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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第九章 魔王復活編
295/327

32話

すみません。遅れました

「血迷ったか?」


 綾高は体を少しずらすことでユメリアが投げた薙刀をあっさりと躱す。投げるのに向いていない薙刀を投げるという行為に意識が薙刀の方に向いて、わずかに隙が出来る。その隙を見逃さないといった様子のファナが最短距離で自身の間合いに踏み込む。


「はぁぁぁ‼」

「ふむ」


 下から抉り込むように剣を振り上げるファナ。ユメリアの薙刀は囮であることは躱した瞬間から想定で来ていたが、思いの他ファナの移動が速いのかファナへの対応が遅れる。刀で受け止めるよりも早くファナの振った剣が綾高の腕を切り飛ばした。


「よしっ‼」


 刀を持った腕を飛ばしたことによって無防備になった綾高に対してファナは声を上げて追撃しようと振り上げから剣を翻して振り降ろす。


「覚悟」

「油断大敵だ」


 綾高はそんなファナに対して切り離された方の腕を宙に舞っている刀を持っている手に向けると物理法則を無視した軌道で一直線に腕が戻って来る。戻ってきた腕は綾高と繋がりファナの2撃目を片手で受け止め力任せに弾き飛ばす。


「くっ」


 ファナは吹き飛ばされてから苦い表情で空中で一回転して着地する。綾高を見ると繋がった腕の先の手を握ったり開いたりして感触を確かめていた。


「余裕のつもり‼」

「いいや。切り飛ばされた腕をその場で戻す行為は初めてでな。感覚の差異がないか確かめただけだ」


 至極冷静に答えると再び構え直す。


「今度はこちらの番だな」


 ファナの方を見てそう言うと綾高はファナに向かって跳躍。一歩。たったの一歩で眼前まで迫ると殺意の籠った一撃がファナを襲う。


「つぅ」


 拮抗は一瞬。膂力は人のそれをはるかに上回るためにファナは綾高の一撃に押し負ける。空中に放り出されると綾高は背後を取って宣言する。


「切る」


 その宣言でファナをためらいなく一刀両断する。手ごたえもないようにファナを縦に切り裂くとファナは紙を燃やすように燃え尽きた。それを見た綾高が気付いた瞬間に後ろから衝撃が襲う。それはファナの大振りによって腰から上と下に切り分けられた衝撃であった。

綾高は切り分けられた体のまま受け身も取れない状態で墜落すると少し遅れてファナがきれいに着地する。


「偽物か」


 土煙の中から即座に再生した体でなに事もなく立ちあがる。


「ええ。気付けなかったでしょ?」

「ああ。私が知っている既存の術式にはなかったな。領主の娘か?」


 そう言ってユメリアの方を見る綾高。ユメリアは警戒を解かずに言った。


「どうだろうな」

「ふ。そうだろうな。簡単に答えるわけないか。それならば」


 今度はユメリアの方に向かって攻撃を仕掛ける綾高。ユメリア自身は綾高の速度には対応できてない事は分かっているためユメリアをあっさりと切り捨てる。


「……手ごたえなし、か」


 ユメリアを切り裂くがファナの時とは違い全くと言いていいほど手ごたえのないといった表情をしていた。


「鬼神の残り。呪いの塊だとしても搦め手は効くみたいだな」


 ユメリアはそういうとまた先程と同じ場所に現れる。いつの間にかユメリアは薙刀を持っていた。


「いつだ? ……薙刀を投げたタイミングか。かぁぁぁぁぁぁ‼」


 そう言って綾高はユメリアが魔術を掛けたタイミングをあっさりと看破すると気迫と共に声を上げて体内の力を爆発させる。その圧力によってユメリアとファナは体勢を崩す。


「そこか」


 ユメリアたちが怯んだ一瞬で何かの起点を見つけたのか綾高はそこを切り裂く。空間はガラスのようにひび割れて少し離れた位置にいるユメリアたちは武器を構える。


「むぅ。少し仕込みには足りないか?」

「あと少しだけなら稼げるわ」

「させると思うか?」


 ユメリアとファナが話し合っている間に綾高はユメリアたちの間に割って入る。ファナ達はとっさに防御するが綾高自身の力の強さにバラバラに吹き飛ばされる。


「くっ‼」


 綾高にとって厄介な相手になりそうなファナの方へ最初に飛んでいく。今度はしっかりとダメージが入っているのかファナの表情には余裕がない。


「強さとしては中々だが、それまでだな」


 そう言って綾高はファナを切り捨てようとする。防御の上からでも切り伏せる気で放った一撃はファナに届くことはなかった。


「消えた?」


 盛大に空振りをすると綾高は目の前の光景を見る。目の前にはファナの姿はなく、反対側を見る。そこにはユメリアの手によって起こされているファナの姿があった。


「転移か?」

「ああ。もしもの時のためのな」

「そうなって来ると少し厄介か」


 綾高は構え直す。一方的に攻撃するための構えから特定の範囲に入ってきたらすべて切り伏せる迎撃の構えに。ユメリアは牽制するように少し離れた場所から炎をやり状にして放つ。が、綾高の間合いに入った瞬間に掻き消えた。


