6話
「ふむ。やはり意外といるものだな」
「すみません。真央さんが言うにはこの道が一番安全だそうです」
真央との会話の後、由愛たちは真央の言っていた結晶を探すために歩いていた。ファナが切り伏せた後、そう言うと由愛が申し訳なさそうにする。
「なに謝ることはない。そこそこ魔物と交えて鈍ってない確認できたから問題ないぞ」
「そうですわ。ファナのいう通りよ。それに私が通ってきた道よりは少ないですわ」
「そうなの?」
由愛の言葉にサライラがフォローする。気になったのかファナがたずねるとサライラが答えた。
「結構いろいろ魔物を倒してきましたが、敵意のなさそうなのとか明らかにヤバそうなのは隠れてやり過ごしましたわ。学校くらいの大きな火を吹くヒヨコとか、海を泳ぐ大きな蛇とかも見ましたわ。それと山と同じくらいのダンゴ虫とか? あ。そういえば変わった召喚士の少女に会いましたわ。少しお手伝いしましたわ」
「そ、そう。不思議な冒険をしたものね」
「……それはどうなのだ? というよりも人間がいたのか?」
サライラの要領を得ない言葉から出てくる明らかに人知を超えたレベルの魔物がこの狭い空間を探すだけで見つかるという事を聞いてファナは謝る。その隣でなぜそんなことになっているのかとユメリアは困惑してたずねるとサライラが答えた。
「ええ。不思議な感じの少女でしたわよ? その縁で少しお手伝いさせていただきましたわ」
「どうなってるんだ。この空間? とてもじゃないが信じられんな」
「むぅ。本当の事ですのに……」
困惑した後に信じられていない事を知るとサライラはむくれる。それにユメリアは苦笑すると話を続ける。
「それよりも由愛。こっちでいいのか?」
「あ。はい。もう少しだそうです。こっちです」
そう言ってたずねると由愛は案内する。そのまま魔物とも会うことなく抜けていくといきなり景色が変わる。
「ふわぁ。綺麗です」
「ふむ。暗い場所ばかりだと思っていたがこんな場所もあるのだな」
「そうですわね。これが本当にその景色であればですけどね」
「怖いこと言わないでくださいよ‼」
「もう‼ 気持ちは分かるけどサライラを見習って少しは警戒しなさいよ‼」
各々が景色の変わった空間を見てそれぞれが感想を言う。それは無理もなかった。澄んだ空気。穏やかさを象徴するような暖かな陽射し。そして、辺りには背の高い木はなく草原のようになっていて絵にかいたような雄大な景色がそこにあった。鬱蒼とした洞窟の面影などひとかけらもない。
そんな様子の由愛たちとは裏腹に警戒を呼び掛けるファナ。
「そうですか? こんなきれいな景色は初めてですよ? ね? ユメリアさん」
「ああ。そうだな。サライラはどう思う?」
「そうですわね。これは悪趣味ですわ。リンネ」
ファナの言葉に否定的なのか警戒心の欠片もない由愛とユメリア。そんな2人を見てサライラが前に出てリンネを構える。
「ぎゃああぁあぁぁ‼」
構えたリンネを大きく切り裂くように縦に振ると魔物の断末魔が聞こえた。同時に空間が裂ける。手ごたえを感じたサライラは顔をしかめて言った。
「やっぱりですの」
「……あれ? ひっ‼」
「……分からなかったわ」
「っく‼ なんだ‼ これは‼ なんでこんなのがきれいだと思ったのだ‼」
空間が裂けると同時に景色は一変した。その景色に由愛は怯えた様に声が漏れ木津事のなかったファナは呆然とする。ユメリアに至っては一変する光景に激昂した。
景色が再び変わると洞窟に戻ったようであった。ただし、見た光景は由愛たちが見ていた光景と比べれば地獄のようである。
魔物であろう肥え太ったような醜悪な浅黒い肉の塊が真っ二つになっていた。その奥には似た様な存在が鎮座しているが由愛たちには興味を全く示していない。その代わりそれぞれに干からびた様な人間がその肉塊と管のようなものでつながっていた。
「これが本来の姿でしてよ。ああやって人間を幻覚で呼び寄せて少しずつ捕食するんですわね」
サライラの言葉に冷や汗をかくユメリアたち。サライラがそのままにしていれば目の前の人間のなれの果てらしき物と同じ運命をたどっていたと来れば無理もなかった。
