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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第八章 3年生と留学生と将来と
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2話

 ユメリアが留学してきた日の放課後。馬皇たちは屋上に来ていた。屋上にはいつものごとく馬皇たち以外には人影はなく午後の穏やかな陽射しとたまに吹くそよ風が居心地の良い空間が作りだされている。そんな屋上にユメリアに呼ばれて馬皇、真央、由愛、サライラの4人が集まっていた。


「それで何の用だ?」


 馬皇がユメリアに対して一番最初に口を開く。


「ふふふふふ。驚いただろ?」

「ああ。驚いた」


 ユメリアは自慢気な雰囲気で胸を張った。


「馬皇。お前を我の婿にするために――」

「はいはい。冗談はいいですからね」


 ユメリアの言葉を由愛がさえぎる。ユメリアは不満そうな顔をするが由愛の威圧するような笑顔にそれ以上は言えなくなり別の理由を答える。


「ひぅっ。由愛‼ 冗談だ‼ 冗談‼ だからその笑顔は止めてくれ‼」

「私は怒ってませんよ?」

「ううー。今回この学校に留学してきたのは我の安全のためだ」

「誰かに狙われてるのか?」


 ユメリアの言葉にさっきの状態とは打って変わって真剣な表情で馬皇がたずねる。真央や由愛もその話が気になるのか黙ってユメリアが答えるのを待つ。


「いや。暗殺を企てられてるという訳でないぞ。そうであったら留学先の家庭にも迷惑がかかるし、のんきに留学なぞするか‼」


 その言葉にとりあえず危険がないという事を感じ取って馬皇と真央は息をつく。


「という事は国内でごたごたでもあったの?」

「ああ。綾高を覚えているな。馬皇」

「あいつか」


 アマノハラの城の地下で戦った男の名前を思い出す。


「あれでも慕われていてな。その派閥が不穏な動きを見せていると占いに出た。調べたら案の定、また城でテロを起こそうと画策していたみたいでな。ある程度は捕縛したがまだ、残党がいるかもしれんとなって我の安全を取るために一旦ここに来たという訳だ。もちろん非公式だからな。表向きは別の人物がここに来るということになっておる」

「ああ。そういえば占いが国一番とか言ってたな」


 馬皇はアマノハラに戻る時に聞いた話を思い出すとユメリアは覚えてくれていたのが嬉しいのか嬉しそうに答える。


「そうだ。我の占いはすごいぞ。9割当たるからな」

「それはすごいですわね」

「はわぁ。すごいです」

「ふはははは。もっと褒めてくれていいんだぞ」


 サライラと由愛の称賛の言葉が嬉しいのか声を出して笑うユメリア。


「わー。すごいわね」

「おー。すごい。すごい」

「後半雑っすぎ‼」


 その後に続く真央と馬皇の棒読みな褒め言葉に一転してユメリアはツッコむ。そのやり取りが新鮮なのかユメリアは1人笑い始める。


「どうかしたか?」


 馬皇がたずねるとユメリアはひとしきり笑うと答えた。


「いや。同年代のやり取りがこんなに楽しいのは初めてでな」

「あー。王族相手にそんなことすれば普通に問題よね」


 ユメリアの言葉が何か琴線に触れたのか真央は納得する。


「分かってくれるか。父上が無くなってからは向こうの学校には籍を置いてはいるがいろいろあって行けていないからな。幼馴染はいても同年代の友人というのはいなかったからとても新鮮だぞ」

「そうよね。それで教育とかも全部家庭教師とか独学になるからより人と関わらないわよね」

「うんうん。分かるぞ。我も薙刀の使い方や魔術は幼いころから仕込まれたからな」

「でしょうね。それで、いろいろ身につけると同い年の子と話が合わなくって……」


 話がかみ合っていないがお互いに思う所があるのか真央とユメリアはお互いの言葉にうんうんとうなずき合って話が続いて行く。さすがにこのまま永遠と話を続けられたらかなわないと思ったのか馬皇が話に割り込む。


「あー。話はそれだけか?」

「おっと。忘れてた。えっと……。どこやったっけ?」


 馬皇の言葉にユメリアは何かを思い出したのかポケットから「これじゃない、これでもない……」と言いながら薙刀、ペンデュラム、タロット、筆箱、弁当箱、ハンカチ等々を取り出していく。


「いろいろ詰め込みすぎだろ……」


 余計なものが数多くポケットから出てくる光景に馬皇がつぶやくと見ていた真央たちも同意なのか頭を縦に振った。


「あった‼ あれ?」

「駄目です‼ ユメリアちゃん‼ 早く片付けて‼」

「うおっ‼」


 ユメリアが目的の物と思わしき物をポケットから引き出して掲げると一緒にピンク色の布地が一瞬顔を出す。ユメリアの動きに合わせて目的の物と一緒に出てくる。その瞬間の由愛の行動は早かった。慌てて馬皇目の前に立って視界を遮ってから目を覆うとユメリアに指示を出す。


「う、うむ‼」


 ユメリアも巻き込んで出来た物に気が付いて慌てて回収して元の場所に戻す。ユメリアが片付けると由愛は馬皇の視界を解放する。解放された先には顔を真っ赤にした女子たちだった。


「ふぅ。危なかったです」

「ピンクの布が見えた時に無茶苦茶慌ててたがどうかしたのか?」

「馬皇さんのえっち」

「なんでだ‼」


 結局見えなかった馬皇がそう言うと由愛ジト目で言った。由愛の言葉に理不尽を覚えて声を荒げる。


「お父様。さすがに弁護できませんわ」

「まじか。いったいなんだったんだ……」

「知らない方が幸せよ」

「お、おう。そうか」


 真央がそう締めくくると馬皇もさすがにこれ以上聞くのはマズイと思ったのか口を閉ざす。それ以上の追求はないと判断したのか由愛もそれ以上は掘り返さず、まだ顔は赤いが落ち着いてきたのかユメリアは取り出した物を馬皇たちに見せる。


「ま、まぁ、何であれこれを見せようと思っていたんだ。これだ。光源にいた執事からだ。馬皇に合うならこれを渡してくれって言ってくる前日に我の部屋で渡された」


 ユメリアの手に持っていたのは黒い玉だった。大きさはユメリアの掌と同程度。磨いた黒曜石を思わせる引き込まれるような黒に馬皇たちが映し出される。


「うわぁ。すごくきれいです」

「そうね。見た目もそうだけど何これ? 何かとてつもない力を感じると同時に何というかどこかで似た様なのを感じたことがあるんだけど?」


 純粋にきれいな物として見る由愛。それを見てから内包されている力にどこか覚えのあるのか頭をかしげる真央。


「お父様。あれは……」

「……間違いないだろうな。ってか、残ってたのか」


 一方で険しい顔をするサライラ。サライラが馬皇にたずねると馬皇はそれを肯定する。その答えを聞いてサライラは険しい顔から微妙な顔に変わる。その様子にユメリアが馬皇にたずねた。


「これが分かるのか?」

「ああ」

「何なんだ?」


 馬皇はユメリアの問いを肯定する。渡された物がなんなのか分かっていないユメリアはさらに質問に踏み込むと馬皇は答えた。


「これは竜玉。しかも、この感じは前世の俺の心臓部分だ」

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