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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第九章 魔王復活編
298/327

35話

今回は短いです

 馬皇たちはユメリアたちと別れてから再び廊下を抜け、最後の関門らしき扉を正面から叩き壊して抜けると広い空間に出る。


「よく来たな」

「やっぱりあんたか。親方」


 空間の中央には親部が待っていた。


「へぇ。よく分かったな。鎧と兜をしてるから分からねぇと思ってたんだが」

「ああ。声と臭いでな」

「おう。おう。鋭い事で」

「それとあんたが狙撃したこともな。真央」


 感心するように親部が笑うと馬皇がはっきりと答える。ハンターズギルドの支部長を撃った計画書を真央に言って取り出す。馬皇と真央が姿をくらませて報復のためにWCAの施設を襲撃していた時に見つけた書類。馬皇たちの冤罪の証拠となる物であった。事細かに計画の詳細が書かれており、そこには実行者の名前に別の組織のはずの親部の名前があった。そして、その書類の達成済みのための判が押されている。


「処分したはずなんだがな。そんなものよく見つけたもんだぜ」

「そんなの復元すればいいだけだからな。あいつなら灰になっても再生できるぜ」


 馬皇が真央を見てそう言うと真央は偉そうにドヤ顔をする。それを見た親部は苦笑した。


「……おいおい。さすがにそれは反則だろ。なんだよ。灰から書類を復活させるって。しかも、偽造防止用の透かしも込みかよ。だが、それなら分かってるだろ? 通るなら俺を倒してみろ、よ‼」


 親部はそう言うと同時に馬皇の目の前に飛び出す。常人では全く反応することが出来ない速度。馬皇がその速度に反応できることは分かっているが馬皇は全く動く気配がない。そのことに訝しげな顔を一瞬だけするが、敵に対しては躊躇う気はないのか親部は手に持ったハンマーで馬皇を殴りにかかる。しかし、それは第3者の手で止められた。


「鉄ぇ」

「親部。追いついたぞ」


 鉄であった。鉄は正面から親部が全力で振り抜いたハンマーを片手でつかんでいた。その様子に親部は苦虫を噛み潰した様に顔を歪める。


「なぜここに来れた」

「それを教えると思ったか?」


 親部はハンマーをあっさりと手放すと鉄に掴みかかる。鉄も分かっているのか親部の手を掴むと取っ組み合いになる。力は拮抗しているのか押し合っているだけなのに地面は抉れクレーターを作る。


「馬皇‼ お前たちは先に行け‼」


 激しいぶつかり合いの最中で鉄は馬皇たちにそう叫ぶ。馬皇は無言でうなずくと真央たちを連れて走り出す。


「あいつらを先に行かせて良かったのか? 仮にも犯罪者だぞ?」

「裏切り者のお前が言うな。それに冤罪の証拠は既にある。死体の銃痕。態々あいつらがそんなもの用意する必要があると思うか? それにお前の愛用のライフルの口径と一致したのが決定的だったな。なぜ、裏切った?」

「おーおー。死体まで調べ終えたのか。相変わらず手が早いこって。それよりもあいつらだけ先に行かせて良かったのか? 恐らく俺らのボスの計画通りだぜ? まぁ、俺とお前の戦いが終わったら計画は終わってるんだがな」


 親部は鉄を挑発する。鉄はそれに乗らずに淡々と答える。


「それで問題ない。あいつらもそれは分かっている」

「……まじかよ。分かってて行くのかよ」


 鉄の評価に親部は馬皇たちの向かって言った先を見てから鉄を見る。そこには僅かに驚きが混ざっているのを鉄は見逃さない。


「その反応は皆月のしようとしている事が分かっているようだな。俺も計画を知った時は度肝を抜かれたぞ」

「ったく。そんなことも知ってるのかよ。筒抜けじゃねえかよ。まぁ、それを知った所で同も出来ないのが今回の計画なんだがな」


 鉄が真剣に語ると親部は辟易した様に言った。そこから流れるように鉄の手を外して襟を掴むとそのまま投げる。鉄はクレーターの端に叩きつけれると派手に土煙を上げる。親部はハンマーを置いた場所に戻ると自身のハンマーを拾い上げて構える。


「おら。その程度じゃダメージすら入ってねえのは分かってんぞ」

「ああ。お前がまだ全力掛かって来てない事もな」

「相変わらずそういう所の嗅覚が鋭くて嫌になるぜ。だが、今回はこいつがある」


 親部はそう言うと腰のポーチから丸薬を取り出す。兜の顔の部分を開けるとその丸薬を飲み込む。


「ぐっ」


 丸薬を飲み込んだ親部は発生する痛みにひざをつく。同時に心臓を強打するように鼓動に合わせて徐々に力強く大気を震わせた。鉄は親部の様子を見て警戒する。しばらくして親部の鼓動が収まると同時に親部の姿が消える。


