21話
何も考えず発狂したい……
「みんな。準備いいわね?」
真央が材料各種を受け取ってからぴったり24時間。真央が必要な物を完成させて馬皇たちに行きわたらせて準備に行かせた。それぞれが準備を終えて全員が共用スペースに集まると真央が立ち上がってそう言った。
「おう。いつでも行けるぜ」
馬皇が真面目に答える。
「我も問題ないぞ。それにしてもこのクッキーうまいな」
「私はいつでも問題なかったわ。本当?」
興味は真央の話よりもお茶受けに出されていたクッキーの方に目が言っているのかユメリアが食べながら馬皇の後に続く。ついでとばかりにファナにも進めるとファナもそれを手に取って食べると幸せそうな表情を作る。
「あ。それ私が用意したんです。馬皇さんたちもどうですか?」
そんなユメリアたちの表情を見て嬉しそうに由愛が馬皇たちに進める。
「いただきますわ。それとお父様ともっとスキンシップを取りたかったですわ」
「そう言って勝手にベッドに入って来るなって何回言ったら分かるんだ。由愛。貰うぞ。うまいな……」
「そうですか。うれしいです」
「あー。あー。聞こえませんわ」
サライラは少し不満なのか馬皇にそういうと馬皇もさすがにそこまでされるのは困るのか文句を言う。サライラはクッキーをささっと食べた後、馬皇のお説教を聞きたくないのか両耳を塞いで聞こえませんというポーズを取る。そんなサライラに馬皇はため息をついた。
「サライラの気持ちわかるわ。私もダーリンともう少し蜜月を楽しみたかったわ」
「ですわよね」
『ぴー』
「言ってくれるな……」
サライラは聞こえていないフリをしていただけのかアストリアの言葉に即座に反応する。そんな2人を見てスライムの方は気づかいするような同情するような鳴き声に馬皇も意味は分からないがさすがにニュアンスで分かったのか諦めた感じで言った。
そんな敵地に潜入するとは思えない空気にシリアスを全開にしていた真央は思わず声を荒げる。
「もう‼ これから本格的な戦いになるっていうのに自由すぎでしょ‼」
「あ、あはは……」
真央は不機嫌そうにしながらもしっかりと由愛のクッキーを手に持ってから言っていた。その様子に由愛から乾いた笑いがもれるが他の方に眼が行き過ぎているため気づいていない。さすがにおかんむりな真央の大声に馬皇たちも驚いて静かになるが、由愛の反応と同じくなんというか生ぬるい空気が蔓延する。それを見た真央は自分も馬皇たちと同じように手にクッキーを持って声を荒げたことに気が付くとそれを素腹約食べてコホンと軽く咳払いをするとなかったことにして話を戻す。
「あー。改めて聞くけど。みんな。準備はいいわね?」
真央の言葉に馬皇たちはそろってうなずく。真央は顔を赤くしたままこれからの事を説明するのと照れ隠しのために反対を向いて椅子に吊り下げた予め持ってきておいてカバンから紙を綺麗に丸めた物を取り出して広げる。
「それじゃあ。説明するわね。まず、今回の目的は敵対してきたWCAにお灸をすえるために相手にとって握られたくないの情報の獲得と馬皇の言っていた未来観測書の強奪もしくは破壊よ」
「殲滅じゃなくていいのか?」
真央の言葉に馬皇が物騒なことをたずねる。それに真央は頭を横に振る。
「出来るならしたいけどそれは多分無理ね。知ってると思うけど敵が油断ならな過ぎるわ。ああいうのは表面上は消しても裏でしぶとく生き残って反撃してくるタイプよ。徹底的に潰したうえで相手の心をへし折ってやらないとこっちが危険だわ」
「……こういうのもなんだが、2人とも過激だな」
「「そうか(しら)?」」
馬皇と真央の発言にユメリアは引きつった様子で言った。それに馬皇と真央は同時に答える。そのことに馬皇と真央がにらみ合っていがみ合おうとする少し前にユメリアは割り込みをかける。
「そ、それよりもそれは? 地図のように見えるんだが?」
「ええ。文字通り地図よ。WCAの本社」
「本社?」
ユメリアの機転で真央と馬皇が衝突してグダグダになる未来を回避できたことにユメリアはほっとしている間にファナがたずね真央が答える。その答えに頭をかしげた。
「馬皇さんたちが単身で攻め込んで行った場所って本社じゃなかったんですか?」
「最初はそうだと思ってたんだけどあまりにも皆月とかこいつは屋久島って言ってるけどもそういいのか分からない灰色のあいつとかの居場所が全く突きとめられないの。それで異世界にも普通に行き来していることを考えればあれらは隠れ蓑で本社は別だった方が可能性は高いわ」
「それならいったいどこに……。それにその地図のこともね」
真央はそこでいったん言葉を区切る。真央の発言にそれだとどこにいるのか探しようがないとファナがいった。それに真央は補足するように説明を再開する。
「それについてはケイスケの記憶を探っていたのよ。思ったよりも用心深くてケイスケの無意識とかからおぼろげながら情報が引き出せたのよ」
