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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第八章 3年生と留学生と将来と
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18話

おかしい。ここまでには室内に入っていろいろ起こるはずだったのにその前の段階で盛り上がってしまった。なので今回もノリと勢いをお楽しみください

 真央たちが休憩していた場所から10分程度。街の一部を森の緑が侵食した場所を歩き続けた先にアストリアの住処はあった。


「ここが私の別荘よ」

「マンションじゃん」

「いいでしょ。部屋がいっぱいあるわ」

「そりゃそうだろう。いろんな人が借りるんだからな」


 アストリアの言葉に真央がツッコミを入れる。自慢げにしているアストリアに対して馬皇も真央と同じようなことを言う。


 それは使われなくなった廃マンションであった。大きさは周りの木々よりも低いがそれでも木々自体が背の高い物が多いために森の外から見たとしても先端の部分しか見えないであろう。古くはないがあちこちの部屋の隙間から木々が顔を出していてその見た目も廃墟も同然である。それでも建物自体は頑丈なのか原形をとどめていない家屋に比べてしっかりと形が残っていた。


「この中の綺麗だった部屋をいくつかを私の住処にしてリフォームしたの。電気や水はさすがに魔法でどうにかしたけど人型だと結構住み心地いいのよ。これが」

「竜の姿の時はどうするんですの?」


 明らかに竜の姿で過ごすには向いていない建物を見てサライラがたずねる。若いサライラでも竜の姿であれば全長15m近くになる。目の前の建物も大きいのは大きいが中に入るスペースはない。


「その時はあの屋上になってるスペースで寝転がるの。今の所は私が乗っても壊れなかったから見た目以上に頑丈よ。とは言っても最近はずっと人型か竜人の姿でずっといるんだけどね」

「そうですか。それよりもお菓子は?」


 サライラの質問に対してもアストリアは丁寧に答える。その答えにサライラも満足したのか釣られたものを要求する。何が突き動かしているのか分からないがサライラの要求する姿勢にアストリアは苦笑する。


「そんなに慌てなくても中にあるわ」

「早く行きますわよ」

「ねぇねぇ。あの娘いつもあんな調子なの?」


 他のみんなを急かすサライラを見てアストリアは馬皇にたずねた。その質問に馬皇も少し困った様子で答える。


「いや。いつもはそこまでお菓子求めたりはしないんだが……」

「そうですか? あ」

「どうした? 由愛?」

「そういえば今日のお菓子あげてませんでした」


 由愛はそう言って鞄の中からクッキーを取り出す。密封のパックを取り出すとサライラが即反応して由愛の前にくる。


「クッキー‼」

「……サライラ」

「はっ‼ お、お父様。その。あの。これは……」


 見事につられたサライラの動きを見た馬皇は呆れた様子で見る。それを見られた事に気が付いたサライラが挙動不審になる。


「それで、だ。サライラ。いったいいつからどれくらいの頻度でもらっている?」

「が、学校では結構もらってますわ」


 馬皇が問いかけるとサライラは冷や汗をかきながら答える。もちろん答えになっていない。が、その様子からかなりの頻度でもらっているのが予想する。その答えに重苦しいため息を1つつくと由愛に言った。


「……はぁ。由愛。サライラがいつも迷惑かけて悪い。それとサライラにはいつも言ってただろ。貰ったんだったら礼くらいは言え」

「そうですわ‼ 由愛‼ いつもありがとう‼」

「そ、そんな‼ 私は気にしてませんよ‼ 好きでお菓子作ってますけど、最近しょう君は食べてくれないので、つい」

「由愛……。大好きですわぁぁぁ」

「きゃあぁぁぁ‼」

 馬皇が謝ると由愛は慌ててサライラをフォローする。サライラが由愛の名前をつぶやくと感極まってそのまま由愛に抱き着こうとする。抱き着こうとするサライラを見て馬皇は猫が子猫を首根っこを咥えるように捕まえる。