「後ろか‼」

「おいおい。これに反応できるってのかよ」


 鉄は後ろを振り返ると同時にフックの要領で腰を捻って親部に殴りかかる。親部は一瞬で距離を開けて鉄の反応に呆れた表情を作る。


「はずしたか。全力で動いたはずなんだが」

「真面目に反則臭いな」


 鉄の身体能力に対して親部は文句を言った。丸薬の力を使ったうえでようやく鉄の身体能力と互角に張り合えるように見えると言った状態であれば親部が文句を言うのも無理はなかった。


「この肉体だけが俺の唯一の武器だからな」

「あぁ。そうだったな。お前はそういう奴だよ。だからこそ俺はお前が憎かった。限界のないお前と限界が見えていた俺。どれだけ努力してもお前を超えられないと心が折れかかっていた時に奴らは俺に話を持ちかけた「力が欲しくないか?」ってな。俺はそれに飛びついた。そのお蔭で前よりも強く慣れた」

「……そんなことのために裏切ったのか」

「そんなことだと? そんな訳ないだろ‼ 力が無ければ守れない‼ お前も覚えてるだろうが‼ 異能者の違法実験事件の出来事を‼」

「お前……それは」


 鉄は親部の言葉に言いよどんだ。それはお互いに言い出せない事の1つであった。


「ああ‼ 俺らがもっと強ければ俺たちの手で洗脳された子供を‼ 自分の息子を殺さなくて済んだはずだったのに‼」


 親部の言葉で鉄は過去の事を思い出していた。違法実験事件。異能者を生み出すために異能者ではない者たちを誘拐、監禁して洗脳、人体実験を行っていた事件である。その事件があったころ。鉄はまだ新人であり、親部は当時の互助会の最強の男あった。その事件を担当する際に、その敵は親部の家族である妻と息子を狙ったのである。


 その結果、妻は殺され、息子は洗脳、実験のモルモットにされた。しかも、その息子を相手にさせられ抵抗できない様に捕縛する前に目の前で力尽きて亡くなった。息子の件は限界が近かったという事もあったのだが、それでも速くに捕縛できればまだ可能性があったかもしれない。タラればの話であるが、親部はそれを真に受け、力を求めて色々としていたことを鉄は知っていた。


 それから十数年。時間が経って、家族が無くなったことと向き合い乗り越えたのか、前線から引いて後進の指導に積極的なっていたを鉄は知っている。そのはずであったが、親部の中の思いは歪んで大きくなっていたことに鉄は気が付かなかったのか絶句して親部を見る。


「ああ‼ 足りない‼ 力が足りない‼ 欲しい‼ 後悔をしないために‼ 俺が俺らしくあるために‼ その為ならば俺は何だってする‼」

「今のお前は弱い」


 親部の言葉を黙って聞いていた鉄は答えた。それを聞いた親部は苛立ちを隠さずに言った。


「あ? 弱い? 今の俺は誰よりも強い‼ 撤回しろ‼」


 言い切ると同時に親部は突っ込んで行く。大砲の砲弾を彷彿させるような勢いと威圧感を持って。


「くたばりやがれぇぇぇ‼」


 勢いを乗せた親部は鉄の前で急ブレーキをかけると突進した勢いと自身の力を上乗せして鉄の心臓目がけてハンマーを振るう。


「まだまだぁぁぁ‼」


 さらに、親部はその衝撃を響かせるようにインパクトの瞬間に衝撃を収束させる。その衝撃は鉄を突き抜けて奥の地面に深い穴を開けた。


「それだけか?」

「おい。うそだろ?」


 鉄はダメージを受けていない様にその場に立ったまま親部に言った。鉄にダメージを与えられてないことに放心している間に鉄は親部を手刀で意識を途切れさせる。


「ああ。弱いさ。心がな」


 倒れ込む親部に鉄はそう言うと親部を優しく抱き留めた。そこから親部を優しく寝かせると鉄は少し離れた所で血を吐いて倒れ込んだ。


「……くはっ。さすが親部だ。この、感覚は、内、臓がズタボロ、だろ、うな。しかも、かなり、念入りに破壊してや、がる」


 そう言って鉄は意識を失った。

低くても高くても評価して下さるのはすごくうれしいhaimretです。今回は少し控えめ。次回はやっと皆月戦。しっかり書けたらと思っています。そろそろこの章もクライマックスです。


 指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者の動力源ととなりますのでよろしくお願いします。

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