9話
いつもより少し早いですが更新です。ステータスの場面まで行けなかった……
馬皇たちは斡旋所から出ると隣の施設に移動した。入口の奥は広いロビーになっており、入り口すぐの左側には受付とらしき場所入口のガラス越しから見える。施設を入って手前の受付で京子が別の職員に何かの説明をすると鍵を渡した。それを京子が受け取ると馬皇たちの元へ戻って来る。
「見学の許可と話のできる場所を貸してもらえたのでそちらに移動しましょう。今回は靴を脱いでから来場者用のスリッパをお使いください。その後は直ぐそこの階段前に集まって下さい」
京子の指示に従って馬皇たちは訓練場の中へ入る。入ると春であるが空調が効いており、少し肌寒い。左手側には受付兼事務所になっているのかガラス越しに受付の職員がお辞儀をする。それを見た馬皇たちも受付の職員に倣ってお辞儀をした。
右手側には靴箱となっており、すぐそこには階段がある。馬皇たちはそれぞれが靴箱に靴を入れて来場者用のスリッパに履き替えると入り口すぐの階段前で京子と合流する。
「みなさん。揃いましたね。こちらになります」
京子の言葉に馬皇たちはうなずくと案内を再開する。左手にあった扉をくぐると講習の最中なのか奥の方で模擬戦を行っているハンターたちの気迫の入った声が反響する。
「ここが第3アリーナになります。言い忘れていましたが斡旋所の方を本部といいアリーナなどのある施設を訓練所と呼んでいます。各施設は本部で手続きを行ってからこちらの受付で場所と時間を申請。許可が出ると申請した施設を時間内であれば自由に使うことが出来ます」
「第3ってことは他にもここみたいな場所があるっていう事ですか?」
話の中で気になったのか由愛が質問する。
「はい。アリーナは3つあり、こちらの訓練場の方には2つ。斡旋所本部に1つあります。戦闘や非常時の救命行動、魔術の講習や模擬戦が主な使い道ですね。また、魔物の特徴や新種の植物、魔道書などの情報については図書館で調べることが出来ます」
「それはここに入らなくても利用できるのかしら?」
図書館という言葉を聞いて興味が沸いたのか真央がたずねる。それに対して京子は頭を下げた。
「申し訳ありませんがそれらの知識を得るにはハンターになっていただかないと見れないようになっています。一度は一般開放していたのですが、ハンターで無い人たちがそれで中途半端な知識を得て魔物に襲われたり、魔法の制御に失敗して大けがを負ったというのが複数あったので制限しているのが現状です」
「そうなの……」
京子の発言に真央は少し残念そうな顔をする。
「ですが、ハンターになれば基本無料開放しているので卒業してからでも見に来てください。ランクごとに読める本の範囲が決まっているのでそれなりの物を読みたければランクを上げていただくことになりますが」
「そうするわ。ただ、そういった権利があるってことはハンターにはどんな義務が存在するの?」
「ハンターには主に依頼の達成をお願いしているのは分かっているとは思います。それ等の依頼とは別に国の危機に関する場合は強制依頼という形で全てのランクの方に参加していただきます」
「それは危なくないの?」
京子の言葉に真央がたずねる。大きく戦力の違う人間同士が戦う場合に弱い方が足手まといになりやすい。そうなった場合に余計な命が失われる可能性を分かっているから聞いている真央の様子を察して京子は言った。
「そうですね。その場合は私たちがランクや適性ごとに依頼の割り振りを行うので基本的には無茶なことはさせません。低ランクの方は市民の避難誘導や後方の物資の配達など。高ランクの方には魔物の調査や討伐を行ってもらう形になりますよ」
「そう。それと人間同士の戦いについてはどうなの?」
「嫌な所を聞いてきますね。普通の中学生が人間同士の戦いについて聞いてきたのは初めてですよ」
「それほどでも。それで? どうなの?」
真央の質問に京子は苦笑する。真央がもう一度たずねると京子は答えた。
「仕事を妨害することや街を危険にさらすような存在に関しては戦うこともあるでしょうね。その場合に相手を殺した際にはその人物の詳細を聞いてから調査。そこから、相手に問題があった場合はハンターの防衛権で守ることが出来ます。しかし、ハンターの私情や犯罪性の高い殺人の場合は一般の方以上に重い罰が課せられます。長くなりましたが、結論を申しますと人間を殺したり捕まえたりする依頼は絶対にありません。それらは別の職業の仕事ですから」
「そう。それが聞けて良かったわ」
京子の言葉に嘘がないのが分かると真央はそう答える。しっかりと理解して落ち着いた様子の真央を見て京子は胸をなでおろす。
「本来はハンターになって最初の講習でいう事なんですよ。これ。しかも、本当にその場面に立ち会わないと拒否反応を示す方もいらっしゃいますから」
「でしょうね。それにどう考えても魔物に悪さをする人間がいない訳がないしね」
