くなると更新の時間が乱れることがありますが、なるべく日にちのペースは変えない様にしていく予定です。サブタイ付けるとしたら『分断』。馬皇対屋久島と真央&サライラ対皆月の戦いになります。お楽しみに
指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者の動力源になりますのでよろしくお願いします。




