表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第七章 異世界召喚騒動
216/327

31話

「ふわぁぁぁ。幸せですわぁぁぁ」

「何と言うか……。そんなにすごいの?」


 馬皇に撫でまわされサライラの姿を見て真っ赤な顔でサライラを見るファナ。サライラはと言うと恍惚とした表情で座り込んでいた。


「それはもう」

「そ、そう」


 顔を蕩けさせて答えるサライラに引くファナ。その後に少し興味があるのか馬皇の方を見る。その様子に馬皇は頭を横に振った。


「やらないぞ」

「べ、別にして欲しいとは言ってないわ。それよりも約束したんだから次はマオウの番ですよ」

「いや。俺やるとは言ってな……」

「やりますよね?」


 拒否は許さないという様子でファナは再度問う。その様子に馬皇はため息を1つつくとうなずいた。


「はぁ。分かった」

「それでこそ私の見込んだ男の子ですわ」

「おう。羨ましいぞ‼ この色男‼」


 ファナはそう言うと馬皇も諦めたのか渋々と言った様子でサライラがいた場所まで歩きはじめる。すれ違いざまに着いてきていた小太郎が茶化すように言った言葉に馬皇がたずねる。


「なら、変わるか?」

「それは勘弁してください」

「うわぁ。自分から茶化しといてこれとかさすがに引くな」

「だな」


 速攻で土下座をする小太郎に横にいた幸太郎と洋介がドン引して後ずさる。


「何かあったんですか?」

「いや。小太郎の奴がお前と戦うのが羨ましいって言ってたぞ」

「そうですか。それならばこの後にしましょう」

「だそうだ」

「うわぁぁぁぁぁぁ‼」


 馬皇は意地の悪そうな顔をしてファナに小太郎の言葉を間違えて伝える。その言葉にファナはこの後も別の相手が出来た事に嬉しそうな顔をする。


 小太郎はというと馬皇の裏切りでこれから地獄を見ることが確定して発狂する。その後で逃げ出しそうになるが洋介と幸太郎が小太郎を取り押さえる。


「は、放してくれぇぇぇ‼」

「さすがに言った事は守れよな」

「いや‼ 殺気の戦い見てたよな‼ このまま行けば俺瞬殺されそうなんだけど‼」

「俺とアーシャのデートの邪魔とか普段から余計な迷惑かけてんだからここいらで少し痛い目にでもあえ」

「理不尽‼」


 幸太郎がニヤリと笑う。さすがに捕まえ慣れているのか小太郎は抵抗してもビクともしない。そんなやり取りの間に馬皇が先程のサライラと同じ位置まで来るとファナも準備が整うと突然の小太郎の叫び声に少し困惑する。


「彼。叫んでますけど大丈夫なんでしょうか?」

「気にすんな。それだけ楽しみにしてんだろう?」

「そうなんですか?」

「ああ。召喚された時にも告白したとか言ってたしな」

「そ、それは……その」

「それだけ本気だという事だろ。多分」

「そ、そうですか」


 召喚された当時の小太郎の告白を思い出したのか顔を赤くするファナ。その後、何かを思い出したのかワタワタとすると視線が馬皇と小太郎の間をチラチラと行き来する。


「気になるのか?」

「御冗談を。あそこまで真っ直ぐに告白されたのはあの時初めてで。今思い出しても受けた側としては恥ずかしさで顔から火が出そうになりますが、お相手としてはないです。私としては私よりも強いか、せめて鍛錬に付き合ってくれる人がいいといいますか」


 ファナが即答する。その答えに致命傷だったのか小太郎は膝をつく。


「まぁ、コタロウと戦うのも冗談としてどうしてそんなことを?」

「そりゃ、そんな感じでチラチラと俺と小太郎を見てたからな」

「それは申し訳ないことをしたわね」


 その言葉に小太郎はさらに真っ白になる。その様子に少し罪悪感があるのか申し訳なさそうにするファナ。そんな様子に馬皇は話題を変える。


「そう言えば婚約者とかいるのか?」

「露骨に変えて来たわね。昔は今したけどなぜか解消されたわ」

「そうか。その後は?」

「昔は結構あったんだけど最近は縁談ないのよね。なんででしょう?」

「知るか」


 過去には婚約者がいたが戦うのが好きなファナは訓練という名目で婚約者相手に素手でフル装備の婚約者と相対。圧勝して相手の心をへし折ると同時にファナは鍛錬を一緒にしようとした。


 そして、その鍛錬はファナ以外からすると過酷過ぎた。幼少の時代から最低でも基礎の素振り千回から体力トレーニングで王城の裏庭10週。王城の裏庭は国の兵士たちの訓練の場としても確保されているために王都の約3分の1の広さである。それ加えて隠れて王都を出ては魔物との戦闘。そんな毎日にファナは日に日に強くなっていき鍛錬は厳しくなっていく。


 そんな鍛錬がたたってその相手は王女様恐怖症(トラウマ)になった。ファナを見るたびに泡を吹いて倒れるそれはファナの父親の王に加えてファナの婚約者の親もさすがに憐れんだのか婚約解消。さらにその出来事が原因でファナより強い相手ででないと婚約できないという噂が広がったせいでいつの間にかファナに勝てる強さがないと結婚できないというのがこの国の貴族の暗黙の了解になってしまっていた。


