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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第八章 3年生と留学生と将来と
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19話

一気にシリアスへ

「はぁはぁ……。酷い目にあったわ」


 ひたすらにアストリアのハグを抵抗して無駄に終わった真央は息を整えてからそう言った。アストリアも満足したのかテンションの上がった様子でマンションの扉を開けた。


「こっちよ。とは言っても全部魔法頼りで普通の鍵なんてかかってないんだけどね」

「そう言えば何階に住んでるんだ?」

「最上階の4階よ。出入りは基本的に屋上からだけど今回はお客さんがいるからね。ちなみに私以外がここを開けると別のマンションに飛ばされるようになってるわ」

「いいわね。その転移ってランダムだけど指定もできるの?」

「うーん。それは試した事はあるけど、魔力込めた要石の許容量を超えちゃうから諦めたわ」

「それも後で見せてくれない?」

「いいわよ。どうせ予備はいくらでもあるし」


 そう言って真央とアストリアは移動しながら廊下を進んでいく。真っ暗な階段を上りながら今度は由愛がたずねた。


「それにしても暗いですね」

「そりゃね。私の部屋以外には電気は通してないし、窓もほとんどないから必然と暗くなるわね。それに屋上からすぐだからこっちはあまり使わないしね」

「そうなんですか?」

「貴女も変わってるわね。普通の人間だったら私を見たら怖がるか襲い掛かって来るかなのに」


 アストリアは由愛に言った。馬皇とサライラはどちらかというとアストリア寄り。真央とユメリアはそれなりに場数をくぐってきたといえる雰囲気を持っているのが分かるためそこまで気になることはなかった。


 しかし、由愛に関しては違う。由愛の雰囲気はおおよそ戦う者のそれではない。普通の人間の事も知っているアストリアにとってはある意味不思議な存在であった。


「それは馬皇さんたちで慣れてますので。最初見た時は怖かったですけど、それでも話をしてくれる相手にそれは失礼かなって」

「あぁ。なるほど。ここよ」


 由愛の言葉にアストリアは納得すると4階の階段のすぐ隣の部屋で止まった。


「ここが私の部屋よ」


 アストリアは自分の部屋を開けようとすると馬皇と真央がアストリアを静止した。その顔には警戒した様子で扉を見ている。


「どうかしたの?」

「何かいる」

「そうね。でも、なんでかしら?」


 馬皇と真央の言葉にアストリアは困惑する。アストリアは馬皇たちの言葉に警戒した様子で小声で話す。


「どういうこと? 私には何も感じないんだけど?」

「ああ。気配はないんだが、どうにもな」

「気のせいじゃないの?」

「ええ。私一人とかこいつ1人だったら気のせいで終わるんだけどどっちも感じたからね。本来いないはずだから気配なんてしないのが当たり前だし、魔法にも感知してないんだけど、中に何かいるわ」

「だったらなんで私の時には気が付かなかったの?」

「それは……。あれよ。結界作って警戒解いてただけよ」


 アストリアの言葉に真央はばつが悪そうに答える。その答えにアストリアが納得すると馬皇が話を進める。


「そろそろいいか? アストリアは防犯についてはそれなりに頑丈にしてたんだろ?」

「ええ。住処に余計なのは入れたくなかったから結構念入りに認識阻害とかかけているわ。それに魔物もそこまで馬鹿じゃないから私の縄張りだと知っているこの場所には基本近づかないわね」

「そうか。何が来てもいいように全員構えとけ。それとサライラは由愛を頼むぞ」

「任されましたわ」


 何が来てもいいように扉の正面から少しずれて真央とアストリア、馬皇とサライラと由愛といった組み合わせで左右に別れる。馬皇はそっと扉を開けると静かにその先を覗き込む。


「っ‼」


 覗き込んだ瞬間、部屋の奥から光と銃弾を連射する音が鳴り響いた。扉の先から大量の銃弾の雨が降りそそぎ、入口の扉をハチの巣にしていく。馬皇はすぐさま覗き込むのを止めてサライラと由愛を銃弾の当たらない位置まで避難させる。


 20秒ほど経つと連射用の弾を撃ち尽くしたのか、銃弾の雨が止む。馬皇はもう一度覗き込むと鎧のような物を身に纏い顔全体を覆うマスクをつけ武装した男たちは銃を構えていた。


「ふむ。ドラゴン狩りという事で邪魔が入らない様に準備をしてきたんだが、まさか子供が来ているとは。想定外だなぁ」


 男は面倒くさそうにため息を漏らす。男の声は馬皇にとって聞き覚えのあるものだった。確認のために真央と眼だけでやり取りをするとそれは間違ってないのか真央はうなずく。様子見のために馬皇だけが男たちの前に1人で出るとたずねた。


