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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第九章 魔王復活編
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17話

「えっと……。あれでしょうか? あの木の方から何か甘い匂いがします」

「おう。なら、その先だな」

「……思っていたよりも大きいです」

「そりゃあ、人類が生まれるよりもはるか昔から存在しているからな」


 馬皇が樹海の中の魔物を相手しながら由愛の案内の元、しばらく歩き続けた先には広い空間があった。そして、まるで他の樹が避けているようにその中心に巨大な樹がある。樹海の木々自体も桁違いに大きいが、目の前にある樹はそれすらかすんでしまうほどの大きさで由愛は圧倒されてしまう。


「ちなみにあれは2本の樹だからな」

「え? あ。本当だ。螺旋を描いている?」

「おう。2本の樹が螺旋状になって伸びてるんだ」

「そうなんですか。それにしても不思議ですね。こんなに大きいのにどうして誰も気が付かないでしょうか?」


 圧倒されていた由愛はふと思った事をたずねる。それに馬皇は答えた。


「それについては俺も詳しくは知らん。ただ、樹自体が存在する場所が俺たちが住んでる世界とは別にあって何かしらの条件で樹が招いているってのは聞いたことがある。詳しいのは真央に聞いた方が良いぞ。それと来るぞ」

「へ? きゃあああぁぁぁ‼」

「うおっ‼」


 馬皇の言葉に由愛から素っ頓狂な声が出ると同時に衝撃と轟音が馬皇たちを襲った。衝撃によって発生した突風に由愛が吹き飛ばされそうになっているのを見た馬皇は慌てて由愛の腕をつかむと自分の体の方に引き寄せる。引き飛ばされた勢いをうまく殺して馬皇は先程よりも樹から大きく離れた場所に丁寧に着地する。


「あ、ありがとうございます」

「無事でよかった。それにしてもこれは想定外の奴が出て来たな」


 馬皇に抱きかかえられた由愛は顔を赤くして礼を言うと馬皇は安堵の息を吐く。そして、突風の発生した場所を見る。土煙の中で見え辛いながらも黒い鱗を持った長い胴体が蠢いている。しばらくすると土煙が晴れた先に居たのは馬皇たちが最初に見た様な蛇であった。  その大きさは馬皇を丸呑みしようとした蛇とは比べ物にならない物であった。目の前の原初の樹に5周は出来るくらいの長さ。蛇ではあるが馬皇たちからすれば山と言っても遜色のない大きさの蛇がとぐろを巻いて馬皇たちを睨みつけていた。


「……あの? あれは?」

「あれはニーズヘッグ。ユグドラシルの根をかじるとされる蛇であり、人間に禁断の果実を唆す蛇の原型でもある。ただ、本来のニーズヘッグってのは少し違う。普段は樹の皮や根、実や蜜を食べる生物を狙って食べる魔物でな。原初の樹と共生している」

「あの。それってもしかしなくても私たちもその対象なんでしょうか?」


 馬皇の説明を聞いた由愛は蛇に睨まれたカエルと同じレベルで馬皇の元から離れられないどころか動くことが出来ない由愛は冷や汗をかきながら馬皇にたずねる。


「おう。よく分かったな。見つかったらそうなる」

「よく分かったな、じゃないですよ‼ あんなのいくらなんでも大きすぎますって‼私たちだけじゃ対処できませんって‼ 一旦、引いてから対策考えましょうよ‼」

「とは言ってもお相手さんは逃がす気はさらさらないようだが?」


 目の前の存在に由愛は引くことを馬皇に提案する。が、逃がす気はないと言わんばかりに馬皇たちを威嚇するように尾をこすり合わせて音を鳴らしてから尾を無造作に横に薙いだ。馬皇も跳んで回避しようとするが大きさが違いすぎるせいで全く高さが足りず尻尾のスイングに合わせて尻尾を蹴って衝撃を相殺しながらもはるか後方の上空に放り出される。


「っと。さすがに大きさが違いすぎて躱しきれねぇな。一応、衝撃緩和や風の抵抗や重力なんかの圧力が行かない様に魔法を使ったが由愛は大丈夫か?」

「……大丈夫じゃありませんよ。いきなり来た圧力とか、今も感じてる浮遊感で気絶したいです」

「そうか。軽減は出来てるみたいだな。真央から教わったのがうまく機能して良かった。それと一応言っておくと普段は人間くらいじゃ見向きもしないんだがな。何かで気が立ってるみたいだな」

