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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第一章 魔王たちは出会う
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真央と由愛

「負毛ぇぇぇ‼」


 由愛が審判として参加してくれると言った少しだけ後。これでやっと公平な戦いができると思っていた2人はこのまま勝負をはじめようとした瞬間。

 怒声と共に屋上の扉から生徒指導の(くろがね) 人並(ひとなみ)が入ってきた。彼は大馬中学におけるある意味で有名な教師であった。身長190cm。体重110kg。一般的な人間を凌駕する巨体に加えてジャージの上からでもはっきり分かる全身を筋肉に覆われた男である。


 鉄は馬皇を見つけると叫んだ。


「お前と言う奴は‼ 屋上から飛び降りるなど危ないことをしよってからに‼」

「あっ、やっべ」


 さすがに言い訳のしようがない状況に馬皇はとっさに先程と同じように今度は逃げるために素早くフェンスを乗り越え再度校庭へとダイブする。猫のように綺麗に着地するとそのまま逃げるように走る。


「だから屋上から飛び降りるなと言っているだろうが‼ この馬鹿者がぁぁぁ‼」


 そう言って鉄先生も同じように軽々とフェンスを飛び越えためらいなく校庭へとダイブ。筋肉の塊が激しい音を立てて着利すると何事もなかったかのように馬皇を追いかけはじめた。その様子に由愛は慌てて飛び降りた先を見て驚愕する。


 2人は何事もなかったかのように走ってに逃げていた。普通であれば怪我でもしそうであるが2人とも怪我1つなく学校内を全速力で走る姿に由愛は困惑する。


「え? え? えぇぇ~……」


 由愛はまず自身の常識を疑った。いつから学校はこんな超人たちがひしめく場所になったのだろうかと。ここは屋上である階にしたら4階にあたる。15m近くの高さはどう考えても飛び降りるには躊躇するだろう。むしろ自殺志願者でない限りは飛び降りるなどまずしない。少なくともそうホイホイ飛び降りてあんな風に無傷で走れるはずがない。普通であれば骨が折れていても不思議ではない高さである。


 横の方を見ると真央も驚いたという風に目を見開いていた。確かにそんな常識外のことを見せられたら同じ反応をするだろう由愛は思った。


「本当に驚いたわ。あの脳筋はわかるにしても、鉄先生もそんなことできるなんて……。噂はまさか本当なのかしら?」


 真央は鉄の行動に驚いているが、馬皇の方は別に問題なくできると言っているような発言をする。彼女の方もあまり常識的ではないのかもしれない。由愛は密かにそう思った。


 ちなみに噂というのは鉄先生超人伝説である。顔と肉体は厳ついが、男女分け隔てなく生徒に優しいと評判の体育教師兼生徒指導員である。服装なども厳しくするときには厳しいがそういうとき以外は割と大目に見てくれる。


 しかし、彼は生徒が傷つけられるような行為を許さないし、危険な行為をした生徒に対しても叱れるだけの度胸はある。


 過去に一度うちの学校の生徒たちがヤクザの抗争に巻き込まれた時には生徒を助けに行き、そのままヤクザの組を壊滅させた。朝に生徒が車に轢かれそうになったとき、走る車を追い越して素手で受け止めて事故を防いだ。この学校にいる不良たち全員のタバコをやめさせた……など。実際にありそうな話から眉唾な話まで。バラエティに富んだ話がたくさんあるのである。というか、本当に同じ人間なのか?という言葉が出てくるような話が多く出てくる先生でもあるのは想像に難くない。


 だが、少なくとも屋上から飛び降りても余裕であるという新たな伝説を目撃してしまった。由愛と真央そして追われている馬皇はあの噂は本当だと思っても過言ではないと判断するだろう。呆然と見えなくなった馬皇たちが逃げた先を見ているとの悲鳴が聞こえる。由愛と真央は馬皇は捕まったんだろうなと確信していた。


「ねえ?」

「は、はい。なんでしょうか?」


 馬皇との戦いはもうないと見た真央は由愛の方を見てからたずねる。図らずも2人きりになった由愛は今も緊張した面持ち真央を見る。そんな様子の由愛に真央は申し訳なさげに言った。


「そんなに緊張しなくていいわ。山田さん。その……由愛って呼んでいい?」


 尻すぼみに声が小さくなっていった真央の顔は真っ赤であった。そんな様子の真央に由愛は笑いをこらえる。由愛は思った。なんてことない。確かに中二病かもしれない変な人たちだ。ありえない身体能力を持ってここに連れてこられた。しかし、中学生だ。まだ二年生だ。友達が欲しくてあんなことをしたのだろう。きっと負毛君のこともお互いに敵だ敵だと口では罵り合ってはいるが、仲良くしたいのだろう。そう考えると由愛は自然と笑みが止まらなくなる。


 顔を赤くしたままの真央は笑ったままいつまでも答えない由愛に声を荒げる。


「もうっ‼ 何なのよ‼ それで? 山田さんはいいの? 駄目なの?」

「ふふふ。いえ、ごめんなさい。こちらこそよろしくお願いします。真央さん。私の事は由愛って呼んでください」


 その言葉がとてもうれしかったのだろう。真央の周りに花が咲くように笑みがあふれた。


「ええ。よろしく。由愛」


 お互いに笑いあい、校舎の下校のチャイムに祝福されながら小さな新たな友情が芽生えたのだった。

ちなみに、馬皇は捕まり生徒指導室に連行されました。

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