「どうするか」

「そうね。闇雲に言っても返り討ちに合うだけね」


 綾高とにらみ合いながらお互いに隙の探り合いのために両者の動きは停止する。時折、ユメリアがあらゆる覚悟から魔術を撃ちながら動きを止める。


「ファナ。我が隙を作る。行けるか?」

「ええ。任せなさい」


 それを見たユメリアは現状を打開する方法を思いついたのかファナにたずねる。それを聞いたファナは即座にうなずいた。


「分かった。これを」


 そう言ってユメリアは袖の方から盾と手のひらサイズの珠を取り出すとファナに渡す。


「当てるだけで大丈夫のはずだ。確実に当てろ」

「分かったわ」


 そう言ってユメリアは仕掛けていた仕掛けの半分を発動する。仕込まれた魔法陣はユメリアの魔力を呼び水にしてあらゆる属性の魔力弾が綾高を狙う。


「ほう」


 綾高は短くそう言うと躱すことを主体に動く。しかし、躱した先から全く別角度で当たる。


「なるほど」


 躱したはずの攻撃が別の角度から当たると現状の状態を理解する。綾高はその場を離れようとしていたがユメリアの手によって前後左右の感覚を狂わされているという事に気が付く。自分は右に言ったはずなのに実際には一歩踏み出している。今度は一歩踏み出すと後ろに下がっているという毎回の動作が意識したの動きとは違っていた。


 迷いの魔術。それがユメリアと真央が作りだした新しい魔術であった。仕掛けた相手の全ての動きを狂わせる魔術。それもランダムのため術者も次はどう動くのか分からないために絶対に最短距離を動くことはできない。


 意識を集中して動きと体の動きを合わせれば紺状態でもまともに動くことはできるが今は上空に仕掛けられた砲台の魔術でそれが出来ない様になっている。本来であれば綾高はそれ等の攻撃を無視して操っている本人たちを切り伏せることが出来るだろう。しかし、各方向から放たれる魔術に気を取られるために鬱陶しいこと請け負いであった。


「ええい‼」


 さすがに、集中しているところに水を差される状況にいら立ちを覚えているのか全方位に向けて刀を振っていく。しかし、それは思ったようにはいかず同じ場所に重なったりと撃ち漏らしが出る。


「今ね」


 そうして、混乱している中で綾高に対してファナは言った。ファナはユメリアに渡された黒い珠を綾高の腹に投げ当てると黒い珠は綾高を蝕み捕食するように取り込んだ。


「ふぅ。呆気なかったわね」


 手のひらサイズの珠に取り込まれたのを確認するとファナはそれを拾い上げてそう言った。


「それはそうだろう。真央と一緒に国を挙げて開発した封印珠だ。知らない相手に聞かない訳がない。それに呆気なくていいと思うぞ。一撃でもいいのを貰ったら我たちは確実に死んでいたから何事もなくていい」

「それもそうね」


 ファナの言葉にユメリアがそう反論するとそれにユメリアは同意する。人間の身で完全に人間を止めているように見えた綾高を相手にするのは確かにきつい。もしも、一撃でも貰っていれば死んでいた可能性は高く、長期戦に関しても不利なのは分かっている為でもある。そこからユメリアの言った封印珠を覗き込むとわずかに振動する。


「震えてるわ」

「何‼ 今すぐ放り投げろ‼」


 珠が振動している事に気が付いたファナがそう指摘するとユメリアは慌ててファナに指示を出した。ファナは指示の通りに放り投げると珠は割れ中から綾高が飛び出した。


「むぅ。もう少し弱っていないとダメか」

「危なかったわ」

「先程のは驚いた。が、もう好きにはさせん」


 ユメリアたちは距離が開いているために再び臨戦態勢を取るが綾高にとっては遅い。先程よりも速くなった綾高は一瞬すら許さない速度でユメリアたちの間に割って入ると両者の首を切るためにいつの間にか両腰に刀を差しており両手を使って抜刀する。その速度にユメリアたちは対応できない。


「終わりだ」


 無慈悲にして正確な一撃がユメリアたちに襲い掛かった。

 少し悩んでいるhaimretです。次回はもう一つの王道をする予定。もしかしたらそれで長くなるかも。書くペースが最近はかなりまちまちなのでこんな感じで遅くなったり、いつもより早くなったりとばらけるかもしれませんが許してください。


 また、指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者の動力源ととなりますのでよろしくお願いします

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