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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第八章 3年生と留学生と将来と
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25話

 由愛に手紙を渡した馬皇は由愛たちと別れた後、竜の姿になったアストリアの背に乗り馬皇と真央は森の入口付近に戻ってきた。


「ありがとうな」

「ありがと」

『うむ。やはり、感謝されるのは気分が良いな』


 アストリアは感謝され慣れていないのか竜の姿のまま頬を掻くと姿を変える。アストリアは竜人の姿を取ると周囲を警戒したまま馬皇は言った。


「しかし、良かったのか? 俺らと一緒にここまで来て。確かハンターズギルドとは話をつけてたんだろ?」

「だからよ。仲良くまでは出来ないからお互い不干渉という事にしてたのに破ってきたのはその約束してきた方。しかも、あの様子だったら結構上の立場よね?」

「ああ。この街の支部のトップだな」

「それだったらなおさら文句言いたくなるわ。私だって温厚ではあるけど限度はあるわよ」


 怒り気味にアストリアがそう言うと真央が同意する。


「そうね。確かにそれだったらアストリアじゃなくても文句言いたくなるわね。そろそろ出てきたら? バレバレよ」

「そうね。身を隠すんならもっと気を使わないと駄目よ。私に交渉してきたハンターの人」


 アストリアと話をしながらもずっと茂みを見る馬皇と真央。アストリアも気づいているのかそう言うと全員が気付いているを悟ってか大剣を背負った男が茂みから出てくる。


「それで? 何の用だ?」


 馬皇は問いかけた。男は馬皇の問いかけに警戒しながら答える。


「俺はそこの彼女に用があってきたんだ。お前たちこそ彼女と一緒にこんな場所で何をしている」

「へぇ。それは柳瀬宗次朗の事か?」


 馬皇の言葉に男が反応する。敵意を抑え込んでいるが、そこには警戒と共に怒りが混ざった怒気が漏れ出た。男は言った。


「彼はどうなった?」

「殺されたよ。狙撃で眉間を撃ち抜かれた」

「……そうか。それならばお前たちを捕縛する」


 男は馬皇の言葉を聞いてから大剣を背中に留めているホルダーのスナップボタンをはずして大剣を横から抜く。外れたスナップは磁石のように元の位置に戻ると同時に大剣を構えてから馬皇に振りかぶった。


「出来ると思ってんのか? 真央。手出すなよ。俺の獲物だ」

「分かってるわよ」


 馬皇がそう言うと男は目の前の出来事に驚愕する。少なくとも後ろにいる真央くらいの質量はある大剣に自身の渾身の力を込めた一撃を受け止められた姿を見て驚かない訳がない。馬皇に受け止められた大剣は馬皇が力を込めると鉄の塊がガラスのようにヒビを広げていき砕ける。


「嘘……だろ」

「それで終わりか? いきなり襲ってきた割には武器もしょぼいな」

「俺の武器はそれだけじゃない‼」


 馬皇の落胆した表情に男は激昂する。男は胸ポケットからタブレットを取り出すとそれを1粒飲む。


「くっ。行くぞ‼」


 飲んでからすぐに苦悶の表情をのぞかせるが、それも一瞬で馬皇に宣言する。その宣言の直後に急加速で男の姿が消え馬皇の背中に現れる。


「遅い」


 が、それも馬皇に靴を捕まれて止められる。そのことが許容できないのか男は喚く。


「離せ‼」

「仕掛けてきたのはそっちだろうが。もう一度聞くぞ。お前は何で俺たちに危害を加えようとしている? 奥で詠唱して遅延させてる魔法使いたちや不意打ちしようとすきを窺ってる奴らを含めてだ」


 馬皇は男に呆れながらそう言うと男は慌てて声を張り上げる。


「気づかれてる‼ やれ‼」


 男は馬皇の言葉に男が叫ぶと仲間が飛び出す。男は油断した隙に仕留めるつもりだった相手に完全に気付かれているという事は不意打ちの意味をなさないと判断する。男の仲間であろう軽装の男は馬皇が掴んでいる方の腕に渾身の力を込めてナイフで切りかかる。


「おっと。危ねぇな」


 馬皇はそれに対して大して気にした様子もなく、死角から迫って来ていたナイフを空いた方の手で受け止める。軽装の男が陽動でもある大きく振りかぶったナイフは馬皇の手に当たり服が切れるがその先は全く切れていない。


