32話
少し修正しました
あの日案内された騎士に回収された次の日の朝。復旧作業も今日で最後。全員で最後の確認を終えて各々が目的地に散っていく少し前。
ファナが洋介達の住んでいる屋敷を訪れた。急な来訪に委員長が慌てて応接室まで案内する。昨日の話を聞いていた委員長はファナに会いに行っていたメンバーを呼び出す。しばらくしてから馬皇たちが揃うと開口一番でこう言った。
「許可が取れたわ」
「速すぎだろ」
馬皇はファナの答えに思わずツッコミを入れる。1日しか経っていないはずなのにもう許可を取ったと言うファナの発言に一応話を聞いていた委員長も含めて馬皇たちは唖然とするしかない。その答えに委員長は口元を引きつりながらファナに聞いた。
「そ、そうなんですか。でも、この国の事を考えたら王族がそんな簡単に異世界に渡るとか言って大丈夫なんですか?」
「それは問題ありませんわ」
「ちなみにどういう理由で説得したんですか?」
「嫁に入るとだけ言ったら涙を飲んで送り出してくれましたよ?」
「はい?」
顔を赤らめて答えるファナに思わず聞き返す委員長。ファナの視線の先は馬皇であり委員長は馬皇を見るというよりも睨む。
「俺は何も言ってないぞ」
「お父様はあげませんわよ?」
馬皇は慌てて頭を左右に振った。そんな中でファナと馬皇の間にサライラが入って勝手に話を進める。
「独り占めはしないわ。共有しましょ。それに私は別に1番じゃなくて構いませんよ」
「それならいいですわ」
「おい。勝手に話を進めんな。違うからな‼」
サライラとファナの発言にどんどん委員長の視線が冷たくなる。それに対して馬皇はもう一度否定するが説得力がないのか効果はなかった。その状態のまま洋介の方へ説明を求めるように視線を移すと機敏な動きで敬礼しながら洋介が答える。
「ファナ様が勝手に勝負を挑んで負けたのが原因であります。委員長」
「なるほど。そう言う事」
委員長は洋介の事でファナが何でそんな事を言い出したのかを納得する。同時に馬皇に対する視線が冷たい物から憐れんだような視線に変わる。
この国に限らず近隣諸国でもファナが自分に勝った者の嫁になるとファナ自身が公言している。その際には王族で無くなる事も踏まえてである。それを父親である国王はいろいろあって了承したものであるがそれは余談である。そこら辺の事情を知っている委員長としては馬皇がやらかした事は例え知っていなくても国王の耳には入っているのは確実。ならばなる様にしかならない。
「それで女たらしの負毛君は姫様に勝ったからその約束で着いて行くと」
「ええ」
「俺は女たらしじゃねぇ」
ファナは肯定し馬皇は女たらしである事を否定する。しかし、由愛やサライラに加えてファナ、どちらかよく分からない真央と現状分かるだけでも4人。そんな馬皇に説得力はないのは当然である。全員が無視しているが、横で視線で人が殺せたらと眼で物語ってるのがはっきりと分かる嫉妬の視線を小太郎が送っているのがいい例である。
「まるで説得力がないわね」
「なんでだよ‼」
「自分の胸でも聞いてなさい。それよりも姫様? 姫様はこの国を抜けたら問題なのでは? さすがにそう言った問題を抱えたまま連れて行くのは私たちも了承できないというか……」
委員長はファナが着いてくることに関して問題になりそうなところをたずねる。
「それについては問題ないわ。私自身この国の王位継承権は低いわ。それにお兄様たちなら問題なく反映させることが出来る。それに恋愛については初代勇者様とその時代の王女様のおかげで自由にしていいと国が法律で決めているの。無理矢理は犯罪だけどね」
「その話初めて聞いたんだけど?」
「あら? でも、そう言う訳だけだから恋愛については身分差なんて関係ないわ。勇者リョーマ様の物語と同じで最初の異世界の勇者様の表向きな身分は平民と同じだったらしいわ。そのころから王女様は勇者様に惚れていて口説き落としたって言うのが定説よ。国のためにいろんな伝説を残して装の上で魔王を倒した後に王女様は別の国の王族に嫁ぐはずだったんだけど、結婚式直前で勇者様がその場に現れて告白の答えを言いに来てから、そのまま駆け落ちしたっていうのが有名な物語の最後よ。しかも、それが世間に広まって恋愛位自由にさせてやりたいという国民全員からの抗議があったらしくて。居なくなった後にそれが認められてつくられたのが法律・勇者法の始まりなの。いつでも帰って来てもいいようにってね。国民全員から愛されていたことも含めてロマンチックよね。私も好きな人に対しては同じように攻めていきたいわ」
「確かに好きな人に対して奥手になるよりも私もガンガンアピールしていきたいわね」
「でしょ?」