「それならもう少し時間を空けてからでもいいんでは?」

「いいや。さすがにあれを相手にしてたら俺は無事でも由愛が死んじまう。だから、こうする。由愛はしっかりと俺の手を掴んでろよ?」

「ふぇ?」


 馬皇は由愛の答えを聞く前にそう言うと同時に光に包まれる。そのままニーズヘッグとほぼ変わらないくらいの大きさの竜に変身する。


『由愛は俺の手に乗れているか?』

「は、はい‼」


 竜に変身した状態で手のひらにいるはずの由愛に話しかける馬皇。馬皇が大きすぎてどれくらいの声で喋ればいいか分からず大声で答える。


『よし。これから樹の周辺を振り落されない様に飛ぶ。そのまま樹に手を突っ込むから早めに乗り移ってくれ。終わったら手早く気絶させてくるから安全な場所に避難して見ていてくれ』

「わ、分かりました」

『おう。少し無防備になっちまうのは避けたいからソラスを預けとくぞ。ソラス任せた』

『はい。マスター』

『もう。私も使ってくださいよ』

『今、お前は読んでねぇよ。というか、どうやってきたんだ。ここでお前を使ったらこの樹とか燃やしちまうだろうが』


 馬皇の言葉に由愛はうなずくと馬皇はソラスを呼んで由愛の元に預ける。それについてくる形でクラウが勝手に出てくる。


『もう。旦那様はつれないんですから。そんなの乙女の力でこう。はぁ‼ とすれば出て来れるじゃないですか』

『分かるか。はぁ。まぁいい。ソラスと由愛と一緒に居ろ。いいな。くれぐれも余計なことをするなよ‼』

『分かってますって。妹の前でバカなことをするお姉ちゃんではありませんよ』

『……ソラス。一応、こいつが悪さしない様に見張っておいてくれ』

『分かりました』

『旦那様酷い‼ 由愛さんもそう思いますよね?』

『由愛様。姉様の話は基本聞き流しても問題ありません。真面目な時は私がお教えしますので』

「あ、あはは……。きゃっ」


 おしゃべりな魔剣に由愛は困惑しながらも乾いた笑い声しか出すことが出来なかった。そんな乾いた笑い声をしている間に大きく揺れた。由愛はそれに対応しきれずに尻もちをつく。


『っと。悪いな。鱗を飛ばし攻撃してきやがった』

「大丈夫なんですか?」

『この程度だったら、大したことはねぇよ。ただ、俺にとっては小さい揺れでも小さい夢とかだと結構揺れるからな。少し強引だが準備はいいな?』

「はい。お願いします」

『任された』

「っ‼」


 由愛の言葉に馬皇はそう答えると先程と比べ物にならないくらいに揺れる。それでも立っていられないほどの揺れではなかった。


『今だ‼ 飛び移れ‼』


 それも一瞬の事ですぐに馬皇から合図が来る。指先が今の馬皇の腕と変わらないくらいの大きさの枝に引っ付けられると由愛は走る。走っている最中もニーズヘッグも攻撃の手を緩めずに鱗を飛ばして攻撃する。その揺れに何度もこけそうになりながら樹の方に何とか渡りきると馬皇は腕を樹から離す。由愛は荒くなった息をを整えるように深呼吸すると馬皇を見た。


「あれ? さっきよりも大きい?」


 由愛は目の前の光景に呆然とした様子で目をこすった。先ほどはニーズヘッグと馬皇は同じくらいであった。しかし、今見ているのは馬皇がニーズヘッグの首元を人間が蛇を捕まえるのと同じように腕でニーズヘッグを掴んでいる姿であった。


