14話
「理由?」
「そういえば簡単には聞いていたけど詳しい話は聞いてなかったわね。未来観測書だっけ? 確かサライラの未来を書いた本」
「間違えてるぞ。未来観測誌だ。制限とかつけまくってサライラの未来しか見れないようにしているが、つくがな。それでも未来の情報があいつらには筒抜けになるから面倒なんだが、それ以上にいろいろな機能を付けたのが、色々とな」
馬皇の話を聞いていてたユメリアたちは馬皇が理由を知っていることに困惑すると真央もそう言えばそんな話があった事を思い出したのか聞き返すとあっさりした様子で答える。
「……未来観測誌?」
その話を聞いていたファナが頭をかしげた。ファナの言葉を聞いて話していなかったのか由愛たちに馬皇は眼でたずねると伝わったのか由愛たちは喋った。
「そういえばその話はしてませんでした。てっきりあの場にファナさんもいたとばかり……。そういえばいませんでしたね」
「すまんな。我も忘れていた」
「さすがにそれはおいそれと教えるわけにはいかないので黙ってましたわ」
「サライラの理由は分かったけれど由愛たちは酷いわ」
「すいませんでした」
「すまんな」
ファナは由愛とユメリアの言葉に不機嫌になる。由愛とユメリアは素直に謝る。
「許すわ。でも、さすがに信じがたい話ね。そんなもの存在するのかしら?」
あっさりと許すと未だに信じられないのかファナは思っている事を口にする。
「さすがに馬皇の言葉だけだと信じがたいのは分かっているわ。ぶっちゃけ私もそこまで信じてないし」
「お前ら酷くねぇか?」
「それはそうでしょ。いくらサライラの証言があるって言っても未来なんてあやふやな物あっさりと信じられる方がどうかしているわよ。それにこんな状況になってるのは行ってしまえばあんたの管理不足のせいになるでしょ?」
「うっ。それを言われると少し痛いな」
さすがに言い返せないのか馬皇は少し気まずげな表情を見せると真央が「しっかりしなさい」と言って睨む。
「だから、それくらいは許容しなさい。ファナには説明し直すけど、未来の事が書かれている本を相手が持っている。そこまではいいわね?」
「ええ。どうしてそんなのを知ってるとか、そのことを知っているのになぜ対処を考えないのかとかあるけどそこじゃないのよね?」
「ええ。馬皇と2人になってから未来観測誌については聞いたんだけどあれものすごく厄介なのよね。何よ。未来が変わったらそれに合わせて書き変わるとかそれは本当に本なの?」
「まぁな。一応、形は普通の本だ。学校の図書室とかにある大きな固い表紙の本と同じくらいのな。本来の用途は俺とイシュの娘のサライラが健やかに生きて行けるかを知るために作った術式だが、イシュと俺が世界と接続して引き出した代物だから対象は製作者である俺とイシュララ以外の未来なら未来について調べることが出来ちまう。さすがに幼いサライラには危ないから俺が生きている間は確実に手の出せない所にしまっていたんだが、何の因果か手段かは知らないが皆月が手に入れたようだ」
「そういえばなんで皆月が持ってるって分かるのよ?」
「それはそういう形でもしなくなったら分かるようにしてあるんだよ。記憶を思い出したときにも他の場所に行ったっていう合図は来てたんだが、思い出したのが最近だからな。それのおかげでジャミングされているから分かり辛いが皆月のいる位置がそれなりに把握できている。ついでに余談だが未来なんて不確かなものを観測するにあたって可能性の高い未来が浮き上がるようにしてある」
「……ごめんなさい。ちょっと理解できないわ」
「えっと。あれよ。あれ。 電子書籍とかネットの検索と同じ感じよ。必要な情報だけを調べて結果だけ表示するの。そのための端末を相手が持ってるからかなり高い確率で先手を取られちゃうって訳よ」
「……余計に訳が分からなくなったわ」
ファナががんばって馬皇の説明から想像しようとするがしっくりくる想像が出来ない。それに真央が補足をしようとするが、余計に訳がわからなくなる。
「まぁ、そこまで難しく考えなくてもそういうモノがあるくらいで良い。それでだ。本題はここからだ。奴らが持ってるはずの本なんだが、未来を見れるっていうのがメインなんだが、ついでとばかりに付けたおまけとやり方、それをするための場所が揃っていればもっとヤバい状況が生まれる」
「なにそれ。初耳なんだけど?」
馬皇が真剣な様子でそう答えると真央も初めて聞いたことのなのか眉間にしわを寄せた。
「わりぃな。封印はしてあるが。それでもこれは知られると俺らでも本気で危ないからな。一部は解放されたみたいだけどな。未来情報の閲覧権利だけだが」