「そうなんですよね。密猟者が無茶をして本来人間のいない地域で過ごしていた強い魔物が人里に入ってくるなんてこともありましたから」
真央の言葉に思い当たる節があるのか京子は愚痴をこぼす。さすがにまだ中学生に聞かせる話ではないと思ったのか京子は話を戻す。
「っと。これは失礼しました。つまり、このアリーナでは訓練や模擬戦を行えます。ここで実力をつけてから難易度の高い依頼をこなして稼いでいる方もいらっしゃいます」
そう京子は話を締めくくると扉から先程の職員が入ってくる。
「お待たせしました」
「お疲れ様です」
何かしらの機械を持ってきた職員がそう言うと京子がねぎらう。京子が抱えられる程度の箱を置くとそのまま職員は去っていった。
「京子さん。それは?」
持ってきた箱を開けるとその中には機械が入っていた。京子は片手で持てるくらいの機械を箱から取り出す。
「これが件のステータス測定機です。これを使うことによって現状の能力を知ることが出来ます」
「結構小さいのね」
「さすがにこれは簡易用ですよ。本格的なのは本部にありますが、それは本格的にハンターになった時のお楽しみという事で」
そう言って京子は機械を起動する。
「これってどういう基準でステータスを判定しているの?」
機械を興味深そうに見ながら真央がたずねる。
「私も詳しいことは分からないのですが機械のこの部分に触れていただきますとその方の魔力や体の構造、筋肉量などを魔術でスキャンしてどの程度の能力があるか判定するそうですよ。それらの基準は世界中のハンターズギルドの測定に協力していただいたハンターや魔術師たち、調べてきた魔物の能力値をインプットしてあるのでそこから割り出せるそうです」
「へぇ」
「それとこれは簡易版なので調べることが出来るのは魔力と腕力などの総合的な力、耐久力、素早さと魔術などにおける基本属性が。分かる範囲では異能は適正があれば表示されます」
「簡易版でもいろいろあるのね」
「そうですね。本格なものとなれば潜在的な異能や魔術の細かい潜在属性も調べられます。それと言い忘れていましたが分からない異能や独自の魔術を持っている場合は???で表示されます。」
京子の答えに真央は納得すると今度は馬皇が質問する。
「基準とかあるのか?」
「そうですね。測定できる範囲で一番上がSです。その下はA~Gと順番になっています。先ほども言っていた通り成人男性の平均をC。中高生男子のかなり優れている子でD。平均的な中学生女子となりますとFくらいですかね。Gは小学生低学年よりも下くらいです」
「Sはどれくらいなんだ?」
「そうですね。基本的に一流のハンターの能力値はAです。Sはそれこそ規格外な数値でそれを叩きだしたのはこのギルドのトップと人間の手に負えない魔物くらいですね」
「そうなのか」
馬皇の言葉に京子はくすりと笑う。
「ふふ」
「どうかしたか?」
「いえ。強い部分の基準を聞くというのはやっぱり男の子なんだなと思いまして」
「そりゃ、気になるだろ? 普通」
「そうですね。ここに見学に来た男の子は基本的にそれを聞きますから」
「ふん。それよりもそろそろいいんじゃないのか?」
「そうですね。起動も確認できましたしいつでも行けますよ」
京子にからかわれているように感じたのか馬皇は少し不機嫌そうにそう答えると京子も察しているのかそれ以上は追求せずにいつでも行けると答えた。
「さて、誰から行くか」
順番について考えていなかった馬皇はどうするかたずねる。
「少なくとも私とあんたは最後でしょ」
「だな。ついでに俺の強さにびびれ」
「そっちこそ私の強さに恐れおののきなさい」
そんな感じで馬皇と真央がお互いに対抗心を燃やす。完全に順番決めの流れから外れた馬皇たちを眺めながらユメリアが順番について代表になって決めようとする。
「それなら最初は我かサライラか由愛となるが」
「それなら私が最初に行きたいです」
誰が先に行くか相談すると由愛が手を上げた。それに意外そうな顔をしてたずねるユメリア。
「いいのか?」
「馬皇さんたちの後で調べるのは気が引けるので」
「ああ。それは我も分かる気がするな」
「ですよね」
由愛の発言の意図が分からない馬皇と真央がいつの間にか話に戻ってきてから頭をかしげると、なんとなく理解出来るユメリアが由愛の言葉に納得する。
「だから、最初は由愛に。次は我で、その次はサライラ。最後に馬皇と真央がすればいいだろう」
「俺は別にいつでもいいがそれで異論はないな?」
馬皇のたずねるとそれに異論はないのか全員がうなずく。
「決まりましたか?」
「ああ」
「最初は私です」
京子の言葉に馬皇が答えると由愛が一歩前に出た。
次回こそはステータス回です。
一応書いておきますが基本22時から25時くらいの間でなるべく更新する予定です。また、ここまで読んでいただきありがとうございます。評価・ブクマ・感想は更新のモチベーションになりますのでしていただけると転げまわるほど喜びます。これからもよろしくお願いします。