ファナが馬皇を見ながら初代勇者の物語の最後の方の事を早口で言うと少しわかる部分があるのか委員長は同意する。その横で馬皇はその話に頭を抱える。王女の方が口説くという話に対してファナを重ねているとこに関してかか自分の両親の微妙に知りたくなかった物語に関してかのどちらかであるか、もしくは両方なのかはご想像にお任せするとして。
「そんな訳だから何も問題ないわ。それに同じように好きな人のために異世界に渡ると言っている子とも仲良くなったし」
「それは?」
ファナはそう締めくくると更に爆弾発言をした。まさかファナと同じように世界を渡る気でいる人が別にいた事を初めて知った委員長はたずねる。
「ここに来る途中で道をたずねるときに知り合ったんだけどアーシャって子よ。口数は少ないけどいい子だったわ。それに一途でね。ここに来るまでで異世界人の恋人が出来た話を聞いていた私も思わず応援したくなっちゃったわ」
その発言に馬皇の次は幸太郎が頭を抱える。その様子で察したのか委員長はたずねる。
「佐藤君はその子をどうするつもりだったの?」
「……。本人がどうするかが一番大事だったから1度聞いた。人生を左右することだから良く考えて答えてくれと言った。だから、答えを聞いてから言うつもりだった」
「それでまだ答えを聞いてなかったのに姫様が答えちゃったと」
「ああ」
幸太郎はしばらく沈黙するとしようとしていたことを答える。その答えに委員長は真剣な眼でもう1度たずねる。
「それは責任を取るってこと? 人を養うというのは簡単じゃないわよ? それでも?」
「もちろん。分かってる。養うためには金もかかるだろうし異世界を渡るとしたら戸籍もない。いろいろと問題だらけかもしれないが惚れた女のためだったら何でもする」
中学生らしくない両者の発言。どちらも力強く答える。長い時間を見つめ合うと委員長はため息を吐いた。
「はぁ。妬けるわね。アーシャ入ってきていいわよ」
「コウ」
「なっ‼ アーシャ‼」
委員長の言葉と同時に扉は開く。幸太郎が振り向くとそこにはアーシャがいた。アーシャの表情はそこまで変わっていないため分かり辛いが感極まったのか幸太郎の後ろへ突撃。そのまま抱き着く。幸太郎は訳が分からないと言った様子でアーシャと委員長を交互に見る。
「あなたがどこまで本気か試しただけよ。知らないフリをしてね。彼女は鉄先生と私にあっちの世界の事を訪ねに来たわ。その時に彼女の覚悟を聞いて鉄先生が戸籍については何とかすると言っていたわ。その代わりに佐藤君の覚悟がどうなのか調べてくれって言われたのよ」
「コウ。大好き」
ニヤリと笑みを浮かべる委員長。アーシャは幸太郎を抱きしめる力が強くなる。
「アーシャ……。俺もだ」
幸太郎はアーシャの手を掴むと抱き着きを剥がす。それにアーシャは残念そうにするが幸太郎は正面に引き寄せると今度は幸太郎の方からアーシャを抱く。それにアーシャは満面の笑みを浮かべてから幸太郎に抱き着く。
「素晴らしいですわ」
「そうね。羨ましいわ」
羨ましそうに熱い視線を送るサライラとファナ。
「リア充め。爆発しろ」
「ケッ。う、羨ましくなんてないからな」
なぜかやさぐれる小太郎と洋介。
「どうすりゃいいんだ。この状況」
「私に聞かれても困るわ。それにしても渋いお茶かコーヒーないかしら」
ピンク色をした空間を作り出す2人にどういう反応をすればいいのか困惑する馬皇と委員長。
「あの。そろそろ真央さんと最後の調整の連絡したいので馬皇さんをお借りしたいのですが……って? え‼ ええ‼ あ、あの‼ その‼ 失礼しました‼」
用事のために入ってきた由愛はそんな混沌とした様子に状況が分かるはずもなく慌てて扉を閉めて出て行く。
「た‼ 大変ですぅぅぅ‼ さ、佐藤君と‼ アーシャさんがぁぁぁ‼」
普段は出さない由愛の大声が扉越しからでも聞こえてくる。幸太郎とアーシャもさすがに聞こえていたのか抱き継合うのを止めて顔を真っ赤にする。
「とりあえず落ち着いたら俺と委員長が他のみんなには説明しとくからここで話は終わりな。委員長行くぞ。洋介と小太郎。後は任せた」
「ええ」
「あ。お父様待って」
「私もなにか手伝うわ」
「え? 嘘だろ‼」
「待ってくれよ‼」
馬皇は委員長を連れて由愛と慌てた由愛から話を聞いたクラスメイト達への説明のために席を立って素早く部屋を出る。ゴーイングマイウェイなサライラは馬皇の背中にいつの間にかへばり付いている。さすがにこの中に取り残されるのが嫌なのかファナも素早い動きで馬皇の後を追う。
「アーシャ」
「コウ」
馬皇たちが消えると洋介と小太郎を無視して、また2人の世界を作りだす幸太郎とアーシャ。
「なぁ。俺たちはどうすりゃいいんだ?」
「耐えろ。今ぶち壊すと後が怖いぞ」
取り残された洋介たちは、その後幸太郎とアーシャが満足するまで見せつけられ続けるのであった。




