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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第九章 魔王復活編
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16話

「そういえば由愛は本当に良かったのか?」

「何がですか?」


 馬皇たちと再会してから1日。長いような短いような真央の頼みごとから部屋訪問という夜を超えた日の事であった。


 現在、馬皇たちがいるのは地図にすら詳しい場所の乗っていない秘境と呼ばれるような樹海。日は出ている時間帯であるが、樹海は霧が立ち込めており遠くの方の視界を遮っている影響か仄かに薄暗く感じられる。


「いや、な。特に何を言う事もなく一緒にここまで来たからな。一応言っておくが、こっから先は結構険しいぞ? 樹海だけあって方位磁石とかは全く機能しないし、今の状態だと視界も確保できないから近くに来るまでは何が潜んでるのか分からん。今は真央が転移で戻せる範囲だが、どうにも魔力の流れとかが不規則らしいからここから先へ行ったら簡単には入れ替われないと思うぞ?」


 馬皇は確認のために由愛にたずねた。真央の魔法による転移によって目的の物の近くに跳んで馬皇は由愛に警告をする。そんな馬皇の様子に由愛は頭をかしげた。


「あれ? 私に真央さんが今回は絶対に行ってきてって言ってましたけど?」

「そうなのか? 初耳なんだが?」


 馬皇が真央から聞いていたのは2人で目的の物を取って来てという事であったがまさか由愛が来るとは微塵にも思っていなかったのである。馬皇が驚いて聞き返すのも無理もなかった。


「そうなんですか? 真央さんはこれについては私と馬皇さんが適任だって言っていました。お願いの内容は確か。この転移先の樹海のどこかにある樹に生える禁断の果実の2種類を取って来て欲しいって言っていました。それの後にその事は馬皇さんも知っているから詳しい話はそっちに聞きなさいという事を言われたんですけど……。それって本当に採っても大丈夫なんでしょうか?」

「……げっ。まじか。っち。だから俺と誰かもう1人ってことかよ」


 由愛が目的の物の名前を言うと馬皇は舌打ちをすると顔をしかめた。そんな様子の馬皇に由愛は不安に襲われる。


「えっと……。そんなに問題ある物なんですか?」

「あー。取ること自体は別に何も問題ねぇよ。見つけるのはかなり骨が折れる代物なんだがそれ自体にはそこまで脅威になることはない。ただ、あれを手に入れようと思ったらかなり面倒な手順を踏まなきゃとることが出来ないんだ。それは……」

「それは?」


 馬皇の言葉に緊張した様子で喉を鳴らす。馬皇は真剣な面持ちで答えた。


「仲のいい男女の2人ペアで行動しないとまず見つけられない。それこそカップルレベルで」

「そんなことでいいんですか? ってカップル?」


 馬皇が真剣な様子で答えるからどんな無理難題を言うかと思えば、そこまで大したことのない条件に由愛は頭をかしげるがカップルという言葉に何と言えばいいのか分からなくなる。


「ああ。その一緒に行動ってのが厄介でな。個人の部屋は別々でいいんだが、同じ施設ないし家で夜以上を過ごしている事。そこら辺の定義についてはあいつがしくじることはないだろうよ。それとこれが本命だが施設や家から出たらどちらかが視界に入る範囲を維持した状態で樹の実を探さないと見つけられない。とは言ってもずっと見てないといけない訳じゃないからそこまで難しく考える必要はないぞ」

「あの? それだったら余計に私じゃない方が良かったんじゃ? サライラさんとかユメリアさんとかでも……」


 馬皇から条件を聞いて、探す段階からものすごくめんどうな条件に由愛は弱気な発言をする。


「それだったら他の奴らでも良かったんだが、それに加えて女性の方は戦闘に参加できない」

「えぇ。共同で探すのにですか?」

「ああ。一定以上の強さの女性と探すと見つける事は出来ても触ることが出来ないとかいうふざけた性質だ。採取した後は別にそうでもないんだがな」

「……聞いているだけで頭が痛くなりそうです」


 由愛は馬皇の話を聞いてちんぷんかんぷんなのか頭を捻る。その様子に馬皇はどう説明したものかと少しの間考える。


「そうだな。余計に混乱しそうだが由来だけは知っていてもいいかもな。創世記って言っても分からんな。アダムとイブは分かるな」

「えっと。名前だけは」


 馬皇の言葉に由愛も名前だけは聞いたことがあるのかうなずく。その反応に馬皇は説明を続ける。


「さっき言った創世記と呼ばれる本に出てくる最初の人間だ。それらが最初に住んでいたと言われるエデンの園と呼ばれる場所にある生命の樹と知恵の樹。その2つの樹の実は食べてはいけない物だったが、その内の1つである知恵の樹の実を食べた事で追放されたという話に出てくる実のことだ。追放されることを失楽園っていうんだがそれは余計なことだな。それによって人間は必ず死ぬや、蛇に足がない事の理由になっているなどの話だがそれに出てくる実を真央は望んでいるみたいだな」

