15.5話 その終
これで閑話はいったん終了です
共用スペースに戻って来てから由愛、ファナ、ユメリアが馬皇たちに聞こえない様に少し離れた所でやり取りをして勝者が決まったのか全員がうなずいた。その後、馬皇たちの前に戻って来てから由愛が代表して言った。
「それでは結果発表です」
「ヒューヒュー。どんどん。パフパフ」
「……何やってんだ?」
由愛の言葉に合わせてファナが感情の籠ってない様子でテキトウに声を出す。そして、どう反応すればいいのか分からないと言った様子で困惑している馬皇たちを見てファナは頭をかしげるとユメリアの方を見て言った。
「おかしいわね? こうしたら盛り上がるってユメリアが言っていたのに。どういうこと?」
「……っく。ほら。ある意味で、ふふ、盛り上がっただろ」
そんなファナを見ながら笑うのをかみ殺してユメリアは答える。しかし、噛み殺し切れていないのか所々で笑い声が漏れている。そんなユメリアを見てさすがにファナもからかわれたことに気が付く。
「騙したわね‼」
「ひー。もう駄目だ‼ ははははははは。まさかこんなの引っかかるとはだれも思わないだろ。はははははは。お腹痛い。ごほっごほっ」
ファナが気付くと同時に我慢が出来なくなったのか盛大に笑い始めるユメリア。ファナはそんなユメリアを捕まえようと後を追うがユメリアは笑いながらファナを躱す。逃げる側が笑いすぎて思考がまわっていない事と追う側が頭に血が上っているためか、同じところをぐるぐると回っている事に気が付かない。
が、さすがに笑いながら走るという行為自体にそもそも無理があったのか笑いすぎたせいか咳き込みユメリアの足が止まる。その隙を突いてファナはユメリアの服の後ろの襟をつかむ。
「捕まえた」
ファナはユメリアが見た事のないくらい屈託のない笑顔でそういうとユメリアは呼吸を整えてから振り向く。
「はぁ。はぁ。なんだ。その。悪かった。そのちょっとしたお茶目だって」
「だ・め」
ユメリアはこの後に起こりそうなことを想像して短く体を震わせると許しを乞うがファナは笑顔で拒否する。
「ほ、ほら。何も知らずにからかわれるファナも可愛いと思うぞ」
「そう。それならそんな可愛い娘と一緒に少しおはなししましょうね。幸せでしょ?」
「お、落ち着くんだ。ファナ」
「誰のせいで私が起こっているのかしらね? それと馬皇。少しの間、あなたの部屋のリング借りるわ」
ユメリアの言い訳に笑顔のまま顔を引きつらせるという器用なことをしてから馬皇に微笑みかける。
「お、おう。リングは自由に使ってくれていい」
「そう。ありがと。しばらく戻らないから由愛お願いね」
「わ、分かりました」
「た、たすけ……ぐぇ」
あまりにもいい笑顔で言ったファナに馬皇は動揺したまま答える。ファナは由愛にそれだけ伝えるとユメリアが何かを言う前にファナが後ろの首の襟を掴んで引きずって、そのまま馬皇の部屋の中へ行ってしまった。
「行っちゃいました……」
「だな」
「それはそれとして結果はどうなったの?」
呆然としながらファナ達を眺めていた由愛と馬皇。ファナ達が何をしに行ったのか別にどうでもいいのか真央が結果を催促する。催促に由愛はすることを思い出して話を切り出す。
「そうでした。ファナさんたちの事も気になりますがファナさんは気にしなくていいって言ってたのでそのまま続けます。それでは今回の優勝者は……」
「俺が勝つ」
「私は少しドキドキしてますわ」
「勝つのは私よ」
由愛は気を取り直してそう言うと優勝者の所で言葉を区切る。その間に馬皇たちが意気込みを語る。それを聞いた由愛は全員の手を取れるところに立つと迷う様に全員の腕の前をさまよわせてからサライラの手を挙げた。
「サライラさんです」
「何だと……」
「え……」
「私の勝ち。やりましたわ」
その結果にサライラは喜びで上げられなかった方の手も上げて喜びを表す。その様子とは裏腹に馬皇と真央はがっくりと膝をついた。
「今回の勝因は何だったの?」
膝をついたまま真央はたずねる。悔しさを含んだ真央の問いに由愛は答えた。
「えっと。今回は部屋の勝負ですが居心地のいいお部屋なんです」
「そうだな」
馬皇が由愛の言葉にうなずく。