「ってぇな」

「化け物め」


 それでも衝撃がない訳ではないのか不意の衝撃に馬皇は少しだけ顔をしかめる。その隙に捕まれた男は腰に隠し持っていた何小さい玉を馬皇の上の方に投げ込む。馬皇はそれを眼で追うとそれが爆弾のようなものであることに気が付く。気が付いた時に男たちを見ると男たちは耳を塞ごうとしているのを見て、同じように馬皇も手を放してから防ごうとするが、閃光と耳をつんざくような爆発音が馬皇に襲い掛かる。


「ぐぁぁぁ」


 それはスタン・グレネードと呼ばれる物の一種であった。魔物用に作られたそれは一定以上の魔力を流してから一定時間が経つと、中に込められた魔法陣が暴走を始め強烈な光と共に、高く平衡感覚を奪うような強烈な音が襲い掛かる代物である。


 さすがにとっさには防ぎきれなかったのか、スタン・グレネードの強烈な光と音に馬皇は膝をつく。その隙に男たちは馬皇から離れると馬皇に向けて指をさす。


『クインテットライトニング‼』


それが合図だったのか魔法使いたちが5人組みを複数作り、明らかに1人に対して過剰な威力を含めた魔力で作りだした雷の束を馬皇に向けて放つ。


 雷は馬皇に当たるとそのまま爆発して雷が当たりにまき散らされた。後ろにいた真央たちと森の一帯を諸共に破壊し、その余波で辺りの視界が遮られる。


「やったか?」


 さすがにあの威力の攻撃に跡形も残らないだろうと思ったのか最初に仕掛けた男がそう呟く。それに異論はないのか周りにいた者たちもうなずく。


「バカ……な」


 しばらく黙って見つめていた煙が晴れ始めると土煙の先から歩く音が聞こえた。あの距離で外すという可能性はないはずだった。徐々に近づいてくる足音に観察していた者たちはざわめく。

男もあの魔法の威力に関しては目の前で見ている上にはずした様子はなかった。魔法使いたちは明らかに当てたはずなのに生きていると思われる状況が理解できないのかざわめきが強くなる。

やがて、しばらくすると煙の中からは馬皇が出てくる。雷のせいでほんの少しだけ焦げて所々から血を流してはいるが、致命傷には程遠い。


「……さすがに少し効いた」


 馬皇がそう言って前に一歩踏み出すとハンターたちが一歩後ずさる。さすがに最大火力と思われる一撃を喰らわせたのにその程度のダメージしか負わせていない。その事で恐怖が上回っていた。


「全くよ‼ 油断してくれちゃって‼ あれくらい1人で抑え込めるでしょうが‼ もう‼」

「知るかよ‼ その程度で死ぬことないって分かってんのにそんなことするかよ‼ あれでも微妙に痛いんだぞ‼」


 さらに、煙が晴れると真央が馬皇に文句を言った。結界らしきものを避けている煙に真央の結界を張っている範囲から後ろは完全に無傷。爆風どころか土埃すら舞い上がっていない。

男たちを横目に口げんかを始める馬皇たちであるが、あまりにも非現実的な光景に逃げる事すら忘れてハンターたちは呆然と立ち尽くす。


「いや。あれ直撃したら私死ぬんですけど?」


 馬皇たちの言葉に信じられないといった様子でアストリアは言った。アストリアも竜であるため耐久は低いとは言えないのだが、それでも今のを直撃すればアストリアは命を落とす。それだけは確信している。