「それって……本当に採って行っていいんでしょうか?」


 馬皇の話を聞いて思っていた以上に危険な臭いのする内容に由愛は本当に探してもいい物なのか分からなくなる。


「まぁ、神話ではそんな話であるが、俺たちが取りに行くのは、その起源になった原初の樹の実だから厳密には別物だ。そうだな。世界に根付くことから別の世界だと世界樹とかユグドラシルとかとも言われていたな。そういえば」

「ほっ。良かった。そうなんですか。って‼ ものすごく重大なこと言いませんでしたか‼」


 馬皇の補足を聞いて由愛は安堵のため息をつく。間もなく由愛はツッコミを入れた。


「おう。とは言ってもそれらの原型ってだけだ。男女のペアで女性が探して男性はその間は女性を守る。そうしないと見つからないし手に入らないという変な果実だけどな」

「うむむ……。どうしてそうなったでしょう?」

「知らん。生まれた経緯もどうして男女じゃないと見つけることも採取することも出来ないのかなんてのは答えは出てないらしいぞ。真央がその本を読んでいた時に愚痴ってたからな」

「そうなんですか?」

「ああ。その性質のおかげでなかなか手に入らないから買おうと思ったらバカみたいな金額になるって真央の奴が騒いでたな。それにそれらの実自体もうまいって話だしな」

「あはは……」


 そんな馬皇の話を聞いて由愛は乾いたような笑いしか出てこない。しばらく、すると由愛もそれなりに覚悟が決まったのか、それを見た馬皇は由愛に手を差し出す。


「まぁ、そんな訳だからよろしく頼む。それとこれから一緒に探すわけだが他に聞くことはあるか?」

「ひゃ、ひゃい」


 そんな馬皇の手を取る由愛。由愛はいきなり手を握られて混乱するが、しばらく握り合ってから由愛は何かに気が付いたのか由愛は手を放す。


「どうした?」

「……馬皇さん。この辺りは強い魔物とかってでるんですか?」

「おう。もちろんだ。俺やサライラと同じ竜種とかもそれなりのが出てくるし、神話とかで出てくるような名前の魔物や怪物も出てくるぞ」

「あの。その。馬皇さん後ろです。後ろ」

「あん?」


 由愛は馬皇の後ろの方を指さす。言われるまま馬皇は後ろを向くとそこには人の身の丈を大きく上回る大蛇が口を開けて馬欧から見て正面の上側から馬皇を呑みこもうとしていた。


「勝手に喰おうとしてんじゃねぇぞ。おら」


 口の中に入れようとしていた蛇に対して落ち着いた様子で馬皇はあっさりと躱すと蛇の顎に向けてアッパーを繰り出す。地面にぶつかって動作が鈍い蛇の顎に馬皇の拳が当たると重力を無視した軌道でそのまま打ち上げられた。それを見た馬皇はため息をつくと由愛の方に向きなおす。


「ふぅ。と、まぁこんな感じで魔物とかでっかい蛇とかクマとかの生物も出てくる上にその禁断の樹の実が生っている樹と共生しているのか何かを見極めるように魔物とかを消しかけてくるくらいだから何も問題ない」

「は、はい。そうですね。改めてよろしくお願いしますね。馬皇さん」

「おう。よろしくな。由愛」


 改めてそう言ってからお互いにうなずき合うと馬皇と由愛は樹海の中へと向かっていくのであった。

いろいろと調べながら書いていますが諸説ありますという事を書いておくhaimretです。本編復帰1話目です。次回も2人のプチ冒険(?)をお楽しみに。


いつも読んで下さりありがとうございます。指摘とかブクマとか評価とか感想とかしてくださいますと作者は大歓喜しています。これからもよろしくお願いします

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