19話
今回は短め。
「はっ‼ 何だかとてつもない事言われた気がします」
「おう。起きたか?」
気絶した由愛が目を覚ますと馬皇が目の前にあった。
「う、馬皇さん」
由愛は混乱した。樹の上というのは変わらないが、由愛の頭は馬皇の膝の上に乗せられていたのである。そのことによりゆでだこのように顔を赤くする。
「いきなり倒れるから少し慌てたぞ?」
馬皇の心配そうな顔を見て由愛は心配させない様に慌てて答える。
「あ。はい。大丈夫です。それと……あの? 私、何か言ってました?」
「うなされてたみたいだが、特にはないな。それがどうかしたのか?」
「い、いえ何でもないです。それとご心配おかけしました」
「おう。もういいのか?」
馬皇の返答に変なことを言っていないに安堵する。そこからすぐに膝に頭を乗せたまま由愛は起き上がった。
「もう大丈夫です」
「そうか。立てるか?」
由愛は馬皇に礼を言った。馬皇も由愛の様子を見て安堵するとそのまま立ち上がると由愛に手を差し伸べる。それを由愛は取る。
「ありがとうございます」
「おう。引き上げるぞ?」
由愛が手を取ったのを確認すると馬皇はそのまま引き上げる。由愛はそれを利用して立ち上がった。
「何から何までありがとうございます」
「気にすんな。ところでなんで気絶したんだ?」
「あう。言わないとだめですか?」
「そりゃあ、何度も気絶されたら困るからな」
「うう……」
馬皇の問いに由愛は言い辛そうにする。が、馬皇の言葉も気遣っての事なので由愛はどう答えればいいか考える。その様子に馬皇は言った。
「そんなに言い辛いんなら別に言わなくてもいいんだぞ?」
「いいえ。それは問題ないんですけど、こう、あーんってし合う事が恥ずかしかった事を言うのに覚悟がいるだけで」
「お、おう。別に焦る必要はないが出来るだけ早めにな」
由愛の言葉にどう答えたらいいのか分からずにどういうのが問題ないか考えながら馬皇の質問に答える。馬皇にどう説明するのかに思考がよりすぎているため考えている事がそのまま口に出ているために馬皇は由愛の反応に困惑しながらもあえて聞かなかったことにする。
「よし。行けますよ。馬皇さん」
由愛はしばらく沈黙した後、ある程度の覚悟が出来たのか気合を入れた様子で馬皇の名前を呼んだ。
「お、おう。決まったのか?」
「はい。食べさせあいっこするための気合を入れました。今なら何でもできる気がします」
「そ、そうか」
由愛の言葉に更に困惑するがやる気に満ち溢れている由愛に水を差すのもあれだと判断したのか馬皇は由愛を抱える。
「あの? お姫様抱っこは恥ずかしいんですが……」
「そうはいってもこれが一番、羽の動きを邪魔せずに安定して飛べるから、少しの間だが我慢してくれ」
「うう。出来るだけ手早くやってしまいましょう」
由愛は恥ずかしそうに言うと馬皇が手短に答える。さすがに馬皇の言っている事が間違っていないと思ったのか由愛は体を震わせながら言った。それに答えるように馬皇は翼を広げて物理法則を無視して穏やかにゆっくりと浮かび上がる。由愛に負担を掛けない様に馬皇はゆっくりと移動すると由愛の手に届く範囲で静止する。
「由愛は赤い方の実を採ってくれ。俺はこっちだ」
「はい」
馬皇は空いた方の手で赤くて丸いリンゴのような実を指さすと由愛は指示通りにそれを採る。馬皇はもう一つの方であるいちじくに似た実を採る。
「よし。採れたな?」
由愛は落とさない様に実を大事そうに両手で持つ。それを見た馬皇は同じようにゆったりとした動作で先程いた樹の足場に戻って来る。馬皇が地に足をつけると実を潰さない様に持ったまま由愛を降ろす。
「よし。これで準備は整ったな。少し待ってろ」
由愛を降ろしてから馬皇はナイフを取り出すといちじくのような実を一口分だけ切り分ける。
「あ。私も貸してください」
「おう。よく切れるから気を付けろよ」
「はい。っ‼」
馬皇の真似をするために由愛はそういうと馬皇はナイフをカバンから新しく布を取り出してから拭く。拭ってから柄の方を由愛に差し出すと由愛は危なっかしい手つきで受け取ってからリンゴのような実を小さく切り分けようとする。その時に思っていた以上に切れ味が良かったのかナイフが入りすぎて指先をわずかに切った。
「言わんこっちゃない。手を出せ。沁みると思うが我慢してくれよ?」
「うぅ。すみません」
偶然ではあるが深く切りつけると言う大惨事にはならなかったものの指先からにじみ出る血を見ながら馬皇は鞄の中から水を取り出すと傷口に直接かける。液体が傷口に直接当たると由愛の指先に鋭い痛みを感じるがそれを我慢する。水をかけ終わると馬皇は手早く傷の周りだけをポケットティッシュを取り出して拭いてから絆創膏を由愛の指にまいた。
「これでよし。っと。今度は怪我するなよ」
「はっ。はい。ありがとうございます」
馬皇は優しい声でそういうとボーっとした様子で馬皇が処置を終えるまで見ていた由愛は慌てて我に返る。その際に声が裏返っていたが馬皇はそれに気にした様子はない。それを見た由愛は不機嫌そうな顔をする。
「どうかしたか?」
「何でもないです」
「何でもないって顔じゃないんだが?」
「何でもないですよ。それよりも食べさせあいっこするんですよね?」
「それはそうなんだが……」
「馬皇さん?」
正面を向きあいながらお互いに食べさせあうための実を準備した馬皇が今更ながらに微妙な表情をしていることに由愛は頭をかしげる。
「その……。あれだな。今更ながらに異性と食べさせあうって緊張するのな」
「……ふふ」
「どうした?」
馬皇は緊張しているのか少し顔を赤らめながらも真顔でそう答える。それがツボに入ったのか由愛は小さく笑い声が漏れた。その様子に馬皇は頭をかしげる。
「いえ。馬皇さんもかわいい所があるんだなって」
「俺をなんだと思ってるんだ? ってか、男にかわいいとか言うなよ」
「だって、あんなにたくさんの女の子と仲良くしているのに今更になって恥ずかしがるなんて少しおかしくて」
「……悪かったな」
由愛の言葉に馬皇はぶっきらぼうに答える。それでもそこまで不機嫌ではないのか顔を逸らすだけであった。それを見た由愛は再びくすりと笑うと切った実を差し出した。
「馬皇さん。あーん」
「……由愛も食え」
由愛は切った実を馬皇の口元に持って行くと馬皇も短くそう言って同じように由愛の口元に持って行く。そして、お互いに差し出した果実を口に入れた。
少し甘酸っぱい描写に苦戦していたhaimretです。長ければいいって訳ではないですが、慣れてないことに加えて考えて書いていたら短くなってしまった。
次回は少し飛んで帰還した所から。無事に帰還した馬皇と由愛に待っていたものは? という事でお楽しみに。その後は本格的に攻め込む予定です。
いつも読んで下さりありがとうございます。指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者は大歓喜&モチベーションアップしますのでこれからもよろしくお願いします