「柳瀬 宗次朗だっけか。どういうつもりだ?」


 馬皇が名前を言うと武装集団の中心で呟いた男が反応する。


「ほぅ。マスク越しに加えて一度しか会っていない相手のはずなのによく分かったね」

「誤魔化すかと思ったんだがずいぶん素直に喋るんだな」

「それは君がほぼ確信している時点で意味のない物だろう」

「それはそうだな。それで、だ。こんな場所に何の用だ?」

「それはこちらが聞きたいですね。そちらこそどのような目的でここまで来たのでしょうか? ここは一応立ち入り禁止区域のはずですが?」

「そうか。それは悪かったな。俺たちはまだガキだからそこら辺の話は知らないんだわ」

「そうですか。それならば学校側にもこういう危ない場所に行かない様に注意するように言っておきましょう」


 馬皇がそう言うと宗次朗が口を引きつらせてから答える。


「なら、俺らは売り場の殲滅の決行の日なのにそれを放り出して、暗躍しているハンターズギルドの支部長がいたって報告しておかないとな」

「あははははは‼」

「はっはっはっはっは‼」

「やれ」


 馬皇と宗次朗はお互いに言い合うと今度は大声で笑い合う。乾いた笑いが部屋を木霊すると宗次朗の声が一気に冷たいものに変わり発砲の指示を出す。取り巻きはいつの間にかリロードを終えていたのか先程と変わらない物量の銃弾の雨が再び降り注いだ。


 今度は正面に立っている馬皇に向けてである。外れた銃弾が壁を破壊していって土煙を上げる。さすがにこの量の銃弾を受ければ普通に考えて良くても致命傷。最悪ハチの巣である。馬皇に致命傷を与えたと感じられる手ごたえに宗次朗は機嫌を直すと先程よりも穏やかな顔で無残な死体となっているはずである馬皇を見るために宗次朗は発砲を止めるように指示を出す。


「ははは。大人を怒らせるのは良くない事でその報いがそれだよ。まぁ、聞いてはいないでしょうがどうしてこんな子供少数に組織は警戒しているのか理解できないですよ」

「そうだな。俺もお前に聞きたいことが出来たしな」

「なに‼」


 言葉が返ってくるとは思っていなかったのか宗次朗は馬皇の声を聞いて驚愕する。土煙の中から出てきたのは怪我どころか服にすら傷1つついていない馬皇が余裕のある表情で宗次朗を見る。


「どういうことだ‼」

「俺が分かる訳ないだろ‼」

「どうなってんだよ‼」

「落ち着きなさい‼」


 無傷の馬皇の登場に動揺を隠せないのか同じマスクの集団から荒げた声が聞こえる。混乱しているのは宗次朗も同じであるが周りの動揺具合の酷さに一周回って冷静なのか周りを落ち着かせるために一喝する。


「どういう手品ですか?」

「そんなの教えると思うか?」


 宗次朗がたずねると馬皇は不敵な笑みを浮かべて言い返す。その言葉に青筋を立てるが手に持っている銃を馬皇に向けて発砲する。


「ったく。あぶねぇな」


 馬皇はそう言いながら手でつかんだ銃弾を地面に捨てる。ここでようやく宗次朗は馬皇の足元を見ると同じように適当に落とされたのか銃弾が大量に落ちている事に気が付く。


「彼らが君に会ったら手を抜くなといった理由がわかったよ……。化け物だね君は」

「あん? 人間の方がよっぽど化け物だと思うぜ。魔物の遺伝子を人間と混ぜ合わせるとかな」


 宗次朗は今の出来事で馬皇がやった事を見てそうつぶやくと馬皇は言った。その言葉に宗次朗は動揺する。


「ほう。どうしてそんな考えを?」

「今ここにいるのは素材集めだろ? どこから仕入れてきたのかは知らないがあいつらの組織のどことも知れない誰かが作っていた薬の材料と同じではないが屋久島が関わっているとなると素材という意味で竜の素材が必要だって分かる。もしかしてハンターズギルドの支部長をしていたのもそのためか?」


 馬皇はそう言うとその答えが正しいのか宗次朗は何も答えない。


「失礼な奴だな。あれは屋久島さんの協力を得てから俺が作り上げた物。誰ともわからない凡人が作ったものでは断じてない」


 宗次朗は馬皇の言葉に先ほどまで気味が悪いほど薄っぺらい感じとは裏腹に激しいほどの怒りの籠った声で答えた。


「お? 話してくれるとはツイてるぜ」

「そこまで確信を持って喋ってる時点で何を言ってるんだか。改良と量産のためですよ。きたる世界の終わりから守るため、そして、その後の未来で覇権を得るためにこれは必要なものなんですよ」

「あれを作ったのはお前という事はあの組織の一員だな? ついでに言えば天狩って奴が使ってた強化スーツに似てる物を身に纏ってる時点でそうなんだろうって確信したがな」

「そうか。彼には注意しておくことにしよう。改めて自己紹介だ。ハンターズギルド支部長とWCA技術開研究部薬物課所長を兼任している柳瀬 宗次朗だよ。まぁ知られてしまったからには生かしてはおけないんだけどね」


 しばらく沈黙した後、宗次朗は先程の穏やかな声ではなく銃の発射を指示した瞬間と同じく無機質で冷たい声で名乗る。そこには感情らしきものはなく馬皇を狩るために構える。


「だが、それは悪手だぜ」

「な―」


 宗次朗が構えた瞬間。馬皇が言うとの同時に足元から衝撃が走る。何が起きたかも分からないまま宗次朗たちは意識を失うのであった。

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