『何言ってるんですか? 旦那様の本来の大きさはここだと小さすぎるですよ?』

「え?」


 クラウが由愛の疑問に思っている事を答えるとさすがに理解が出来ないのか由愛は聞き返した。


『だから。旦那様自体が元々規格外の大きさすぎて抑えているんですよ。成長期という事もありますが、それでもある程度であれば好きな大きさになれるんです』

「ちなみに最大はどれくらいなんですか?」

『そうですね。最大だとこの星の半分くらいですかね?』

「半分……」


 目の前の大きさでも今自分の立っている樹の中心の太い部分と大して変わらないレベルであるのにさらに大きくなるということに呆然とした声で由愛は呟く。それ以前に地球の半分のサイズなど由愛には想像もできなかった。馬皇がニーズヘッグを掴んでいるのを見ていると最後の抵抗なのかニーズヘッグが尻尾から鱗を飛ばすと馬皇は空いた手でそれを弾く。その弾いた一部が由愛の方に飛んでいった。馬皇もさすがにそれに気が付いたのか焦って由愛たちのいる場所を見る。


『由愛さまは私が守ります。マスターは安心して仕事をなさってください』


 迫ってくる巨大な鱗に由愛は目を閉じるが、それがぶつかることはなかった。ゆっくりと眼を開けるとソラスが光の結界で鱗を受け止めていた姿が目に映った。空中で制止した鱗は勢いを失ってそのまま真下に落下していく。


『おー。ソラスちゃんも大きな物を受け止められるようになったんですね。それと旦那様の話に戻すんですが、そこまでになるとこの世界というか星そのものに影響が出ちゃうので調整する術を得たって言ってました。おっと。もう終わりですかね』


 クラウはソラスの行動に感心ながらも話を続けた。そうこうしている間に馬皇とニーズヘッグの方も決着が着いたのかクラウがそう言うと完全に伸びているニーズヘッグとそれを眺めている馬皇の姿があった。馬皇はそのまま翼を広げて由愛を置いた場所に小さくなりながら来ると由愛の前で人間の姿に戻る。


「ただいま」

「お帰りなさい。馬皇さん。大きいんですね」

「……まぁな。それと悪かったな」


 由愛のキラキラした目に馬皇は目を逸らす。


「何がですか?」

「鱗がそっちにいっただろ?」

「ソラスさんが守ってくれましたよ?」

「そうか。ソラス。ありがとうな。それと悪かったな。少し油断してた」

『もったいないお言葉。ありがとうございます』

「気にしてませんよ」


 馬皇の言葉にソラスと由愛はそう反応すると馬皇は答えた。


「おう。そういって貰えると助かる。ソラスもお疲れさん」

『はい。また』


 ソラスは馬皇のねぎらいの言葉を聞いてからそのまま姿を消す。その後に、馬皇はクラウの方を見る。


「それと相変わらずクラウは心配性だな。ソラスの事心配だったんだろ?」

『はて? 何のことでしょうか? 私は旦那様とソラスちゃんの事が大好きですが、そこまで過保護じゃありませんよ?』

「そうかよ。とりあえずまた何かあったら呼ぶわ」

『次こそは私を呼んでくださいよ』

「それは約束しかねる」

『そんなぁ』


 馬皇の言葉に残念そうにクラウは声を上げる。それを聞いた馬皇は苦笑すると言葉を続ける。


「まぁ、状況が合えば呼んでやるから」

『絶対ですよ』


 馬皇の言葉にクラウは念を押すとそのまま消えた。


「ふわぁ。やっぱり。こうやっていきなり現れたり消えたりすると魔法見たいです。ところでクラウさんとソラスさんってどこに行ったんですか?」

「ああ。あいつらは俺の精神世界の中に今は同居してるんだ」

「精神世界?」

「要は俺の心の中に鞘があるんだ」

「?」


 由愛の質問に馬皇は答えるがいまいち理解できないのか由愛は頭をかしげる。


「なに。今はいつでもどこでも俺と共にある状態だって分かってくれればいい。それよりも由愛。この先に実はありそうか?」

「あ。ちょっと待ってください。……ありますね。向こうの樹の中心部の方です」


 馬皇の言葉に本来の目的を思い出した由愛は辺りを探る。辺りには甘い匂いがそこらかしこに存在しているが、より強い匂いの方を指さす。


「そうか。なら行こうぜ」

「はい。こっちです」


 馬皇たちは目的の実のある場所まで歩いて行くのであった。

休みの日だから少し多めに書いてます。haimretです。そんな訳でこじつけみたいですが、色々と神話をちゃんぽんしています。



いつも読んで下さりありがとうございます。また、ブクマや評価して下さってものすごくうれしいです。指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者は大歓喜してますのでこれからもよろしくお願いします

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