「それなんですけど、まずは真央さん。真央さんのお部屋は実験室としては多分優秀なんだと思います」
「それはそうよ。私自身が満足するために作った部屋ですもの」
「そうですよね。ただ、正直に言わせてもらいますと怪しい実験と化してそうでちょっと怖かったです」
「あぁ。何か分かる気がするな」
「そう? そんなに変な実験はしていないのだけれど?」
由愛の言葉に馬皇は納得するがそんな反応に真央は頭をかしげる。
「防犯がしっかりしているのは私も安心できますし、ファナさんもユメリアさんもそこは高評価でした。ソファも気持ち良かったですし」
「ふふん。そうでしょう。そうでしょう」
「でも、ソファは部屋じゃありません。家具です。物はいいんですが、どうしてもあのソファが頭というか感触が残りすぎて他が思い出せないんです」
「くっ。まさかそんな弊害が‼ ぬかったわ」
「策士策に溺れるだな」
「馬皇さんもですよ。確かに寝室は部屋としては完成度が高いです。そういう部屋のコーディネートとかに詳しくない私でもきれいな部屋だなって思います」
「まぁ、そこらへんはこだわったからな」
「ですが、なんというか全体を見るともう部屋という域超えてますよね?」
「ぐっ。確かにいろいろと便利な部屋を組み合わせまくった都合上世界1つくらい余裕を持たせて作ったが……。ダメだったか」
「はい。もはや部屋という名だけで別物な気がしたとのことです。それとここからは主観の話になるんですが、私を含めてどちらも豪勢過ぎて馬皇さんや私の実家になれたファナさんやユメリアさんたちも落ち着かないと言うのが1番の理由だそうです」
「くっ。確かに」
「それで消去法でサライラさんのお部屋が1番になったという訳です。なぜか、ファナさんもユメリアさんもずっといるのは怖いのだけはマイナスだがと言ってましたが。どうしてでしょう?」
由愛はファナ達の言っていたことに頭をかしげる。馬皇と真央はファナ達がどうしてそんなことを言うのか理解していたが言ってしまうといつの間にか部屋に入り込んでいるような気がするため苦笑するだけにとどめていた。
「まぁ、今回の勝者はサライラだ。素直に祝福しようぜ。おめでとうサライラ」
「そうね。悔しいのはあんたとおなじだけど、あんたに負けたわけじゃないしね。おめでとう。サライラ」
「なんだと? 部屋って言い張るにはデカすぎただろうが、少なくともあそこまで酷くねぇよ。どうせ時間が経つと物があふれるんだろ?」
「言ってくれるわね。確かにそうだけどあんたの部屋に言われたくないわ。あんな広すぎる世界にぽつんとした施設群建てちゃって。無駄が多すぎよ」
呼吸をするようにケンカ腰になる馬皇と真央。互いに何か譲れない何かがあるのか全くひかずににらみ合う。
「明日もお互いにやることあるがやるか?」
「もちろんよ」
「なら移動しようぜ」
「ええ。いい場所知ってるわ。着いてきなさい」
「いいぜ。望むところだ」
そう言って馬皇と真央はそのまま玄関の方へ行ってしまう。そのまま外に出て行った馬皇と真央を見ながらサライラがつぶやいた。
「行ってしまいましたわ」
「結局、そんな勝負しなくてもいつものようにケンカしに行っちゃいましたね。ケンカするほど仲が良いと言う奴です」
「そうですわね。お父様と真央のいつも通りなやり取りを見てると何だかどうでも良くなってきますわね」
「そうですねぇ」
由愛の言葉に「「仲良くない‼」」と聞こえていないはずの馬皇たちが勝負をする前にツッコんだが、それは由愛とサライラの耳に届くはずもなくサライラの勝利という形で部屋の訪問兼どちらが居心地のいいかの勝負は幕を閉じるのであった。
評価して下さったりブクマが増えてすごくうれしいhaimretです。ありがとうございます。終わり方は悩みましたがサライラの勝利です。一般的な家庭の部屋に慣れると豪華な所って緊張しますよね。そんな感じで主観が入りまくりですがそんなものだと思って戴ければと思います。次回は本編。馬皇とヒロインの誰かが素材を採りに行きます。採取と言ってもある意味で一波乱ありますが。お楽しみに。
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