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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第七章 異世界召喚騒動
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40話

「……この奥か?」

「そうよ。この奥にこのダンジョンの元凶がいるわ」


 真央の案内で馬皇たちは魔物との遭遇は一切ないままに歩き続け、いかにもな扉の前に立っていた。その扉も人間が重なっているように絡み合ってできておりまだ生きているのか助けを求めるようにうめき声をあげて馬皇たちを見ている。それを無視して馬皇が口を開いた。


「開けるぞ」

「ええ」


 馬皇が扉を触ると生々しい音と共に扉を開いた。肉が擦れるせいなのかそれだけでも苦痛に満ちた声が馬皇たちの精神を削る。扉を開いた先は広い空間とつながっておりその先には30代ほどのボロボロの豪華だったであろう服を纏った男が玉座に座していた。


「あなたは……ガリオン王。どうしてあなたがそこに?」


 部屋の中に歩を進めるとファナが座っていた男を知っているのか口を開く。


「待っておったぞ。ファナリア姫。歓迎するぞ。我が居城に侵入してきた愚か者としてな」


 男、ガリオン王はファナに対してそう答えると同時に炎の槍を作りだして投げる。人間の視力を超えた速度で放たれた槍はファナに迫るがそれは届くことなく馬皇が横から殴り飛ばす。飛ばされた槍は壁に刺さり悲鳴が広がる。


「お前がここの主か?」

「お前は……。そうか。勇者召喚か。想定よりもはるかに早いが我を脅威と認識したか。だが、勇者など連れて来て何になる。我が召喚した異世界の者もすべて喰らった。我はこの力を使いこの世界を掌握するのだ‼ そのための糧となれ‼」


 馬皇を見て勘違いをしたガリオン王の姿が変わる。人間だったそれは巨大化していく。20mほどになると体は筋肉が肥大化していき横にも大きくなっていく。その後、全身は毛で覆われイノシシのような頭に変わる。手には禍々しい槍がいつの間にか握られており変身を終えるとその槍の石突きで地面を叩く。叩かれた地面は大きな揺れとなって馬皇たちを襲う。


「さぁ、異世界の力を手にした我は無敵。悲鳴と憎悪、恐怖を味わいながら死ぬがいい」


 ガリオン王は地面から槍を持ち上げるとそのまま馬皇たちを押しつぶそうと迫る。すさまじい勢いで振り降ろされるそれを馬皇は避ける動作も見せずに受け止めようとする。


「笑止。我の力に勝てるとでも?」

「はっ‼」


 ガリオン王の言葉に馬皇は鼻で短く笑うとそのまま手で受け止める。衝撃は地面を伝わり馬皇越しでも大きく揺れる。


「ぬぅ‼」


 が、それでも押しつぶすことはできなかった。つぶそうと勢いよく力を入れるが馬皇がそれを許さない。それが気に入らないのかさらに力を入れてそのまま潰そうとするが馬皇の気合の入った声で押し返した。押し返されるとバランスを崩して城の壁にぶつかった。完全には倒れてはいないがもたれ掛ったガリオン王の敵意はより強くなる。


「はっ。その程度か?」

「舐めるな‼」


 馬皇が煽るとキレたのか自身の足から自分と全く同じ形をした猪顔の化け物が増殖して襲い掛かってきた。


「うわっ‼ 気持ち悪っ‼」


 台所とかにいる黒い虫と同じくらいにわらわらと湧いてくる姿に思わず声を上げる真央。増え続ける相手に対して嫌悪感丸出しで氷と炎を織り交ぜた魔法で一掃。消されたその先から新しく同じ存在が突進してくる。


「キリがないわね。ファナ‼ サライラ‼」

「分かってるわ‼」

「行きますわよ‼」


 真央の合図と共にサライラが力任せに猪頭の魔物を上に飛ばす。


「それだけ時間があれば‼」


 ファナは剣を構えて落下している魔物たちを見据えると魔力を込めて同時に猪頭達の首を刎ねる。奇しくもそれは馬皇がクラウとソラスを同時に使う時と似ていた。


「小癪な‼ 我が居城よ‼ 広がれ‼ 眷属よ‼」


 苦戦すらしていない様子の馬皇たちにガリオン王は立ち上がり声を上げて両手を広げると城の中の天井と壁は広がる。壁や天井が見えなくなるほど大きくなると馬皇たちが城の外で見た様な狼や巨人が数千、今も増え続ける猪頭の魔物たちが馬皇たち完全に包囲する。


「これだけの数が居れば足りるだろうが、念には念だ。国民共よ鳴き喚いて我の糧となれ‼」


 そう言うと空間全体から大音量の悲鳴が響く。苦痛や恐怖、悲しみの声が馬皇たちを刺激する。


「くっ‼ うるさい‼」

「はははははは‼ 力がみなぎる‼」


 その声は馬皇たちにだけしか影響していないのか苦しそうなのは馬皇たちだけであった。動きを止める馬皇たちにガリオン王は声を上げると更に言った。


「そうら。土産だ」


 その言葉と共に元の世界の現代兵器であるマシンガンやロケットランチャーといった銃火器や戦車などが生み出される。それらの扱い方を知っているのか魔物たちは銃を手に持ち、戦車に乗り込んでいく。馬皇たちはそれを破壊しようと動くが残った猪頭たちが邪魔に入る。後ろの方で準備を終えたのか近代兵器を装備した魔物たちは馬皇の方へ銃身を向けた。


「撃てぇぇぇ‼」


 猪頭の魔物たちと交戦している最中に馬皇たちにガリオン王が合図すると未だに鳴き続けている悲鳴をかき消すほどの轟音と熱量のある爆風が生み出される。馬皇たちの邪魔をしていた魔物たちもお構いなしである。


「これで終わりだ‼」


 そんな一斉掃射に加えて、さらにガリオン王は指示を出す。上空にナパーム弾を作り出すと馬皇たちのいるであろう場所へ落としさらに追い打ちをかける。


「うわははははは。塵も残っておらんだろうが我の力を思い知ったか‼ これが真なる世界の王‼ いや‼ これから世界を征服する魔王となった我の力だ」


 上機嫌にガリオン王が大声を上げる。邪魔をしに来た勇者を圧倒的な力で確実に仕留めた事のによる昂揚感。感情の高ぶりがガリオン王の心を満たす。


「どれ一応は爆心地を確認しておかなければな。跡形も残ってはないだろうが焼きついた影位は残っているだろう。ぶぅ‼」


 高笑いを終えると一先ず落ち着いたのか大きく息を吸って土煙を吹き飛ばした。


「ば、バカな‼」


 土煙が晴れるとそこには黒い塊が丸くなっていた。守る様に丸くなっていたそれは土煙が晴れたのに気が付くと起き上がる。


 それは黒い竜。馬皇であった。起き上がると今のガリオン王と大差ない大きさ。その下にはサライラとファナ、小柄な魔族の少女。


 真央であった。真央は苛立った表情でガリオン王を見ていた。自身の翼で飛び上がりサライラがファナを抱えて黒竜である馬皇の頭の上に乗る。全員が馬皇に乗ると馬皇がブレスを放ち真央が魔法でガリオン王の眷属を全て薙ぎ払う。両者の一撃で全て薙ぎ払われガリオン王だけが残される。


「それで終わり?」

『それで終わりか?』


 馬皇と真央の逆鱗に触れたガリオン王にそう言い放った。

戦闘会は次回で終了。その次でエピローグの予定です。


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