「無意識?」
「まぁ、人間もそうだけど生きものって忘れるものでしょ。覚えていようとしても時間が経てばおぼろげになってからそのこと自体を忘れる」
真央の言葉に全員がうなずく。それを見た真央は説明を続ける。
「でも、そう言った情報は消えたわけじゃなくて痕跡が残っていて忘れていたとしても記憶していた条件さえ見つければ思い出せることあるでしょ。それの応用よ」
その説明が理解できないのか馬皇たちが頭をかしげる。その様子を察したのか真央も頭を軽く掻いてから言った。
「つまり、忘れたとしても割と記憶ってのは残ってるから、がんばればその人が覚えてなくても1度でも目にしたことがあればそこから情報を得られるってことよ。ケイスケは記憶を入念に消されてたけど、それでもそんなに簡単には消えないものなの。そこから見つけられない会社の場所と見取り図を見てたから流用してるのよ」
「訳が分からん」
「理解が追い付かない。すまない」
真央はいつも以上に早口で説明するが馬皇たちの頭には残念ながら入ってこなかったのであった。結局の所、それ以上は美味く説明出来ないと思ったのか真央はあからさまに不機嫌そうな顔をして言った。
「……別に。無理に覚えなくてもいいわ。それよりもある程度はあたまにたたきこんでくれれば問題なしよ」
「わりぃな」
「別にいいわよ。それよりも説明を続けるわ。そんなこんなでケイスケから情報を得ているからこの地図は参考程度に覚えておいて。それで、場所なんだけど……」
「そもそも見つからない場所なんてあるのか?」
「ここに来る前も我たちをたばかった奴らが関係している可能性が高かったから我の方でも個人的に情報を仕入れていたが、未だに誰一人として見つけていないはずだぞ?」
「ええ。こことも、アマノハラとも、ましてやリーングランデとも違う世界よ」
『……』
真央の言葉に聞いていた全員が呆気に取られたような表情をした。その様子に真央は頭をかしげた。
「あら? おかしいわね?」
「そりゃ、いきなりそんな話を聞かされて理解できると思うか?」
「あんたは理解できてるじゃない」
「っは‼ いや‼ 待て‼ それはどういうことだ‼」
真央と馬皇がやり取りをしている間にユメリアが復活してたずねる。その慌て様に不思議そうな顔をしながらも真央は答えた。
「言葉通りよ。作り出して切り離された世界に会社を置いてるのよ。空間の座標を探すのに滅茶苦茶時間を取られたけど気づかれない距離まで行って確認したわ」
「そんなあっさり言うけれど、確か世界はいろんな世界が重なったり分岐したりで莫大な量があるから見つけられないって言ってなかったかしら?」
「よく覚えていたわね。地球とリーングランデを行き来するために座標を教えた時の事を覚えていたのね。嬉しいわ。だから、馬皇に任せて4日も動けなかったのよ」
「まさか……」
真央の言葉からファナがたずねる。
「ええ。さすがに痕跡になりそうなケイスケを媒介にした異世界転移の装置とケイスケの記憶の底に眠っていた情報からしらみつぶしに探したわ」
「それが4日って……」
ファナが絶句する。真央が2つの世界を行き来できることを知っていたため、ある時に世界観の転移の魔法について教えてもらっていた。完全に魔力が足りないため里帰りと言った感じで帰れるわけではないが、便利なためそれを習得している最中である。その際に教えられた座標の世界1つを探すという真央の課題をしたことがあった。ファナは教えられた座標1つであるなら簡単と思っていたが、入り込んでくる圧倒的な情報量の多さに大ダメージを受けたことがあったのでよく分かっている。そこまでの情報量ですら一瞬とは言っても体調を大きく崩してもおかしくない。それを4日である。ファナが絶句するのも無理はなかった。
「まぁそんな訳だから場所に着いては問題ないわ。それと作戦はないわよ」
「なら、何で集めたんだ?」
「それはこのためよ」
真央は立ちあがると同時に足で床を叩く。独特なリズムを刻み終えると何もない壁が自動で開く。
「こっちよ」
忍者屋敷のようなギミックに由愛は混乱するが、真央はそれを意に介さずにそのまま壁の奥へと向かう。馬皇はそのことについて走っていたのか疑問を持たずに着いて行く。困惑しながらも由愛たちはそれに着いて行くとそこにはSFのようなメカメカしいいわゆる宇宙戦艦の類のブリッジのような空間がそこにあった。
最近、体調が不調気味なhaimretです。強行突破するまでが書けなかった……。次回は隠れ家の場所が明らかにしたうえで突撃します。
いつも読んで下さりありがとうございます。指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者は大歓喜しますのでこれからもよろしくお願いします