「これらは襲ってこないのか?」
そのまま呆然と眺めているだけであったがユメリアとファナは構える。が、一向に襲い掛かってこない相手にユメリアは頭をかしげた。
「あれは幻覚を見ている者しか狙いませんわ。どうやって見分けているのかは分かりませんが。それと、あの管には気を付けてくださいませ。一度あの管が刺さってしまえば強力な幻覚を見せる原液を注入されて死ぬまで永遠に夢を見ることになりますわ」
サライラの言葉に再び武器を構えるユメリア。今度は先程よりも警戒を落としている。
「そう言う事は先に行ってくれ。私たちがバカみたいだろ」
「油断していたようでしたから。心が引き締まりましたでしょ?」
ファナがそう言うとサライラは笑いながら答える。その答えに微妙な顔をするが納得したのかユメリアとファナはうなずくとサライラもそれを見てからうなずいた。
「それにしても幻覚なんてどうやって見せるんですか?」
由愛が根本的な部分をたずねる。そんな由愛の質問にサライラが答えた。
「この空気中に微量に混ぜ合わせてるんですわ」
「……あの。それだったら今の状態は不味いんじゃ?」
現状、その魔物の近くにずっといて息を吸っている由愛は顔が青ざめる。
「それについては安心していいですわ。最初の幻覚を見た後であれば抗体ができますわ。なので、急に濃度が濃くならない限りは大丈夫でしてよ」
「そうなんですか?」
「まぁ、それでもここでのんびりするのはあんまりお勧めしませんわ。ですので、早く行きましょう。由愛。案内を」
サライラの話を聞いてほっと息をつく由愛。質問に答えたサライラは次の場所に行くように促す。
「そうだな。頼む」
「そうね」
今の位置が真央たちと連絡を取り合っていた場所とは少しだけ遠いため由愛は集中を始める。しばらくして繋がったのか由愛は真央と会話する。
「そうですね。分かりました。真央さん次はどっちへ行けばいいですか? ……えっと? こっち? はい。分かりました。ここから見て左手の道にある一番左端の道を往くと良いらしいです。その先では荒野が出てくるそうです。ただ、入る時は気を付けて。だそうです」
まるで独り言をしているかのように見える由愛の光景であった。そんな由愛の伝言を聞いてから対策を立て始める。
「荒野という事は日差しを警戒した方が良いだろう。その上日が落ちると気温はグッと下がる。真央が言うくらいだとすると確実にきついだろうな」
「そうですわね。真央が念押しするという事はこの先は魔物が多い、もしくは厄介なのが多いという事でしょうね。由愛。続きは?」
「はい。えっと……。すいません。はい。分かりました」
「どうかしたの?」
「はい。真央さんが言うにはこの先は荒野なんですけど、魔物が暴れまわっているそうです」
「危険ね。それは回避できないの?」
「は、はい。個々以外の道がないそうです」
「分かったわ。って。もう踏み入れていたみたいね」
「……あの。魔物たち多すぎませんかね?」
そうこうしている内に由愛たちは荒野のど真ん中に足を踏み入れていた。どこから入ってきたのか分からなくなり辺りを見回すと大量の魔物が由愛たちをロックオンしたようであった。荒野のはずなのに地面は見えず魔物が蠢いているの暗闇には隙間がない。
「そうね。さすがにこの数を相手するには厳しいわね。でも、相手は逃がしてくれないそうよ
『うぉぉぉん‼』
その群れのリーダーと思わしき一体が遠吠えをするとそれがトリガーとなり由愛たちに殺到した。
更新しました。意識が朦朧としたまま書いているのでちゃんと書けているか不安ですが楽しんでもらえればと思います。
採取する前の大量の魔物たちに襲われた由愛たち。乱戦の中で必死に応戦するが……。次回「採取」お楽しみに。という訳で嘘かホントか次回予告。
いつもの事ですが、読んで下さりありがとうございます。ブクマとか評価とか感想などしてくださいますとテンションが上がり、狂喜乱舞しますのでよろしくお願いします。