「え? あれぐらい障壁を10層くらいで止められるでしょ? 少なくともあれぐらいなら私でも片手間で撃てるし、素手であれより威力出せる人いるわよ。あいつ以外にも」

「何それ? 怖い」


 あっさりと防げると発言をできる真央も真央だが、それ以上の威力の物理攻撃を素手で行える人間がいるという事にそれ以上の言葉が出てこない。


「俺たちは何と戦っているんだ……」

「「魔王だ(よ)」」


 馬皇たちのやり取りに少しだけ正気を取り戻したのか男がそう言うと馬皇と真央が答える。


「はは。なんだよそれ?」


 2人の答えが理解できないのか乾いた笑いしかでなかった。その反応に馬皇と真央は少し納得がいかないのか少し機嫌を損ねる。


「失礼ね。まぁ。あんた達にはここで眠ってもらうわね」


 真央はそう言うとこの場を魔法で監視している人間も魔法でハッキングして魔法を起動して全て眠らせる。


「あ。俺の獲物なのに」

「決着ついてたし、いつまでも気絶させないのが悪いのよ」

「結局、どうして襲ってきたのかとか分からず仕舞いじゃねぇ」

「うっ。それは悪かったわよ。あの魔法。意識がないと意味ないのは分かってるでしょ」

「質問しながら気絶させずにしてること考えたらそうじゃないのかって薄々は思ってたがそうだったけか?」

「あれ? そうだったっけ?」


 馬皇も真央もどうだったのか思い出せないのか2人して頭をかしげる。


「それよりもこうなったのは仕方ないんだからそろそろ離れない?」

「そうだな。ここに留まってる理由もないしな」

「ええ。アストリア。よろしく」


 見当違いなことをしている2人にアストリアがそう言うと馬皇たちもそのことについては割とどうでも良かったのかすぐに思考を切り替えてアストリアの提案に乗っかる。


「こちらこそよろしくね。後、私は戦力としては期待しないでね。さすがに今の見てそれと同じぐらいの事は出来ないから」

「そんなこと分かってるわ。私も陰陽術以外のこの世界の魔法には詳しくないからそこら辺をよろしく」

「おう。真央が言ってた通りそこら辺の事を頼む」

「……言った私もあれだけどここまで軽く期待されてない言葉聞いたら少しへこむわ」

「めんどくさい奴だな」


 アストリアの浮き沈みの激しい行動に馬皇がそう言うと、それが止めになったのかアストリアは膝をつく。


「わりぃ」

「ええ。ええ。気にしてないわ。少し飛ぶのが荒くなるけど許してね」

「思いっきり気にしているじゃないの。こいつもこいつだけど、アストリアもそろそろ許してあげなさい。一応彼も悪気はないとは思うわ」

「それはそれで酷いわよ……。はぁ。もういいわ。それよりもこれからどうするの? 多分だけど君たち明日には指名手配されるわよ?」


 馬皇が軽い調子でそう言うと半目になってアストリアが馬皇を睨む。そのやり取りに真央は呆れながらも話を戻そうと注意するとアストリアが話を戻す。


「別に気にしちゃねぇよ。このままその原因を作った大元叩きに行くんだから今更だろ?」

「私は少し気になるけど、いちいち気にしてたらキリがないわ。ハンターたちは適当に相手しながら拠点潰して恐怖に陥れないと」

「そっちの方が怖いわよ。それにしてもWCAだったわよね。一時、テレビをジャックしたことあったけど、その後の話は一切聞かないわね」

「それだけ敵の影響力が大きいってことよ。ヤバそうな情報はすべて消されてるんでしょうね。魔物とか現れ始めた原因の一端だけど記述とかの情報は全部ぼかしてたわ。それに、その後でもいろんな所で展開しているみたいだしね。ネットでやってたわ」


 真央はケイスケの件でその後を調べていた事を思い出して答える。その言葉に補足するように馬皇は言った。


「まぁ、その一部のネットの維持もWCAが受け持ってるみたいらしいけどな」

「それを聞くとそれを相手にするのはかなり骨が折れそうね」

「そんな事百も承知だ。だから、俺たちで動くんだろうが」

「ええ。基本は足を使った情報収集よ。その途中であなたの探してる人も探せるからそろそろ移動しましょう。それにあんたが喋りたがらない未来観測書の事も聞きたいし」

「ちっ。覚えていたか」

「誤魔化されないわよ。移動したら教えてよね」

「分かってる」

「絶対よ」


 真央は言質を取ったと言わんばかりに馬皇にうなずかせると黙っていたアストリアがたずねた。


「話は終わった? 変身したら背中に乗って」

「おう」

「ええ」


 馬皇と真央の言葉でアストリアは変身する。その後に馬皇たちはその背に乗ると馬皇がアストリアの正面に向かって指をさす。


「アストリア。その向きのまま飛んでくれ」

『分かったわ』


 馬皇たちは準備を終えるとアストリアに指示を出す。アストリアは翼を広げるとそのまま羽を羽ばたかせて夜の空に消えて行った。


 後日、馬皇たちは指名手配された。ハンターズギルド最高額:1億円を更新して、馬皇、真央、アストリアの3人で5億円として。

更新しました。次回エピローグの予定。由愛たちの視点です。次の章は馬皇たちがいない由愛たちとクラスメイトが行動を起こして色々ある予定です。馬皇が隠している件は次の章で明かされる? 予定です。


おかしいところ等あれば指摘して下さるとありがたいです。それといつも読んで下さりありがとうございます。読んで下さったり、ブクマとか評価したりしてくださいますとテンションが上がりますのでこれからもよろしくお願いします。

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