プロローグ その1 馬皇
短いですが投稿です。
プロローグ真央編は明日になると思います。
夢を見ていた。
それは俺が魔王だったころの話だった。俺の城の離れ。仕事場の応接室から少し離れた隅にある小さな庭園で休憩のために竜の姿でひと眠りしていた時の事だ。
「おとうさま~」
疲れでうとうとしている俺の体に小さな衝撃が伝わる。目を開けて起き上がる目の前には体全体を使って体に抱き着く女の子が幸せそうにしている。
「どうした? ××××」
娘が抱き着いてきたようだ。頭のツノは俺に似て少し大きめなのが生えている。母親似なのか白い肌とストレートの金髪。やや鋭い目が俺に似ているらしいのだがそこは似ないほうがよかったのではと思わなくはない。まぁ、大人になれば美人になりそうなのでこれはこれでよかったのかもしれない。俺は自分の子供たちを愛していたことは確信を持って言える。
「えへへぇ。だきついただけ~」
そういえばいつも俺を見かけると抱き着いてくる娘だったな。
「そうか。なら少し待て」
娘を少し離れさせてからおれは竜人の姿を取った。大きさ的には一般的な人間の大人ぐらいになる。庭園の端にあるイスに座ると自分の膝を軽く叩く。彼女は嬉しそうに俺に走り寄った。
「わ~い」
「ここが好きなのだな。サ×××は」
これをするとサ××ラはいつも決まって俺の膝に座る。末っ子だからなのだろうか。まだ遠慮なく俺の近くに寄って来てくれる。上は既に遠慮してなかなか親子としてうまくいっていない。侍女や妻の教育のたまものだろうか?
しかし、たまには普通に親子としてのやり取りをしたい。そう思ったときによくこの子は寄ってくる。何かを察しているのだろうか?
「うん‼ 将来はお父様と結婚するの」
「そうか……。俺としてはおまえが幸せに暮らせることが一番の願いだよ」
サ×イラは可愛らしく顔を膨らませて怒った。
「もうっ‼ わたしはほんきなの~‼」
「はははっ‼ 俺は幸せ者だな」
俺が少し乱暴に頭をなでるとサライ×は体をこちらに向けて体をたたき出した。少しくすぐったい程度であるが娘はポカポカと言う表現が似合うようなパンチを胴体に浴びせる。
「おとうさまのバカ~‼」
油断して笑っていると怒って泣きそうになっているサライラのパンチが良い場所に入って暗転した。
「はっ‼」
馬皇は目を覚ました。腹には実際に痛みがあった。周りを見てみるとベッドから落ちたようだった。その下には愛読しているマンガ雑誌がありそれの角がちょうど腹のみぞおちに当たったようだった。夢の出来事を思い出し些細だけど心が温まるような出来事だったことは間違いない。心残りがあるとすれば夢が途中で終わったことだろう。
「なんだか、懐かしい夢を見たな」
ひとり呟いてから時間を見るといつもセットしているアラームの時間の1分前だ。馬皇は起き上がると一度伸びをしてからアラームの設定を切る。そしていつものように学校に行く準備をする。
今日はあいつとの戦いの日だ。胸の内には今日は勝つぞとやる気に満ち溢れる。あいつと出会って二か月目。現在の戦績は16戦7勝7敗2分。勝敗は五分だ。勝ちこさなければ。
家族と朝食をとり今日もいつも通りの時間に家を出る。そんないつもの日常。この時の俺はまさかあんなことが起こるなんてこの時は思ってもなかった。