「私たちでも危ないってどういう事よ? いえ。それよりもそうも言ってられない状況になってるのね?」
馬皇の言葉に真央は頭をかしげるが、すぐにその意図を理解すると馬皇を見る。馬皇もそれにゆっくりとうなずいた。
「ああ。奴らその方法を知ってるみたいでな。どうにもその封印の一部が解けた」
「封印って穏やかじゃないわね」
「もちろんだ。魔法使いじゃなくても世界そのものの情報を閲覧することが出来る。作った1人である俺が言うのもなんだが、その情報だけを書きかえればどんな生き物であっても簡単に支配出来ちまうものだからな。しかも、扱いに失敗すれば物理的に世界が消滅する可能性が出てくる」
「オマケが物騒すぎしょ‼ 一体何なのよ‼ それ‼」
馬皇と真央の会話を聞いていたファナが馬皇の言葉に思わず反応した。それにはユメリアも同意なのかうんうんとうなずく。
「本だ。世間一般でいう魔道書とかに近い」
「魔道書。それは中身が気になるわ」
「ただし、世界から与えられる情報だ。さすがに量が多すぎて一瞬中身を見ただけでほとんどの奴が発狂する。もしくは物理的に破裂する」
「うわぁ。なんでそんなもん残してるのよ。明らかに先頭に呪いのが付く本でしょ。それ」
魔道書という言葉にファナを超える速度と声を出して真央が反応すると馬皇は補足をする。その補足に真央はドン引きする。
「もちろん何度か焼いたがどうやってかは知らんが目の前で勝手に再生してな」
「本?」
もはや読ませる気ないだろと言わんばかりの本に真央は何と言ったらいいのか分からなくなる。少し時間が開いて落ち着いたのかファナも離しに参加する。
「そうね。さっきはごめんなさい。熱くなりすぎたわ。改めて聞くけど壊せないって言うのは分かったけれどどうするつもりなの?」
「それについてはしばらく保管だな。方法は考えてあるが実査に試そうと思ったらここら一帯が火の海だからな。終わったら実験できそうな世界を見つけてくる」
「スケールデカすぎだな」
「さすがお父様ですわ」
「なんで今言った……」
馬皇の答えにユメリアが呆れた様子で言うと何故かサライラが尊敬した様子の眼差しで言った。思っていた言葉とはかけ離れたサライラにユメリアは呆れた様子でたずねると何ってこともなく答えた。
「お義母様がこういう時はそう言えって言ってましたわ。お父様を喜ばせるって」
「お前の母は何を教えているんだ?」
「知らねぇよ。どうにも気に入ってるのは知ってるんだが、そういう時に限って身の危険感じて近づいてねぇ」
「そ、そうか」
サライラの言葉から始まって馬皇から帰ってきた答えにユメリアは何とも言い難い表情を作る。
「それよりも、だ。未来観測書の話に戻るぞ。大量の魔力とこの星の記憶を使って未来を見る他にも概念に干渉してこの世界のルールそのものを作る事が出来る。デメリットとしては一度使えばしばらくは使えなくなることと1回使うだけでも被害がバカにならないくらいか。まぁ、その一度をするのがめちゃくちゃ大変なんだが……」
「無茶苦茶だな」
ユメリアは馬皇のやらかしている事を思い出してそんな言葉しか出ない。世界そのものを支配できる時点で頭が痛くなってきたのかユメリアは大人しくなる。
「という事は馬皇さんをもっと長い時間まーちゃんに出来るんじゃ?」
「するなよ。絶対にするんじゃないぞ。フリじゃないからな」
「由愛。落ち着きなさい」
「え。あ。真央さん。さっきすごいこと聞いて色々と発想が止まらないんです」
由愛が物騒なこと口にすると馬皇は由愛の発想を慌てて止めに入る。それでも思考は止まっていないのか真央が由愛の肩を揺らした。
「そう。一応は真面目な話をしているからそれくらいでね」
「そうですね。分かりました」
物わかりが良いのか由愛はあっさりと真央の言葉に納得すると馬皇の方を見る。馬皇は由愛の発想に一瞬背筋が凍るような感覚に襲われるがすぐに持ち直すと軽く咳払いをすると話を続ける。
「ごほん。そんな訳でだな。細かい座標は真央に任せる形になるがWCAの本拠地と未来観測書の在り処が分かっているからこれからの事を話していきたんだが、いいか?」
馬皇の提案に全員がうなずいた。
説明回から抜け出せない。haimretです。今回までで未来観測誌の事前情報は一旦お終い。矛盾とか変なことになってるとかありそうで不安がありますが、次回は攻め込む前の作戦会議的な何かと小休止的な馬皇と真央のお部屋訪問回にする予定です。
定期
おかしいところ等あれば指摘して下さるとありがたいです。それといつも読んで下さりありがとうございます。読んで下さったり、ブクマとか評価したりしてくださいますとテンションが上がりますのでこれからもよろしくお願いします。