 ファナ自身は美少女であり婚約するために腕に自信のある者たちが国内外からたくさんいたがそれも過去の話。ファナは全て勝利してしまった。それのせいで挑戦者はめっきりいなくなった。ある意味で強くなりすぎたファナに父でありこの国の王は別の意味で危機感を抱いているのを馬皇たちが知るよしもないのは当然である。


 馬皇は短く一蹴すると構える。その様子にファナは頭をかしげた。


「あら? 報告ではあなたも武器、それも魔剣を持っていると聞いていたんだけど?」

「ああ。わざわざ使う必要はないと思ったからな」

「舐められたものねっ‼」


 馬皇の答えが癇に障ったのかファナはサライラの時以上の速度でまっすぐ馬皇に切りかかる。それに対して馬皇は見えているのかファナの動きをしっかりととらえると半歩踏み込んで剣を振る腕の動きを阻害する。


「くっ‼」


 思い切り振った腕が馬皇の腕とぶつかりその痛みに動きが鈍る。その隙を逃さず剣の柄と剣を掴んでいる手を逃がさないように片手で握る。それは万力のようにビクともしなくて全く剣が振れない。ファナは掴まれていないもう片方の手で馬皇を殴る。


「くうっ‼」

「これで終わりでいいか?」


 ファナはしばらく殴り続けるがダメージを与えられていないのか馬皇は少し申し訳なさそうにたずねると抵抗を諦めたのか殴るのを止めた。


「私の負けよ」

「そうか」


 潔く負けを認めると馬皇はファナの手を離す。


「ここまで何もできなかったのは初めてよ」

「俺も戦うこと自体は好きだが、さすがに弱い者イジメをする気はねぇよ」

「そう。弱い者イジメね。なら、私が強くなったらまた相手してくれる?」


 馬皇の言葉に少し傷ついたのか少し暗くなるが気持ちの切り替えが早いのか頬を軽く叩くと馬皇にたずねる。


「それは構わないぞ。強い奴とするのは歓迎だ」

「そうですか。うん。そうですね」

「どうかしたか?」


 ファナは何かを決めて短くうなずくと意を決したように言った。


「なら。私も一緒に連れて行って。いや、着いて行きます」

「断る」


 馬皇は即答する。さすがに異世界の人間それも王族を連れて行く気はない。しかし、それでもあきらめる気はないのかファナは食い下がる。


「それでもです。私は決めました。あなたと一緒に行けば強くなれると確信したので意地でも着いて行きます」

「ここで俺がお前を殺そうとしてもか?」


 馬皇は先程とは打って変わって冷たい声で殺気をぶつけた。しかし、それを受けたファナは顔色一つ変えず答える。


「置いて行かれるのならそれでもいいです」


 その言葉に馬皇はファナを威圧しながらファナの眼を見る。それはファナの言った言葉が嘘ではないと分かるくらいにしっかりと馬皇をまっすぐ見ていた。


「どうかしたか? サライラ」

「いつまでもお父様とファナが見つめ合っててズルいですわ。後、私としてはファナが着いて来ても問題ないと思いますわ」


 しばらく見つめ合っているとサライラが馬皇の背中に乗る。その感触に馬皇は視線を外さないままサライラをたずねるとそんなファナにサライラが助け船を出す。


「私を連れて行って」


 その後にもう一度ファナは言った。真剣な眼差しは変わらず。それを見た馬皇は長くため息を吐くと折れた。


「……分かった。だが、それは親御さんから許可を取ってからだぞ」

「それで構いません。絶対に説得して見せるわ」


 そう言ってファナは馬皇たちを置いて駆け出した。


「ファナ様の強引さを知ってるから意味ないんだけど連れて行っていいのか?」


 ファナが勢い良く駆け出した後に洋介たちは近づく。先頭の洋介が馬皇にたずねる。


「俺に聞かれても困る。だが、あれは俺が何を言っても着いてくるぞ」

「……ありえる。国に内緒で冒険者やってるくらいだからな。バレバレだけど」


 洋介は隠れて着いて行く姿を想像して馬皇の言葉に納得する。その様子に馬皇は呆れた様子で空を眺める。


「まじかぁ」

「まじだ。ついでに言うと俺らに冒険者の仕事を教えたのもファナ様だ」

「活発過ぎるだろ」

「まぁ、あんなんでも国の人には愛されてるからな。もし、意地でも駄目って言ってたら人前だと余計に拒否し辛い状況で言ってくるぞ。その後の街の人の冷ややかな視線は辛いぞ」

「そうなる前に提案して良かったという訳だ」

「ああ。さすがに俺らでも止められん」


 洋介は感慨深げにしきりにうなずく。そこで現実逃避を終えたのか馬皇は言った。


「そうか。それでだな。言われるがままに着いてきたが俺らはどうするべきなんだろうな」

「俺に聞くなよ」


 ファナが1人走っていったために、この後どうすればいいのか分からずに待つことにして城の騎士が迎えに来たのは2時間後の事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