「すまんな。どうにも言い聞かせてるんだが落ち着きなくてな」

「私は本当に気にしてませんよ。サライラさんにはいつも元気をもらってますしおいしいと言ってくれるのは嬉しいですから」

「そうか。困ったことがあったら言えよ。サライラはもちろんだが俺も出来る事であればいつでも力になるぜ」

「……それなら。馬皇さんも味見してください。あーん」

「あ、あーん?」


 馬皇の言葉を聞いて唐突に由愛は顔を赤らめてサライラとは別に用意してあるクッキーを取り出してそう言うと馬皇は戸惑う。


「食べてください」

「お、おう」


 馬皇が戸惑っていると由愛が言った。それに馬皇はうなずくと由愛は差し出した手を馬皇に近づける。一方で馬皇も顔を近づけてクッキーを食べる。


「ど、どうですか?」

「……うまい」

「そうでしょう‼ そうでしょう‼」


 由愛は恐る恐る聞くと馬皇は素直に感想を述べる。馬皇の反応にサライラが我が事のように同意を求める。その横で嬉しそうに由愛が微笑む。


「ねぇねぇ。この甘酸っぱい青春はもう終わった?」

「ふあっ‼」


 アストリアは空気を呼んだのかしばらく黙っていたのか由愛と馬皇のやり取りを終えると同時に話しかける。不意打ち気味に話しかけられて由愛は体を震わせる。


「うーん。お姉さんもそんな感じの恋愛したいわぁ」

「これが女子力か……」

「ちょっと‼ その言い方じゃ私の女子力がゴミみたいじゃないの‼ 本当に大丈夫よね?」

「そ、そんなんじゃないですよ‼」


 羨ましそうにアストリアが答えると今まで黙っていたユメリアが驚愕した表情でなぜか打ちひしがれて口にする。その言葉に巻きこまれたアストリアはユメリアに対して否定するが由愛を見て少し自信なさ気な顔に変わる。


 由愛は慌ててアストリアの言葉を否定するが顔を真っ赤にして頭と手を激しく横に振っている。


「私もお父様大好きですわぁ‼」

「うおっ‼」


 いつまでも動こうとせずに話をしている馬皇たちを見て寂しくなったのか、由愛のやり取りが羨ましくなったのかサライラは馬皇の正面に飛び込んだ。


「最近の娘は大胆ねぇ。っは。つまりあの人にあった時にはあれだけの事をすれば振り向いてもらえるかも」

「あの。さすがに初対面の人にそれをするのは……」

「だよねぇ」


 サライラの行動にアストリアは考えていることを口にするが、さすがにそれは無理があると由愛がアストリアの発想を止める。アストリア自身もそれは無理であると思っていたのかすぐに自分の言った事をひっくり返す。


「あぁ‼ もう‼ いつになったら進むのよ‼」


 そんな感じで結局アストリアの部屋に入ることなくいつものやり取りを開始した馬皇たちに業を煮やした真央が声を荒げるがそれに反応した者は少ない。サライラは暴走しているのか馬皇とまだ戯れている。由愛は少し申し訳なさそうにするが、その表情を見た真央は少し困った顔をする。


「ごめんなさいね。ずっと仲間外れにして」


 真央の様子にアストリアは何かを勘違いしたのか真央の前まで来るとそのままハグを始めた。真央の顔は引き寄せられて豊満な胸元に埋められる。


「わぷ‼ 違うわよ‼ 魔術書‼ 私が気になるのはそこだけよ‼」


 いきなりの抱擁に真央は慌ててアストリアを引き剥がすとそう宣言する。その言葉が寂しさの裏返しだと思ったのかただ単にハグすることが気に入ったのかさらに真央の体を引き寄せる。


「わっ‼ ちょっ‼ 助け……‼」


 真央も必死に抵抗するがやはりというか馬皇やサライラと同種の竜。抵抗もむなしく真央はアストリアの胸元に固定される。それが苦しいのか真央は助けを求めてもがく。


「ま、真央さん‼」

「大丈夫だろ」

「あれくらいで死ぬことはありませんわ」


 真央の抵抗が弱くなり少し力が抜けたように抵抗が弱くなり始めるのを見て慌ててオロオロとどうしたらいいのか分からなくなる由愛。それに対してのんきな反応をする馬皇とサライラ。


「由愛よ」

「ユメリアさん?」


 そんな様子の馬皇たちと由愛を見てユメリアが言った。


「我も親戚に似た様な事をする知り合いがいるのだがこのまま下手に行っても真央から由愛にチェンジするだけだ。だから、しばらく待ってれば解決する」

「あれ? さっきまで動き回ってたのに全く動かなくなっちゃった?」

「真央さぁぁぁん‼」


 強く抱きしめられてぐったりと力尽きた真央とそれを見て困ったように言ったアストリアを見て由愛は慌てて真央の元へ走り出す。


「……大丈夫だよな?」


 由愛は真央の元へ駆け寄ると直ぐに激しく揺さぶる。それが致命傷になって真央の意識の復活が遅れているのだが、由愛とアストリアは気が付かない。普段であれば馬皇がそれとなくフォローするのだがサライラの相手で気づいていない。その光景を見て何とも言えなくなるユメリア。真央が復活するまでしばらく混沌とした状態が続くのであった。

 定例文みたいですがいつも読んで下さりありがとうございます。読んで下さったり、ブクマとか評価したりしてくださいますとテンションが上がりますのでこれからもよろしくお願いします。

 室内でも熱中症になるので暑さには注意して私の作品を含めてなろうの作品を楽しんでもらえればと思います

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